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バックの中身

 

「ふんふんふ~~ん♪」

 鼻歌混じりで自分の服をたたむ結夢、俺の小説による兄妹ごっこですっかり気をよくしてしまっているようだった。


 でも貴重な経験だった。女の子と一緒にベットに入るなんて……

 そして危なかった……16才16才……めちゃくちゃ可愛い16才の女子……


 16才って足枷が無かったら俺は今頃……


「お兄ちゃん、この下着の方が良かったかな? ピンクの水玉持って無いんだよね、失敗したなあ」

 結夢はそう言うとバックの中からブルーのボーダーの下着を取り出し俺に見せつける。


「くっ……良いから早く風呂に入ってこい……」


「あ! お兄ちゃんも一緒に入る?」


「あ、アホか!!」


「でもほら、15話だっけ? 一緒に入るシーンがあったよね?」


「いや、そうだけど……」

 まあ妹物じゃあ定番だろ? え? 違うの?


「あーーちょっと考えてる~~お兄ちゃんのエッチ~~」


「うっせ早く入れって!」


「あはははは、15話はまだ先だからねえ~~じゃあお先に入らせて貰うねお兄ちゃん」


「ああ……」

 結夢は楽しそうに脱衣場に向かった。

 扉を閉める結夢、ちなみに扉に鍵はかかっていない……


「……さて……どうするか……」

 そう……俺は今非常に迷っている……チャンスが到来したからだ。

 あ! ち、違うぞ! あの扉を開けるとか、風呂を覗くとか、そんな事はしないぞ!!

 チャンスと言うのは、あいつのバックだ、あの大きい鞄だ。俺は4次元バックと呼んでいるが、あの鞄の中身だ!

 あいつの結夢と呼んでいる人物が本当は何者なのか知れるチャンスなんだ。

 大きめのショルダーバッグ、結夢の唯一の持ち物、さっき着替えた制服もそこに置いてある……それを調べれば何か正体がわかるかも知れない……

 

 さっき何も持っていないと言った。でも……信用はしていない。今でも俺はかわかわれている可能性も捨ててない。


 一応これでも俺の小説のファンはいる。それだけの読者はいるんだ。ああいう変わった読者だっているのかもしれない。

 

 かつての大物作家はキャラを死なせた為に命を狙われた者だっている。今でもキャラの不遇でアニメが炎上したりする。

 

 俺の作品でも、その可能性は捨てられない。まあ、それは大変名誉な事なんだが……さすがに直接来られるのは困るけど。


 どうするか……でも……それがわかるまで俺は彼女を信用しきれない……そもそも警察も病院も拒む理由がわからない。


 俺は心を鬼にして、彼女の鞄に近づいた。そしてゆっくりとなるべく音を立てない様、鞄のチャックを開けた。


「――なんでこんなに下着が……」

 鞄の中には色とりどりの下着が入っていた。俺をからかうかの如く。


「くっそ……あいつわかっててやってるんじゃ?」

 その下着を俺はなるべく崩さずに横にずらす。

 下から歯ブラシセットや地図、全国ホテルガイドなんて本が出てくる。

 さらに一番下には服が綺麗に折りたたまれていた。


「やっぱり何もない?」

 そう思った時にふと気が付いた。このバック中の大きさが外から見たそれととはサイズが違うという事に。

 俺はなるべく崩さずにゆっくりと服をどけると、バックの底に蓋が……そしてそこにはチャックがありさらにそのチャックには鍵が……


「二重底……マジか……」

 やっぱり彼女は何か隠している。俺はそう確信した。


「そういえばお金結構持ってるって言ってたな」

 そこに隠してあるのが現金の可能性もある。しかし何か身分を証明できる物の可能性も……

 ホテルに泊まる際身分証明が無いとダメな場合もある。例えばネカフェなどでネットをやる際は必ず必要だ。

 俺は鍵を探した。とりあえず鞄についている小さなポケットを探すが見当たらない。

 次に服の中だ、たたまれている服を軽く押しつけ、何かないか探ってみたが、手に当たる感触ではわからなかった。


「制服……」

 さっきまで着ていた制服、あれが一番怪しい。もしかしたらそこに生徒手帳があるかも知れない。財布も持っているかもしれない。ひょっとしたら免許とかマイナンバーとかあるかも知れない。


 俺はとりあえずバックの中身を元に戻しチャックを締める。そして、制服の所に……

 最近はあまり見かけなくなったセーラー服、とはいえないわけではない、全国を探せば普通にあるベタなセーラー服、そもそも、このセーラー服の学校の生徒とは限らないし

 とりあえず、そっちは後で調べるとして、今は鍵のありかだ。

 俺はまず上着をそっと持ち上げる。

 上着にポケットってあるのか?

 俺の妹はブレザーだった。そもそも妹が着てたとして制服を触るなんて事はあり得ない。当然セーラー服を買った事も脱がせた事もない。

 あ、付いてる。

 畳んであるセーラーを持ち上げると右にポケットが付いていた。

 じっくり見るのは初めてだから気が付かなかったが、普通に付いていた。


「ない……」

 しかし、ポケットには何も入っていなかった……俺は最後の砦、スカートに視線を移す。


「スカートか……」

 とりあえず、セーラー服をたたみ直し、スカートに手を掛けた。

 セーラー服のスカートをまじまじと見つめるのはこれが初めて……


「……おっと見蕩れている場合じゃない」

 おれはスカートを触り、ポケットが無いか確認した。


「――――あった……」

 スカートには二つ、ズボンと同じ位置にポケットが……俺は恐る恐るポケットに手を突っ込む。


「お兄ちゃん?」


「うわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」


「お兄ちゃん私のスカートで何してるの?」


「いや、それより結夢! な、なんて恰好で!」


「ん? タオル巻いてるでしょ?」


「いや、そうだけど……」


「それよりお兄ちゃんは私のスカートで何をしてはるの?」


「なぜ京都弁?」


「――お兄ちゃん! ひょとして! ひょっとして! まさか!!」

 ああ、バレた……俺が結夢を探っている事が……彼女を疑っている事が。


 でも仕方がない……そうなのだから、俺は、はっきりと結夢に言おうとしたその時先に結夢が言った。


「お兄ちゃん! セーラーフェチ?」

 思いっきり引いている顔でそういう結夢……ちゃうわあああああああ!

 しかし……この勘違いはラッキーだった。本当の事は言えない、言ったら隙が無くなる。二度と鞄に近寄れなくなる。そう判断した俺は迷わず言った。


「実は……」

 くっそおおおおおおおおおおおおおおおお…………


「そう……なんだ……大丈夫お兄ちゃん、引くけど、かなり引くけど……それで嫌いになったりしないよ!」


「あ、あり、ありがとう……」


「うん……でもお兄ちゃん、私の以外は駄目だからね、犯罪だからね?」


「あ、ああ……」

 若干ひきつりながら笑う結夢に、俺は笑顔でそう返した。


 違うんだ、本当に違うんだからああああ、俺はセーラーフェチなんかじゃない! ペロペロしたいなんて思った事無い! 妹の制服がブレザーでがっかりした事なんて、無いんだからああああああああ!




 

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