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拠点を探そー!

~前回のあらすじ~

ひと狩り終えて腹ごしらえしたらさあ出発!

まあ色々と問題だらけだけど、取り敢えず行ってみよー!

でもこのノリがいつまで続くんですかね……

「ここ虫多すぎだろ……SAN値がゴリゴリ削られてる気がする」

「お兄ちゃん帰ろうよぉ……」


「ム、リ! 戻ったら虫の死体とそれに群がる謎の化物がわんさかいるの! それにここの植物、再生っつーか増殖っつーか……それが早すぎて道がなくなっちゃってるの!」

「むぅううう……」


 視界を妨げる藪を肉切り包丁でぶったぎり、たまに出てくる巨大蟻や巨大青虫とかを切り殺してガンガン先に進んでいきます。


 リディアがいると言うのに、軍隊でもやらないような急行軍をしているのは理由があります。

 この虫共、死ぬ直前に奇声を発し、仲間を呼びやがるのです。


 なので、モタモタしていると、すぐにえげつない量の虫がそこら中から湧いてくるのです。


「お兄ちゃん、どこに行くか全く決まってないって言うのは……嘘だよね?」

「半分ホントで半分ウソだ。俺は本にあった『方舟』を目指してるんだが……それがどこに有るのか分からん」


「なんで『方舟』が良いの?」

(かん)

(大丈夫かなぁ……?)


 そして、歩くこと数時間、リディアの足が棒になってきたぐらいで、その「方舟」を発見しました。


「……は?」


 しかし、後畑は間の抜けた声をだしました。


「この色……ウチの軍の軍艦グレーじゃねぇか」


 そう、彼の目に飛び込んで来たのは、()()()()()()()()()()()()でした。


「いや、まさか、でも……」


 後畑は突然、リディアを抱えて駆け出しました。


「お兄ちゃん!?」

(俺の予想が正しければ()()が有るはず!)


 そして、彼は目的のモノを見つけました。


 大きな船体からヤジロベエの腕のように突き出た水流ジェット式の加速装置、無理やり溶接された艦載機用のカタパルト―――


「やっぱり、お前なのか……? ()()……」


 そして、そう呼ばれた船は、肯定するかのように、そして嬉しそうにその船体や砲を鳴動させました。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 ()()()()「畝傍」、それがこの船の名前です。

 もとの世界で後畑が数年間、乗っていました。


 駆逐戦艦という名称は、「畝傍」ぐらいにしか使われていません。

 何故なら、そのカテゴリに入るのが「畝傍」しかないからです。


 まあ、このカテゴリは戦艦の設計者達が迷走しまくった結果ですから、仕方ないっちゃあ仕方ないのですが。


 戦艦と比べると圧倒的な速力と、多数設置された魚雷発射管以外は、ただの戦艦です。

 スピードが有りすぎて旋回性が著しく落ちているのはご愛敬というヤツです。


 しかし、速力高めで装甲が厚く、魚雷発射管があり、砲も強力となると、重巡洋艦ではないかと言われたりもしますが、そこは設計者達が頑なに「これは戦艦だ」と言い張ったため、駆逐戦艦という謎のカテゴリになりました。


 因みに、この船は他国でも日本国防軍の三大珍兵器として知られています。

「畝傍」以外の二つの珍兵器も国防海軍が関係しているので、そのうち後畑とかがこの世界で再現するかもしれません。


 しかし、後畑はこの船の()()()()()船体を見て、不信感を募らせました。


(なんでこんなに綺麗なんだ? この船は激しい砲撃戦の末、航行不能になって自沈させたはずだ)


 後畑の記憶の中では、左舷側の加速装置はへし折れ、艦橋(ブリッジ)は前部がひしゃげ、三番砲が大破していて、更にその他大小様々な傷があり、とても戦える状態ではありませんでした。


 しかし、今彼の目の前にあるこの船は、進水当時と同じ姿です。


 パシュッ!


 炭酸飲料のフタを開けたときのような音と共に、縄梯子が降りてきました。

 緊急脱出用のものです。


(誰が操作してんだ?)

「お兄ちゃん、ここ危ないかも」

「なんで?」

「嫌な予感がするの」


 リディアにそう言われて、後畑は少し考えましたが、今さら引き返すような彼ではありません。


「まー良いから行くぞ! 魔王だろうが沖田艦長だろうが、叩きのめしてやるぜ!」

「オキタカンチョウ?」


 リディアを担ぎ、後畑は超がつきそうなぐらい不安定な縄梯子を楽々上っていきます。


 そして、すぐに甲板に登りましたが……そこでちょっとひと悶着ありました。


 なにかというと、でっかい蜘蛛がいたのです。

 デカイといっても、戦車ぐらいの大きさです。


 さっきの森で出てきたイモムシや蟻ん子の大きさが、普通に電車ニ両分ぐらいだったので、感覚がおかしくなってしまっているのですが。


「ふえぇ」

「ヒュ~、普通にでけぇな! 流石だぜ全く! (あとガワが可愛くないッ!)」


「キシャァアアアアアアアア!」


 蜘蛛はありきたりな叫び声を上げ、両足を上げて襲いかかってきました。

 その両足は丸太のように太く、その爪は鎌のように鋭く(というか形もほぼ鎌)、鋼鐵のような鈍い光沢を持っています。


 ズガギャンッ!


 足が振り下ろされると、畝傍の甲板にデカイ穴が開きました。

 この蜘蛛、どうやら1t爆弾を食らっても壊れなかった甲板に穴を開けられる、馬鹿みたいな怪力が有るようです。


「てめぇ……! よくも俺等の(ふね)を!」

「お兄ちゃん逃げないと!」

「ッ! でも逃げられるか?」


 後畑は一度、冷静になって蜘蛛を観察してみました。

 そこで、奇妙なものを目にしました。


 メリメリッ! シュウウウウウ!


 よく分からん効果音と共に、畝傍の甲板が()()していきました。


「は?」

「お兄ちゃん早く!」


 突然、リディアに砲塔の裏に引きずり込まれました。

 リディアは、彼女の細腕に似合わない怪力で、抵抗していないとはいえ、武器と本を大量に持った後畑を、普通に引きずり込みました。


(なんださっきの馬鹿力!)

「馬鹿力じゃないよ! 魔法で強化すれば簡単だよ?」

「お前……身体能力向上(フィジカル・ブースト)のやり方知ってたのか!?」


 ウィーン……ガシャッ!


「何の音……!」


 ズヴォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!


 突然、畝傍の対空ガトリング砲がこちらを向き、銃撃してきました。

 口径が60㎜もあるので、砲撃といってもいいのでしょうか?


 しかし、その銃撃は、後畑達を狙ったものではありませんでした。


 ズギュギュギュギュガガガガガガギンッ!


 銃撃で穴だらけになった蜘蛛が、崩れ落ちました。

 倒れたとかそういうのではなく、砕けて、バラバラになった死体が、文字通り崩れ落ちました。


「あっぶねぇ」

「お兄ちゃんが意外と軽くて良かったよ。だってあの大砲さん、お兄ちゃんが邪魔っぽかったから」


「え?」

「アレ? お兄ちゃん聞こえなかった? 『巻き込みたくないから退いて』っていう()()()()()


「何にも聞こえなかったけど……」


 ガチャッ! ギャラギャラギャラ! ギィイイイ


 船内への扉から、解錠する音と、ロック用のレバーを回す音、さらに開く音まで聞こえました。


「来いってことか?」

「なんか怖いよ」

「ま、行くか。さすがにあんな巨大な蜘蛛、船内にはいねぇだろ」


 後畑は、嫌がるリディアを引き摺りつつ、巨大蜘蛛の魔核を取り出し、そのまま船内へ突入しました。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

「な~んにもいねぇのな」

「いなくていいよ……」


 後畑は現在、自分の部屋に向かっています。

 彼が畝傍に乗っていた頃は、まだ階級が低かったので、草架と相部屋でした。

 草架と共に数年を過ごした船室が、そのまま残っているはずです。


 そして、進んだ先には、予想外の宝部屋(?)を見つけました。


「ん? おお! 武器庫ってここだったか!」


 自分の部屋より先に武器庫を発見できたことを、後畑は素直に喜びました。


 ピッ! ヴィーン……ガチャ


 後畑は、生体認証によるロックをパパッと解錠すると、使えそうな武器を物色し始めました。


「重機は重すぎるし、ロケランは危ねーし……やっぱコイツらかな」


 後畑は独り言を呟きつつ、良さそうな武器を手に取り、代わりに使えない武器(クレイモアとか)を置いてきました。


「よし、これでスッキリした」

「お兄ちゃん、それもしかして銃?」

「うん。四三式軽機関銃と、バレットM219jc」

「ふ~ん」


 四三式は、日本国防軍の代表的な軽機関銃で、バレットM219jcは、アメリカ製の対物ライフルを日本人用に改造したものです。


「あっそうだ。リディア、これ持っとけ」

「なーに? ソレ」

「杉田式拳銃って言ってな。軽くて、使いやすいんだよ。俺が近くに居なくて、危なかったら使え」

「分かった」


 分かったと言いつつも、リディアは微妙な顔をしています。


「あらよっと」

「何したの?」

「セーフティかけた。この拳銃は、ここのツマミを『ア』のところに合わせると引き金を引いても弾がでなくなるんだよ」


 弾が出なくなって安心したのか、リディアは嬉しそうに両手で拳銃を抱えて、後畑についてきました。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

「さて。突入だな」


 歩くこと数分、後畑は(元)自分の部屋にたどり着きました。

 彼はチャチャっと突入準備を整え、リディアを背に庇いつつ、扉を開けました。


「動くなッ! 抵抗するなら……いや、誰もいねぇか」


 いつもの癖で言ってしまいましたが、誰もいないハズなので、少々恥ずかしい結果に終わりました。


「チッ……なんだよこの剣……気味(わり)ぃな」

「フーッ! ウウウウウウウウ!」

「あん?」


 後畑が振り向くと、リディアが物凄い顔―――少なくとも女の子がしてはいけない―――をして、耳と尻尾の毛を逆立て、威嚇っぽい感じの動作をしていました。


「お兄ちゃん! ソレから離れて!」


 そして、後畑もリディアも気付けないような死角から、得体の知れないナニかが、迫っていました。

ちょっと遅れてしまいました。

次の投稿は6/16ぐらいになりそうです。

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