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拠点を探ろう! その1

~前回のあらすじ~

見つけた拠点に腰を下ろして活動することになった後畑だが、かつての仲間(人ではない)とペット(普通じゃない)と共に暮らすことに

そして今回は拠点をうろつく! ただソレだけです

「……で、どこに俺を連れていく気だ? 零」

「いやぁー、ハハハハハハハ。その軍刀を直さないとろくに戦えないでしょう? なんで、鍛冶場に」

「鍛冶場だぁ?」

「ええ。鍛冶場です」


「なんでそんなモンがこの(ふね)に?」

「斯々然々(かくかくしかじか)ありまして……核融合炉を熱源として鍛冶用の炉が作ってあるんですよ。各種鉱石も置いてあるので、それで直してみてください」

「ヘイヘイ」


 コツ、コツ、コツ、コツ


 硬質な、軍用ブーツの音が()()()、畝傍の廊下に響きます。


「着きましたよ。ここです」

「木箱になんか凄そうな石いっぱい入ってるけど」

「はい。黒いのはアダマンタイト、青っぽいのがオリハルコン、白っぽいのがミスリルで、その他は見た目通りです」


「ふ~ん……で、アダマンタイトの特徴は?」

「ダイヤモンドより硬く、延性や融点が高く、化学薬品に非常に強い金属です。魔力や熱、電気の伝導性が非常に良いのも特徴ですね」


()()? ……お前この世界のこと―――」

「ええ。知っていますよ。ここいらの原住民と数回、接触したことがありましてね……そのあとはお察しくださいね」


「まあいいや。続き……オリハルコンは?」

「軽くて丈夫ですが、単体で使うよりも合金として使った方が良いかもしれません。アダマンタイトよりも魔力の伝導性が高いですが、電気と熱の伝導性は低いです」


「んで、ミスリルだな」

「魔力の伝導性がオリハルコンより遥かに高く、魔力を溜めることもできるようです。強さは鋼より少し強いぐらいですかね」


「ふ~ん……気になることとかある?」

「はい。アダマンタイトはタンタルと、オリハルコンはチタンと、ミスリルは銀と、電子、陽子、中性子の数が同じです」


「どこがどう違う?」

「電子、陽子、中性子の配列や結晶構造などなど、多項目において変化があります」

「そうかい……じゃ、始めるとするか」


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 カーン、カーン、ガン、カーン、コーン……


 軽快なハンマーの音色が、畝傍の機関室(エンジンルーム)に響きます。


「ふぃ~……できたぜ!」


 後畑は、作り直した軍刀の刀身を、マ○ターソード抜いた時みたいに掲げました。


「なんか黒くなりましたね」

「まあ、アダマンタイト多めに配合したしな。元の刀身の強化チタンも混ぜたし……強度はすごいと思う」


 などと言いつつ、軍刀を組み立てていきます。

 後畑の軍刀は、儀礼用兼戦闘用の工業刀なので、そこまで複雑な作りではありません。


 後畑が持っている軍刀は、柄と申し訳程度の鍔、刀身、高周波振動装置の四つからできています。


「これであのテンプレロリヴァンプに折られることも……」

「ほう? それは妾のことか?」

「「!?」」


「いっ、いつの間にぃ!?」

「私のセンサーで、音も空気の流れも全く観測できないとは……」

「フム。横のひょろっちいのは生物の気配がせんのう……機械兵か?」

「……お察しの通りです」


「で、何で来やがった?」

「んー、お主がいる感じがしたからかのぅ」

「「………………は?」」


 後畑と零の声が見事にハモりました。

 二人の声は、理解不能という心の内が、ものすごく分かる声色でした。


「ちょい待ち。どゆこと?」

「まだ分からんか。妾は、お主ほど丁度良い感じに強く、血が旨そうな人間を初めて見たものでな」

「つまり俺の血が欲しいと?」

「そういうことじゃ!」


 後畑は、頭が痛くなってきたような気がしました。

 こんなテンプレでロリで強いヴァンプを相手に、どうすれば良いんでしょうかね?


 そんなことは兎も角、後畑は顔にも態度にも出していませんが、ものすごーくビビっています。

 吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になるという言い伝えが事実だったとき、かなり困るからです。


「因みに、血を吸ったヤツが吸血鬼になったりとかはする?」

「ん? お主が妾の眷族になるか、妾がお主の血を吸い尽くして殺したらお主は立派な吸血鬼じゃ」

「うへぇ~……」


 まあ要するに、彼の命運は相手のロリヴァンプが握っているということです。


「フフフフフフフ……お主の疑問も解消したことじゃし……」


 じゅるり


 相手のロリヴァンプは、よだれっぽいものを垂らしながら手をワキワキと動かし、アニメのスケベ主人公みたいな顔になっています。

 正直怖いです。


「なんかロリがしてはいけない顔と音を出してる……! (ヤバすぎ、怖い、なんなのこの子!)」

「(大尉、一旦逃げましょう! 絶対勝てませんから)」

「(どうやって? 逃がしてくれると思う?)」


「ハッッッ!」


 ベギャッ!


 畝傍の金属製の床を踏み抜きつつ、ロリヴァンプが飛びかかって……いえ、翔んできました。


「ぬわっ!」


 後畑は驚きつつも左手を突きだし―――


(ん? ()()?)


 ズリュ!


 気持ち悪い音と共に、左手のひらから、黒くて邪悪な感じの剣が出てきました。

 この剣、後畑も見たことがあります。

 お察しかもしれませんが、後畑に取り憑いた魔剣です。


 それを見たロリヴァンプは、ちょっと驚いてから急停止しました。


「のわぁあああああああああああ!? 何故!? 自殺したしどっか行ったんじゃなかったの!?」

「大尉、死ぬ前に弌が手術したからでは?」

「成る程! それだな!」


「ホゥ……ダインスレイヴか! 愉しくなりそうじゃのう!」

「えっ、ちょっ……待って……ダインスレイヴってまさ―――」

「問答無用!」


 バゴォン!


「ハァッ!」

「クソッ! なんでライフルより(はえ)ぇんだよ!?」


 後畑は左手の魔剣と右手の軍刀で応戦しようとしますが……


 ビュオン!


 ロリヴァンプが右手を振り下ろし、


 ギュオン!


 左足で蹴りあげ、


 ズガァン!


 大きく左足を振り上げた無理な体勢から、強引に放たれた踵落としが炸裂しました。

 マジで威力がヤバイです。


 徒手空拳のロリヴァンプに押されまくっています。

 と言うかこのコイツは、何故ライフル弾より速い(後畑の目測)攻撃を避けれるんですかね?


「ああクソッ! エイトマンかってんだこのテンプレめ!」

「ゴチャゴチャとうるさい男だのう! 男ならば黙って戦わぬか!」

「知るか! 俺は楽しくお喋りしながら戦うのがモットーなんだよ!」


 大分古いネタが出ましたが放っておきましょう。

 彼はそういう人です。


「大尉!」


 叫びながら零が戦闘に割り込んできましたが……


「邪魔じゃ! ガラクタに用はないッッ!」


 バガッ!


 回し蹴りで、文字通り一蹴されました。

 零は、普通に通常の兵士三人分ぐらいの戦闘力はあるのですが、こんなヤツには当然、敵いません。


「クッ……この!」


 ヒュアッ! スヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ!


 両手の剣での連撃。

 何をしているかは面倒なので説明しませんが、少なくとも人間業ではないと言っておきましょう。

 そして、ものの見事に全て回避されています。


 なんかロリヴァンプは突然立ち止まりました。

 後畑を認めてくれたとか、そういう感じのテンプレ展開でしょうか?


 ぐぅううううううううう……


「むっ、腹が減っておったの忘れとったわ」

「なっ……今まで忘れてたんかい!」

「組み伏せるのもめんどうだしの……仕方ない」

「えっ? 戦う雰囲気じゃない? やったz―――」

「お主、こっちに来い」


 そう言って後畑を見る彼女の目は、妖しく輝いていました。


「ん? ああ、分かっ……ってんなワケあるかい!」

「なんじゃ、魅了も催眠も効かんかったのか?」


 まあ、効いてるっちゃ効いています。

 現に、後畑の目には、さっきよりもこのロリヴァンプが可愛く見えています。


(……さっきより可愛くない? いや、これって魅了の効果?)

「もう少し強くするかの」

「何を!?」


 そして、彼女の瞳は更に輝きを増しました。


「いいから黙ってこっちに来ぬか」

「っ……分かった」

「大尉……どこ行くんですか……って聞いてないなあの人」


「あれ? さっきまで何を―――」

「ハァッ!」

「のわっ!」


 バタン!


 フラフラと近づいた後畑は、一瞬で押し倒されてしまいました。


 カプ ……ゴク、ゴク、ゴク、ゴク


「え? あれ? なんでって、あうぅぅ……なんか抜けてく気が……」


 ゴクンッ!


「ぷは~。なんと、ここまで旨いとはな……ちと飲みすぎた気もするのう」

「なんで俺捕まってたんだ……? ソレよりもマジで力はいんねーんだけど!」

「分かった分かった。ホレ」


 ポッと緑がかった光がロリヴァンプの手に灯ると、だるかった体が元通りになりました。


「お~、すげー」

「大尉、大丈夫なんですか?」

「オウ! さて、行くか」

「「何処に?」」


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「着いた!」

「ここは……中央制御コンピュータですか」

「ったく、そんな堅ッ苦しい呼び方じゃ可哀想だろ。素直に『ダーナ』って呼んでやれよ」

「いえ、しかし……」


 中央制御コンピュータの愛称を、零はかなりいやがっています。


「お前ってなぜか自分のコードネーム嫌いだよな。更に、その由来となっているものにも」

「正直、『クーフーリン』なんて柄じゃないですから」

「それはお前の製作者が決めたんだから仕方ないだろ」

「本当に困っていますよ……あのクソマッドサイエンティストの『趣味』にはね!」


 長くなってしまうので詳しいところは省きますが、零の開発者の名前は、峰島(みねしま)雄太郎(ゆうたろう)といいます。

 このマッドサイエンティストは、色々と作っているので、もしかしたら名前が出てきてしまうかもしれません。


「まあ良っか。それより、中入ろーぜ?」

「分かりました。現在の暗号プロトコルはこれです」


 そう言って、零はスマホみたいな携帯端末を後畑に手渡しました。


「ん……誰だよこんなメンドい暗号作ったの……」

「ダーナと……誰だったか忘れました」

「アンドロイドのクセに忘れてんなよ……」

「この体に入るメモリだとすぐに容量が一杯になっちゃうんですよ。なので要らなそうな情報は直ぐに削除しました」


 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピピッ


 バシュー……ガシャッ、ガチャッ、ギュイーン


「そう言えば……」

「どうかしました?」

「さっきから何をしておるのかサッパリ分からん! どっちでも良いから説明せぬか!」


 ロリヴァンプが駄々をこね初めてしまいました。

 まあ、確かに関係者以外には分かり辛い会話です。


「そんなことより……すまねぇが、ちょっと外で待っててくれや」

次の投稿は7/22ぐらいになると思います

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