カミサマに質問!
~前回のあらすじ~
野盗の群れを軽く殲滅して、ようやく幼女とほのぼのタイムが!
十分ほのぼのした後、ちょっとやること、というかカミサマに聞きたいことが……
ってなわけで聞いちゃおう!
「……アンタ等誰だ?」
後畑の、最初の台詞はそれでした。
今彼の前に座っているのは、イザナミさんではなく、肩に翼を生やした二人の美少年でした。
二人共よく似ていますが、片方は仏頂面で、もう片方は優しそうな笑みを浮かべています。
「誰だと思う?」
「知るか!」
いきなり聞かれてもわかるハズがありません。
「ヒュプノス、自己紹介ぐらい直ぐに終わらせられないのか?」
「タナトス、人に印象を残すのに一番重要なのは自己紹介なんだよ?」
二人の美少年が目線でバチバチ火花を散らしています。
「眠りの神と死神が俺に何の用なんですかね?」
「別に? ただ面白そうだったから」
「ああ。興味が湧いたから来た。それだけだ」
あまりにフリーダムな二人の返答に、後畑は絶句してしまいました。
そして、そこそこ長い間をおいて、ようやく二言目を捻り出しました。
「そういや、この部屋ってなんなんだ?」
出てきた台詞は、話の流れをガン無視した物でしたが。
ちなみに、今後畑が居るのは、イザナミと出会った時と同じ、光の部屋です。
「ああ。この部屋ね……そんな事どうでも良いしは置いといてさ―――」
「置いておくな。この部屋は、祈っている者と神を繋げるモノとでも考えておけ。祈っている者に興味を持った神が、この部屋でその者と対話する」
「ふ~ん。……じゃあ二つ目の質問。俺達の世界はどうなってる?」
「平穏無事、とでも答えておけば良いか?」
「じゃあ質問を変えようか。俺達が行方不明になった影響を教えてくれ」
「皆無だ」
「どういうことだ? 世界的にはそうかもしれないけど、少なくとも俺達の所属基地には影響が―――」
「無い」
「タナトス、それじゃあわからないと思うな」
ヒュプノスが一拍置いてから答えました。
「僕らが、君達のコピー……いや、君達そのものを造って配置しておいたからね」
「じゃあ、その偽物が上手くやってるって事だな?」
「其れも違うよ。あれは偽物じゃあない。君達そのものさ」
後畑は、理解不能と言いたげな顔をしています。
「仮にソレが俺達そのものだとしても、何故そんな事……?」
「『何故できるか』という質問であれば、それは我々が神だからだ」
「『何故そんな事したのか』っていう質問なら、君達がいないと、あの世界のバランスが崩れるからだよ……ねえ? 白の虐殺者クン?」
「何故ソレを……」
「それも僕らが神だからだと言っておこうか」
「白い軍服、右手に軍刀、左手に盾、背中に砲。時代に逆行する戦術で数多の敵軍を蹂躙しているようなヤツを、神が気にしないと思ったか?」
「そうかい」
「まあ、こんなことどうでも良いからチャチャっと加護を授けようか」
「そうだな」
二人は立ち上がり、後畑の肩に手を置きました。
「終わったよ」
「……成功したか分からん。確認してくれ」
「分かった」
「ボード、オープン」
ピュイ!
【コウハタ クウト】
種族:人間
生命力:〒†⊿=:Щ/ξ
MP:110
スキル:気配察知lv4、剣術lv7、槍術lv5、銃剣術lv9、砲術lvMAX、砲撃術lvMAX、狙撃lvMAX、亡者の先導者lv2、闇魔法lv2、外道魔法lv1、母性lv2、雷神召喚lv1、生命力表示、死の足音lv1、無慈悲lv5、睡眠魔法lv1、睡眠無効、慈悲lv1
加護:イザナミの加護
タナトスの加護
ヒュプノスの加護
「おおう……ってアレ? 生命力が文字化けしてる」
「やはりな」
「何がさ?」
「後畑といったな……調べておこう」
「どういう意味だ?」
「タナトス……君はいっつも自己完結してるから俺も分かんないの!」
すると、ちょっと難しい顔をしてから、タナトスが言いました。
「お前、幼少期に何があった?」
「ッ!」
「どういうことさ?」
「詳しいことはソイツに聞け。俺は行くぞ」
「あっ、ちょっと!」
タナトスはもう用は無いとばかりに、さっさと光の部屋から出ていってしまいました。
ヒュプノスは、申し訳無さそうな顔をすると、険しい表情になりました。
「さっきのはどういう事だい?」
「……それは言えない」
「教えてくれ」
「嫌だ」
「何で?」
「アレを思い出させないでくれ!」
後畑は、顔が真っ青になり、指先が震えています。
「……分かった。僕も勝手に調べさせて貰うよ」
「是非そうしてくれ……」
「ハァ、なんか気まずいね……他に質問ある?」
「じゃあ魔法の使い方教えろ」
「分かった……っていうか、立ち直り早くない?」
「これぐらいできんと戦場ではやっていけんよ」
後畑は、いつも通りのニヤニヤ笑いを顔に張り付け、言ってのけました。
「よし。じゃあやろっか」
「はーい」
「まず、自分の魔力の流れを知るところからだね」
「どうやんの?」
「瞑想してみて」
「わかった」
後畑は、胡座をかいて目を瞑り、呼吸を整えてみました。
「そこで、自分の中のなんかよくわかんない力の流れ的なのを探ってみて」
「ん~……わからん!」
「君たちの世界では、『気』とかそういう感じで説明されてるモノだよ……殺気も、魔力の圧の一種なんだけど」
「あっ……そういうやつならビンビン感じてるわ」
後畑は、なんかモヤモヤしたナニカというような感じで認識しているようです。
「で、これをどーすんだ?」
「魔力を魔法を放つ場所に集めて、魔法の効果をイメージするんだよ」
後畑は、試しに指先にそのモヤモヤを集め、ライターをイメージしてみました。
すると……
「「……………………」」
何の反応もありません。
「どゆこと?」
「試しに闇っぽいもの想像してみてよ。君、闇魔法のスキル持ってるし」
「はいはーい」
後畑はポ◯モンのシャ◯ーボール的なのを想像してみました。
ブワッ!
指先から、黒いモヤモヤがすごい勢いで出てきました。
明らかに危ない感じですし、何故か置いてあったちゃぶ台の、モヤモヤに触った所が腐っていきます。
「うひゃあ!」
「マズイ!」
しかも、止まりません。
「うおわああああああ!」
「落ち着いて!」
後畑は驚きのあまりひっくり返ってしまい、その拍子にモヤモヤが消えました。
「心臓にわりぃな……」
「初めてとはいえあんなに暴走させるとはね」
ヒュプノスは、一拍置いてから切り出しました。
「他に質問は?」
「スキルの使い方」
「なるほどね。分かった」
「フム。それはワシが教えようかの」
「「!!」」
「驚かさないで下さいよ……ヘファイストスさん!」
突然出てきたお爺さんに、後畑は面食らってしまいました。
「ヘファイストス? 鍛冶の神か」
「いかにも」
今後畑の目の前に居るのは、赤毛の姉御とか、醜悪な老人とかではなく、筋肉ムキムキの好好爺でした。
「ヘファイストスっつーと醜悪な老人って話だが……意外とそうでもねぇのな」
「フォッフォッフォ。美男美女揃いの他神と比べると、十分醜いんじゃよ」
「ふーん」
(これで醜いとかカミサマの基準ってだいぶおかしくね?)
後畑の目には、老いて尚逞しいお爺ちゃんとしか写らないのですが。
「色々驚いていると思うが、そこら辺の事はほっといてくれ」
「はーい」
「さて、スキルの使い方じゃが……」
「じゃが……?」
「特に何もない」
「………………はい?」
予想外すぎる答えが飛んできて、後畑は一瞬、思考がフリーズしました。
「なんと説明すればいいのかのう……」
「ワカリマセン」
「お主、楽器は嗜んでおるか?」
「まあ、少しは」
他人に披露することは滅多にありませんが、後畑は一応、ヴァイオリンとピアノを弾けます。
「それならば話は早い。楽器を何度も練習すれば、殆ど意識せずに一曲弾けるじゃろう。それと同じじゃ」
「……つまり自動ってことか」
「そういうことじゃ」
「なるほどね」
「物分かりが良くて助かるわい」
「さっきから俺のこと忘れてるよね?」
ずっと静かにしていたヒュプノスが騒ぎ始めました。
「うるせー」
「ふむ。それではワシも加護を授けてとっとと退散しようかの」
ヘファイストスは後畑の肩に手を置きました。
「終わったぞい」
「あんがとさん!」
「それじゃあ、また会えるのを楽しみにしておるぞ」
「じゃね!」
「またなー」
ヒュプノスとヘファイストスが消えてから、後畑も目を閉じました。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「戻ってきた」
「お兄ちゃんお祈り長かったね」
「ん? おう。カミサマとお喋りしてたもんでな」
「カミサマに会えたんだ! どんな人?」
「ヒュプノスとタナトスとヘファイストス」
「たなとす? 死神さんだね!」
「よく知ってんな」
「うん!」
元気一杯な感じのリディアでしたが、どうやら限界が来たようです。
「お兄ちゃん……眠い」
「分かった。もう寝ようか」
「は~い」
そして二人は教会の、ボロボロのベッドで仲良く眠りました。
遅れてごめんなさい。
次は5/10ぐらいの投稿になりそうです。