いざ出発!
~前回のあらすじっぽいの~
草架達と畝傍で合流した!
色々あって即席ジープでグランドバルド王国に行くことになった!
《畝傍/艦載機格納庫》
後「ふんふふ~んふん、ふんふふ~んふん……」
草「なあ、後畑?」
後「何?」
草「馬車ってこんなにゴツゴツしてたっけ?」
後「……知らぬ」
草「こんなに堅かったっけ?」
後「…………知らぬ」
草「これ、兵員輸送車の後ろ半分だよね?」
後「………………悪気は無かったんです」
草「ハァ~……どうしたもんかね」
後「もう作っちゃったし良いんじゃない?」
草「開き直りやがって……もう良いや。因みに、イゾルデさん達はどう思う?」
いきなり話を振られたイゾルデは、かなり困惑した表情です。
イ「そこらの馬車より大分良いと思う。ただ……」
後「ただ?」
イ「それで町まで行くとかなり悪目立ちする気がするな」
後「ようし分かったぞう! つまりは目立たなくしちゃえば良いわけだ!」
草「激しく嫌な予感」
結「右に同じく」
更にこの後、後畑工房がフル稼働で数時間改造を施し、多くの日本人が想像するであろう異世界風馬車仕様になりました。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《畝傍の外》
後「意外と重かった……動くかね?」
草「こればっかりは実験しないとどうにも分かんないね」
後「じゃ、試すか」
後畑は早速車に乗り込み、エンジンをかけ、アクセルを目一杯踏み込みました。
ブルオオオン! ガラガラ! ブルオオオオオオン!
騒音と共に、ジープはノロノロと加速を始めました。
後「うっし。いけた。遅いだろーけどまあ歩くよりマシ……だよな?」
草「うん。大分楽だと思うよ……来るときは魔力量に任せて強引に身体強化してきたからそこまでかからなかったけどね」
後「スゲーなお前ら」
鷹「疲れにくいし速いけど、後でなんか精神がやられるんだよね~」
後「へぇ……で、王国までの距離は?」
後畑は突然、イゾルデに話を振りました。
イ「ここからだと王国までは……そうだな、5㎞ほどだと思う」
後「遠いな……リディアも連れてくか」
草「乗る場所は?」
後「俺の膝の上!」
草「そうですか……」
後「運転はお前な」
草「分かってる。で、索敵役は?」
全員「「「「うーん……」」」」
結「……俺は南に頼みたい」
南「なんで俺?」
そう聞かれた結城は白衣ポケットを漁り始め……見つからなかったのか、ズボンのポケットを漁り始めました。
結「これを」
南「ナニコレ?」
結「超ウルトラで高性能な外付け式集音マイクだ……集音性能が高すぎて通常の人間の脳では情報処理が追い付かないのが難点だ。だが、南なら……」
南「なるほどな。ダーナと繋がっている半分コンピュータな俺の脳なら大丈夫というワケだな?」
結「そういうことだ」
後「……ナントカイヤーは地獄耳」
草「ネタパロやめい」
後「じゃあ、南が銃座だな」
南「まあ、そうなるな」
草「俺が運転席、後畑が助手席、南が銃座……あとの四人は?」
結「俺は前列左側で」
前「じゃあ俺は中央列右側で」
鷹「一番後ろが良いな~」
岩「俺が後列右側だな」
鷹「じゃあ俺は後列左側~!」
どんどん席が決まっていきます。
後「そうだ! この馬車的なナニカに名前つけようよ!」
草「短めで頼む」
後「じゃあ、兵員輸送用装輪籠!」
草「長い……まあ良いや」
鷹「良いんだ~」
草「これ以上なにか言うともっと長くなるオチだよコレ!」
岩「ならやめておこう。どうせ綠なことにならない」
モブA「隊長……我々はどうすれば……」
イ「分からん……取り敢えず待つしかない……」
またもや流れに取り残された方々(イゾルデ+α)はオロオロしてしまっています。
そして、妙に勘が良い草架が真っ先にそれに気づくのも、いつも通りです。
草「あっ……イゾルデさん達はその馬車っぽいのに乗ってて」
イ「了解した」
イゾルデ以下7名が黙々と兵員輸送用装輪籠(馬車風)に乗っていきます。
後「ここをこうして……こうだッ!」
ガチャン!
そうこうしてる間に、後畑がパパッと連結作業を終わらせました。
後「さーてと、後はリディアだな……草架、身体強化の方法教えてくんない?」
草「分かった……魔力を強化したいとこに集中的につぎ込んで流す。以上!」
後「分かった!」
鷹「あれで出来るの?」
草「大丈夫。アイツはセンスの塊だか―――」
バゴンッ!
草「―――ほらね?」
後「痛ってー! やり過ぎた! 速すぎた!!」
鷹「スッゴいぶつかり方したね~」
何が起こったかと言うと……ただ単にスピードつけすぎた後畑が畝傍に激突しただけです。
結構なスピードでぶつかったのですが、後畑はピンピンしています。
後「まあ良いやコツは掴めたさあいくぜ!」
ダンッ!
後畑は大ジャンプで、中途半端に巻き上げられた状態の錨に飛び乗り、そこからさらにジャンプし、あっという間に甲板に到着しました。
そしてそのまま艦内に入っていきました。
鷹「早いね~」
草「じゃあ俺たちは乗って待ってようか」
結「後畑は何をしに行ったんだ?」
草「リディアちゃん連れてくとか言ってた」
岩「相変わらず自由だな」
草「それがアイツの唯一の良いところだし変わることは一生ないよ……」
草架はため息をつきながら、諦めるような口調で言いました。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《畝傍/艦内》
ウィーン、ガタン!
自動ドアが空くのが待ちきれなかったのか、後畑が開ききっていないドアを蹴り開けました。
リ「ふええ!?」
後「よしリディア! お出掛けだッ」
リ「えっ、えっと……どこに?」
後「グランドバルド王国の王都なんだが……行きたい?」
リ「うん!」
後「よしじゃあ早速―――」
ル「妾は誘ってくれんのか?」
横合いから突然、ロリヴァンプが会話に割り込んできました。
ちょっと寂しそうな声です。
後「却下。お前なんか連れてったら王都が大騒ぎになるだろ」
ル「む……それを言われるとのぅ……」
後「まーそんなにかからんと思うから気長に待て」
ル「そうじゃの……」
後「じゃあ行くぜ!」
リ「はーい!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《畝傍の外》
後「連れてきた!」
草「早く乗ってくれ……」
後「おうよ!」
後畑は速やかに扉を開き、ジープに乗り込みました。
そして、草架は後畑がシートベルトをしたのを確認すると、直ちにジープを発進させました。
ジープはガタガタと、しかしエンジン音を一切たてずに走り出しました。
後「ん? 妙に静かだな」
草「まあね。この世界で使うにはうるさすぎたからね……エンジンルームに遮音魔法かけといたよ」
後「お前マジ天才だわ」
草「まあ、魔法かけてんのは結城なんだけどね」
結「意外と神経を使う……早くしてくれ」
草「了解」
草架は目一杯アクセルを踏み込み、ジープを加速させました。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《森の外/平原》
畝傍があった変な森を抜けると、そこは後畑が確認した通りの、だだっ広い平原でした。
そして早速、南の超高感度マイクが何かを察知したようです。
南「ちょっと車止めてくれ。右側から接近してくる足音がある……個体数は4、5匹ぐらいだな」
後「種類とかわかる?」
南「少し待ってくれ……小型の四足獣、多分ウサギだな」
後「ウサギか」
草「ここら辺で出るウサギって言ったら―――」
鷹「ホーンラビットかプレデターラビットじゃない?」
草「多分ね」
後「ソイツらどんな魔物なん?」
後畑の疑問に、草架はそこそこの厚みがある本を手渡すことで回答しました。
後「ん? なにこれ」
草「ここら辺の魔獣と魔物の絵付きポケット図鑑」
後「へえ」
後畑は図鑑をパラパラとめくり、読み込んでいます。
ホーンラビットはその名の通り角がはえた草食ウサギで、プレデターラビットはえげつない脚力で執念深く追いかけてくる肉食ウサギです。
後「これホントにウサギ?」
草「うん」
後「怖っ!」
南「見えたぞ。でも遠いから見え辛い」
後「じゃあ俺が見る!」
そう言って後畑は扉を開け、ルーフに飛び乗ると……
後「あらよっと」
南「いやちょっと待てどこからそんなものを出した!?」
後「企業秘密」
どこからともなく巨大な対戦車ライフルを取り出し、ジープの天井で構え、スコープを覗き込みました。
スコープでは、プレデターラビット2羽がホーンラビット3羽を追いかけている様子が見えました。
後「うわあ図鑑の絵の通りだ……撃っていい?」
草「一匹ぐらいなら。ホーンは美味しいからなるべく回収したい」
鷹「屋台のおじさんとかに良い値で売れるよ~」
結「プレデターはそんなに美味しくないから吹っ飛ばしていいぞ」
岩「ああ。あれ生臭いし固いからな……喰えなくはないが」
後「見た感じそのプレデターとやらにホーンが追いかけ回されてるな」
そして後畑はスコープを覗き、引き金を引きました。
ズッッダァン!
雷鳴のような音が響き、マッハ2ぐらいで弾丸が飛んでいきます。
距離は500mほどなので、当たるのには1秒もかかりません。
グシャッ!
肉が潰れる音と共に、プレデターラビットの体が弾け、鮮血と肉片を撒き散らしました。
そしてさらにもう一度
ズッッダァン!
二匹目のプレデターラビットもさっきのように吹っ飛びましたが、それでもホーンラビットは止まりません。
後「何でこっちに来るんだ?」
草「さあ? 逃げるのに必死すぎてコッチに気付いて無いんじゃない?」
後「でもプレデターいなくなったんだし走る意味無くね?」
草「知らないって」
ドタッドタッドタッ!
ホーンラビットA「キュー!」
奇声をあげながら真っ白なモフモフ毛玉が飛びかかってきました。
後「なんだお前!?」
ドゴッ!
後畑は反射的にライフルで殴り殺してしまいました。
頭を叩き潰されたホーンラビットはそのまま地面に墜落しました。
ホーンラビットB「キュキュッ!」
後「だからナンデ!?」
ズシャッ!
今度はナイフを抜き、一閃。
首を真一文字に裂かれたウサギは、力なく倒れました。
ホーンラビットC「キュ、キュー!」
なんかさっきより小さめの毛玉もタックルしてきましたが……
後「お前ちっさくない?」
ガシッ!
ホーンラビットC「キュキュー! キュー!」
後「子供か……?」
草「結局ホーンどうしたの?」
後「ウサギ二匹殺して一匹捕まえた」
草「死体は?」
後「一個はそこら辺に落ちてる。もう一個は俺が持ってる」
草「りょーかい」
草架は外に出てくると、ウサギの死体を麻袋っぽいのに放り込むと、その袋を後畑に投げ渡しました。
後「血とか大丈夫?」
草「それ四次元麻袋だから大丈夫。中の物は不思議パワーで守られてるらしいから」
後「じゃ、いっか」
後畑は麻袋に死体を入れ、子ウサギを抱えたままルーフから飛び降りました。
そして、彼がドアをあけると……
リ「ひうぅ……怖いよぉ」
リディアが座席の上でうずくまり、ビクビクしていました。
狐耳がぺたっと閉じていて、自分の狐尻尾を握りしめて縮こまっている姿は、中々に可愛らしいものです。
後「リディア……どしたの?」
リ「ふえ!?……お兄ちゃん!」
後畑が声をかけると、リディアはものすごい勢いで飛び起き、そのまま後畑に抱きついてきました。
後「何があった?」
リ「怖かったの! ドーンって雷みたいな音が二回もしたの」
後「雷……? あ、それ多分俺のせいだ」
リ「お兄ちゃん雷魔法使えるの?」
後「使えないよ。でも、雷みたいな音がなっちゃう道具なら持ってるからね……怖がらせたお詫びと言ってはなんだが、ホレ」
後畑は鷲掴みにして捕獲したホーンラビットの子供(?)をリディアに手渡しました。
リ「わー! かわいー!」
リディアは目を輝かせてホーンラビットの子供を受け取り、抱きしめました。
はじめは抵抗していたウサギですが、少ししてして大人しくなりました。
リ「モフモフだ……!」
子角兎「キュ、キュキュ!」
リ「なーに? もしかして名前が欲しいの?」
子角兎「キュキュ?」
リ「分かった! じゃあ……うーんと……じゃあ、ラビちゃん!」
子角兎「キュー!」
子ウサギの名前が決まり、リディアが嬉しそうにしているのを、後畑はのほほんと見守っています。
草「早く乗ってね」
後「わーってらあ」
後畑は手早く乗り込み、ジープはゆるゆると加速を始めました。
今回投稿まで非常に間が空きました。ごめんなさい
次の投稿は……忙しいので時期未定です。