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さあ、お兄ちゃん取材をしよう!


 近くの喫茶店で結夢とモーニングを食べた。その後どうするかと相談したが、買い物に行くにはまだ早すぎる、かといって一人なら小説を書いて時間を潰すのだが、それはさすがに結夢が可哀想……しかも俺は今日ノートもタブレットも持ってきていない。

 

 とりあえず、買い出しは昼以降にしようという事になり、俺と結夢は一旦部屋に戻ってきた。



「さあ、お兄ちゃんじゃあ、お昼まで取材をしよう!」


「取材?」


「そう取材!!」


「どこか行くのか?」


「ちがうよおお、兄妹の取材!」


「なんだ兄妹の取材って?」


「あのね、お兄ちゃんの小説凄く面白いよ、面白いんだけど、一つだけ不満があるの……」


「不満?」


「うん、凄く不満」


「な、なんだそれは?」

 そう言うのは凄く聞きたい、あまりそう言う感想とかは貰えないからね、参考になる。


「えっとね、あのね……結夢ちゃんがね、あまり幸せそうじゃないの……不満が溜まっていると思うの」


「そ、そうなのか?」

 不満、不満ね~~、そんな考えは持って無かったなーー、そういう読み方も出来るのか……


「うん、もう可哀想なレベル」


「そ、そんなに……何が不満なんだ……」

 俺はここ数話を思い浮かべる……特にそんな感じでは書いていないけど……


「あのね、結夢ちゃんはね……もっとお兄ちゃんとイチャイチャしたいって思ってるんだよ!」


「イチャイチャ?」


「うん!」


「そうなのか?」


「うん! 絶対にそう!!」


「いや、でもこれって作者が生み出した人物ではあるけど、一応は実の妹だしそんなにイチャイチャは」


「ちがうよおお、絶対にイチャイチャしたいって思ってるはずだよ~~」


「そうなのか?」


「うん絶対に!!」


「うーーん、それで?」


「だから取材してお兄ちゃん」


「いや、言ってる意味が」


「私とイチャイチャの取材をしよう!」


「は?」


「だーーーかーーーらーーー、昨日は1話を二人でやったわけじゃない?」


「ああ、うん……それで?」


「これからは、先の話を二人でするんだよ!」


「ああ、成る程…………えええええええ!」


「私、お兄ちゃんの妹と同時に結夢ちゃんでもあるんだよ、だから私と取材をしよう!」


「いや、だって……えええ、ちょっと待って……」


「お兄ちゃんこの物語ツイッタラーで今一って言ってたでしょ? 私は絶対にそんな事無いって思ってる! こんなに凄い話無い、だからもっと私を利用して!」


「利用って…………いいのか?」


「勿論!!」


「えっと……じゃ、じゃあ……」


「わーーーい!」


 なんだかよくわからないが、言っている事は間違っていない気がする。確かにこの話は自分の中では今一と思っていた。そもそも今までの自分の作品は兄妹のラブコメが主だったが、今書いているのは現代ファンタジー、作者が作り出した幻想、理想の妹がそのまま実体化してしまうという物語。


 つまり主人公と妹は周囲から見ると実の兄妹なんだが、主人公は他人として認識している。しかし妹は自分が兄の幻想から作り出された事は知らない……その二人の認識の違いが自分で書いていてもよくわかっていなかった。

 

 ただそれを踏まえると、今のこの状態、俺と結夢の関係と言うのは大変似ているって思うんだ。結夢は俺を兄として見ている。俺は結夢を妹としては認識していない……つまりこれって今俺が書いている物語と同じ境遇、同じ思いって事の様な……



「さあ、お兄ちゃん何して欲しい? それとも何がしたい?」


「何が……」


「うん、なんでもしていいよ! お兄ちゃんのやりたい事、結夢になんでもしていいし、してあげる~~」


「な、なんでも……」

 突然そんな事を言われても……俺は考える、いや、一つあるんだが……昨日夜の後悔が、しかし……いきなり『おっぱい揉ませろ』とはさすがに言えない……そもそもそんな兄って……ただの変態だろ……

 俺はとりあえずいつもの通り話を考える事にした。確かにイチャイチャシーンはそろそろいれないといけないとは思っていた。でも……唐突に『おっぱい揉ませろ』はおかしい……もうちょっと軽い感じで、でもこう少しエッチな感じのイチャイチャシーン…………


「膝枕かなぁ……」


「! お兄ちゃん!! さすが! 天才!!」


「そう?」


「うん、いいよそれ! 凄くいい、さすが!」


「そうか、じゃあえっと……どこで」

 俺がそう言うと結夢はベットに走り込み仰向けで寝転んだ。


「お兄ちゃん早く早く~~~」


「え? いや、ちょっと待て、なぜ寝る?」

 膝枕だろ? 座らないと出来ないだろ?


「え? してくれるんでしょ?」


「は?」


「早くお兄ちゃん~~」

 足をじたばたさせ、そうせがむ結夢……って言うか俺が思い描いているのと逆なんだが、普通妹の太ももに兄が頭を乗せるんじゃないのか?


「まあ……とりあえず……」

 ものは試しにと俺はゆっくりとベットの上に座ると結夢の頭を持ち上げ俺の太ももの上に乗せた。


「「おおおおおおおおお」」

 俺と結夢が同時に声を上げた、これは……なんか……いい……


「お兄ちゃんお兄ちゃん、なんか……いいね!」


「お、おう……」

 なんだろうか、この感覚、くすぐったい……いや、身体がではなく心がくすぐったい、そんな感覚……


「お兄ちゃん……ここからどうする?」


「あ、ああそうだな……えっと……いいか……」


「うん、どんと来いだよお」


「じゃあ……」

 俺はそう言うと結夢の頭を撫でる。ゆっくりとゆっくりと頭を、サラサラの黒髪ごと撫でる。


「ああん……お、お兄ちゃん……凄く……気持ちいい」


「そ、そうか……」

 俺は頭を撫でそしてそのままゆっくりと髪を持ち上げる、黒髪が俺の手からサラサラと流れ落ちた。


「ふわあああ、男の人に髪を触られるのってなんか嫌な気がしてたけど、お兄ちゃんなら……凄く嬉しい!」


「そ、そうか……」


「えへへへ、いい気分~~お姫様みたい」


「俺も……なんかいい」

 なんだこのシチュエーション……でも、凄く参考になるし、凄く気分が良くなる、なんだろう、楽しい……

 

 妹とこういう風に楽しむっていう感覚はあり得ない、でもそれが小説なら……

 俺は次の話の構想をしながらゆっくりとゆっくりと結夢の頭を撫で続けていた。





「さあお兄ちゃん! 交代!」


「え?!」




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