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拠点でドタバタしてみよう

~前回のあらすじ~

拠点を探していたら、かつての乗艦をみつけちゃった!

というわけで突入……そして例のごとく問題発生。

やったね! (嬉しくない)

「おいおい、どうしたよリディア?」

「それ、魔王の魔剣だよ! おとぎ話にも出てくる!」

「マジかよおっかねぇ!」


後畑はその剣を引き抜こうとしていたのですが、どうやら触らぬ方が吉なようです。


「なんでこんなおっかないモンがここに―――」

「むぐー! うむー!」

「どうした!?」


後畑が振り向くと、緑色の蔦に囚われたリディアが見えました。

緑色の蔦は、部屋のタンスから伸びています。


彼は悪意とか殺気の類いには非常に敏感なのですが、全くもってそういうものを感じとることができませんでした。

しかし、そんな疑問を挟む暇はありません。


「ッ! 今助ける!」


後畑が四三式を構えるのと同時に、新たな蔦が伸びてきました。

突きでも繰り出すつもりなのか、蔦は力を溜めるように折れ曲がっています。


(チッ! 良くて相討ちかクソッたれ!)


心の中で毒づきつつ、後畑は引き金を引く指に力を込め―――


ガギンッ!


「なっ!」


弾丸は放たれず、代わりに異音が部屋に響きました。

後畑は驚きの余り固まっています。

何故かと言うと、蔦に()()()()()()()()()()()からです。


ここまで言えば何故後畑が愕然としている理由が分かるでしょう。

この、何処から生まれたかも分からないような蔦の化け物が、彼の世界の銃のセーフティのかけ方を()()()()()からです。


しかし、驚いたとしても、即座に反撃に移れるのは、訓練の賜物でしょう。

セーフティをかけた蔦が四三式に巻き付くよりも早く、後畑は四三式を手放し、刃渡り20㎝ほどのコンバットナイフを、腰のポーチから引き抜きました。


「フッ!」


抜いた瞬間に襲ってきた蔦に、一閃。

コンバットナイフは正確に蔦を捉えましたが、恐ろしい柔軟性のせいで、結局切断には至りませんでした。


ヒュルッ! バチッ!


襲い掛かってくる蔦をナイフで弾きつつ、後畑は少しづつタンスに近づいて行きます。

あと一歩でタンスに手が届く所に来た瞬間でした。


ヒュルヒュルヒュルヒュルヒュルッ!


蔦の猛攻撃が始まりました。

よほど近づいて欲しくない理由でもあるのでしょう。


「利くかよ! ってか鞭で叩かれて喜ぶ趣味はねぇ!」


後畑は蔦を弾くのをやめ、かなり強引にタンスに近づいていきます。

蔦の攻撃力は相当なはずですが、全部受けきって強引に突貫できる彼の耐久力は、人外の域に達してしまっています。


何故かというと、この蔦の攻撃力が一番弱くて高校生が全力でベルトで叩くぐらいで、強くて装甲車の装甲を凹ませるぐらいだからです。

弱い時ならともかく、強い時でも平然と突き進む彼は、普通に装甲車を越える防御力を持っているということです。


「いい加減に……しろッ!」


後畑は最後の一歩を踏み込み、タンスのドアを乱暴に開けました。

それと同時に、蔦の攻撃がピタリと止みました。


「うー」

「………………は?」


タンスの中に居たのは、緑色の肌をしていて、頭に花をのっけた少女でした。

その少女は、物凄く不機嫌そうな顔をしています。


しかし、その少女は後畑をじーっと見つめると、突然目を輝かせて、飛びかかってきました。


「あうー!」

「のわー!?」

「うー! うー!」

「おまっ、ちょっ、やめっ、やっぱ誰だお前?!」


後畑が力の限り叫ぶと、じゃれついていた少女の動きがピタリと止まり、少女は悲しそうな顔で後畑を見つめてきました。


「あうー……」

「……え? どゆこと? 何故そんなに悲しそうな声?」

「うー」


少女は何処からともなく蔦を伸ばすと、タンスの中から何かを取り出し、ぐいっと突きだしてきました。

それは、使われた跡のある、そこそこの大きさのプランターでした。


「お前っ……まさかアコか!?」

「うー!」


アコというのは、彼が畝傍の中で育てていたトリカブトです。

種類はエゾトリカブトかなんか(後畑も覚えてない)です。

アコという名前は、トリカブトの学名の、「アコニツム(Aconitum)」からとっています。


「ゲホッゲホッ……お兄ちゃんから離れて!」


蔦から解放されたリディアが唐突にアコに抱きつき、引っ張り始めました。

しかし、アコは離れたくないようで、どんどん抱きつく力が強くなっていきます。


「あギャー! 痛い痛い! 二人とも落ち着けー!」

「だってお兄ちゃんが襲われてる!」

「ううー!」

「ちょっと説明したいことあるから落ち着けー!」


なんだかんだ二人を鎮めた後、後畑は色々と語り始めました。


「アルラウネっぽいコイツはアコって言ってな。俺があっちの世界で育ててたトリカブトだ」

「とりかぶと?」

「毒がある花なんだが、きれいなんだよ。まあ、有事の時には毒として使うつもりだったけどな」

「「……」」


なんかすごい非難の視線を感じ、後畑はちょっとたじろぎ、強引に話題を変えました。


「ってかあの危ねー剣どうする? 捨てるのは確定なんだけど」

「うーん……触ると危ないよね」


後畑の強引な話題転換に付き合ってくれるリディアは、やはり彼と相性がいいのでしょう。


「っつーかそのまんま捨てんのはマズイよな……封印用具ぐらい作るか」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

「よっしゃ出来た」


後畑は大量に持って(盗んで)来た魔術の本に載っていた封印の箱と、封印の帯を作ってみました。

この二つは、その本に載っていた中で、現在作れるものの中では最強の性能です。


「さて、処理開始だな」


後畑は帯を左手に巻き、箱を右手に持って素早く近づき、左手の帯を魔剣にものすごいスピードで巻き付け、しっかり縛って箱の中に放り込みました。


しっかりと箱の蓋を閉じ、更に帯でグルグル巻きにしました。


「ふぃー、終わった」

「なんにもなくて良かったね」

「うー」


ガタガタッ! ベキャッ!


「ん?」

「え?」


ビュンッ!


「危ねぇ!」


何が起きたか簡単に説明すると、封印を破った魔剣が、後畑達を狙って飛んできたのです。

彼はリディアとアコを突き飛ばし、自分は余りの帯で魔剣を迎撃しました。


「フッ!」


ギュア!


帯はスパッと切られてしまいましたが、魔剣は帯を嫌っているようで、少し距離をとって浮いています。


ギュオン!


「チッ……もう無理だな」


後畑は、切られてボロボロになった帯を捨て、コンバットナイフを構え、魔剣を弾きました。


バチンッ! ガギンッ! ベギッ! ギギギギギギ!


「ああもうめんどくせえ!」

「お兄ちゃん!?」


後畑はタイミングを合わせ、魔剣を左手で掴み取りました。

しかし、彼はその直後に、その選択を後悔することになります。


魔剣から黒い触手的なナニかが彼の左腕に食い込み、根を張り始めました。

根は急速に広がり、直ぐに左腕を侵食しつくし、肩から胴体に迫ってきています。


彼は苦虫を噛み潰したような顔になっています。

しかし……


「ハッ! 腕の一本や二本、どうってこたぁねえんだよ!」


いつものように笑いながら言い切ると、ひしゃげた軍刀を抜くと、何の躊躇もなく自分の左腕を叩き切りました。


しかし、今度は切り落とした、真っ黒になった左腕から、触手が出てきて彼の肩に突き刺さると、何事もなかったかのようにくっつきました。


軍刀がひしゃげているので、傷口はグチャグチャで、到底治せるような傷ではなかったのですが、そこは流石は魔王の魔剣といったところでしょう。


「嘘だろ?!」

「ひっ……」

「あー?」


後畑は突然部屋を出ると、走ってあるところに向かいました。


(どうにかして医務室までいかねぇと!)


医務室はその性質上、兵員居住区のすぐそばにあります。

具体的には、後畑の部屋から150mほど先に。


ウィーン


後畑は扉が開くと直ぐに中に入り、部屋の中に放置してあるコールドスリープ装置的なヤツの前に立ちました。


「よし……気が進まねぇが……」


コールドスリープ装置的なヤツは、本当はコールドスリープ装置ではありません。

本来は、カプセル型の生命維持装置です。


後畑はそれを起動すると、コンバットナイフを抜き―――


「一か八かだ、やってみようか!」


そう言うのと同時に、コンバットナイフを()()()心臓に突き立てました。


「ハハ……やっぱヤベェかな……」


そして、彼の視界は真っ暗になりました。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


「……ちゃん! …い…ちゃん! ……お兄ちゃん!」

「うー! うー! ううー!」

「んん……ああ、生き返れたか」

「いやぁーホントにいきなり来て自殺しちゃったからビックリしましたよぉ」

「誰だお前!?」


今、彼の目の前には、リディアとアコ、そして誰か分からないナース服の女性(20歳前後っぽい)がいます。


「えー? 御主人、私のこと忘れちゃったんですか?」

「御主人? そのナース服どっかで……あー! お前、(イチ)か!」


弌というのは通称で、正式名称は「一式人型機工衛生兵」です。

弌は、その正式名の通り、治療用アンドロイドです。


軍はその性質上男が多いので、弌は女性型になっています。

因みに、顔は「万人に好かれるアニメ顔」に関する研究結果を用いて作っています。


「ふふふふふ。実は、もう二人、御主人に思い出してもらいたい人? が、居るんですよ!」

「お、おう。そうか」


「じゃあ呼んできますね!」


ウィーン


「……嵐のようなヤツだな」

「あの人、スッゴいお医者さんだったよ! お兄ちゃんの心臓の傷、あっという間に治しちゃったもん!」

「だろうな」


ドタドタ! バタッ!


『だからホントだっていってるじゃないですかぁ~』

『○◇■☆¥※%&!』

『何言ってるか分かんないんで叫ばないでくださいよぉ』

『一旦、二人とも落ち着こうか』


ドアの向こうから、奇声と謎の会話が聞こえてきます。


「なんとなく予想は着いたぞ……アコがあんなになってるし、アイツもどうなっていることやら……」


そして、扉が開くと、なんか見たことあるヤツ一人と、見たことねー女の子が一人、突っ立っていました。

女の子の方は、後畑と目を合わせた瞬間、壁の向こうに引っ込み、顔だけだして後畑を見ています。


「お久しぶりですね、大尉。お元気でしたか?」

「大尉じゃねぇよ。今は中佐だ」

「へぇ。大尉の性格から考えて、そこまで昇進しているとは思えませんがね」


今、普通に後畑と会話していたのが、(ゼロ)というアンドロイドです。

男か女か分かりづらい外見の汎用アンドロイドで、怪我の治療や戦闘、各種兵器のメンテナンスや修理などなど、物凄い万能なヤツです。


ちなみに、正式名称は「零式汎用人型機工兵」と言います。


そして、弌が連れてきたもう一人は―――


「アコのこともあるし、大体分かるぞ。お前、ルティだな?」

「$%☆&¥※☆*÷=\!」


謎の奇声を発して、ルティと思われる少女が飛びかかってきました。

その跳ぶスピードは尋常ではなく、抱きつかれた後畑が大ダメージを喰らっています。


「ゴフッ、ちょっ、待って痛い……」

「■○☆¥※!? んぅー……」


ここに至ってようやく、マトモな発音が聞き取れました。


「にしても……俺の想像と全く違うな」


まず、ルティは、彼がもとの世界で飼っていたメスの蜘蛛です。

種類はセアカゴケグモで、名前は例のごとく学名からとっています。


後畑は、ルティがアラクネ―――蜘蛛に人間の上半身が付いたアレ―――になっているのではと思っていました。


ルティは、少々語弊があるかもしれませんが、普通の人型です。

首から上は普通ですが、首から下は、黒くてツヤツヤな甲殻に覆われています。


手足は細く、特に指は鋭い爪のような形です。


女らしい起伏とかは甲殻のせいでまったく見えません。

しかし、両手を「脚」としてカウントしても、両手両足で「脚」は四本しかありません。


「お前、残りの脚は?」

「ん……むぅ」


バキバキッ! メキャッ!


なんかが剥がれるような音と共に、ルティの背中から、二対の細く鋭い脚が出てきました。


「ん」

「お、おう。すげぇな」


テキトーに返しつつ後畑は辺りを見回し……


「ま、この面子ならやっていけるかぁ」


と、呑気に呟きました。

すいません。

投稿が一週間ほど遅れてしまいました。

次は、7/15ぐらいまでには投稿できると思います。


登場人物がいきなり増えたので、ちょっと整理です。


後畑:主人公。軍人でロリコンな男の娘

リディア:狐耳&狐尻尾装備。ロリ、可愛い

アコ:後畑が育ててたトリカブト。異世界パワーで可愛いアルラウネになった

ルティ:後畑のペットのセアカゴケグモ。異世界パワーで人型になった

(イチ):アンドロイド衛生兵。なぜか後畑を御主人と呼ぶ

(ゼロ):汎用アンドロイド。爽やかイケメン風

草架、結城、鷹田、岩本:後畑の友達。多分もうちょっとで出てくる

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