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序章

 《日本国内/とある山奥の秘密研究所》


 時は23世紀、日本の自衛隊が日本国防軍になるぐらいに世界情勢が不安定化し、すでに世界各地で泥沼の内戦や紛争がおこっています。


 まあ、自動言語翻訳装置とか、ミノ○スキー粒子的な粒子とか、自律式の戦闘用アンドロイドとかが出て来て、戦場がだいぶカオスな状況になっています。


 そんな中、怪しい連中が山奥の研究所で危ないことをやらかそうとしていました。


「フフフフフフフフ! 遂にこの時が来たな! 結城!」


 こう楽しげに言っているのがこの作品の主人公の、後畑(こうはた) 空斗(くうと)です。

 若干クズなメッチャ若く見える男の娘です。

 因みに、研究所の中なのに完全武装です。


「……お前が何故そんなに楽しそうにしているのか分からんが、取り敢えず同意しておこう。実際、俺もワクワクしている」


 そして、こう返しているのが、後畑の親友である結城(ゆうき) 直助(なおすけ)です。

 コイツはイケメンなマッドサイエンティスト(?)です。


「後畑、落ち着け。まだ異世界に扉が繋がるか分からないじゃないか」


 そして、後畑を落ち着かせようとしているこの人は、後畑の善き相棒である草架(くさか) 啓吾(けいご)です。

 こっちは人の良さそうな整った顔立ちの青年です。


「でも、繋がるかもしれないんだろう!? そりゃあ落ち着いては居られんよ!」

「ハァ……俺じゃ無理だ。増援求む!」


 後ろの壁にもたれ掛かり、不干渉を決め込んでいた二人に、草架は視線を向けました。


「お前に無理なら俺も無理だ」


 冷たく返すこの男は岩本(いわもと) 翔太(しょうた)です。

 この人は……クソ真面目なゴリラです。


「そうだよ~。草架の声が聞こえないくらいエキサイトしてる後畑とか、俺じゃ止められないよ~」


 最後に、こいつは鷹田(たかだ) 哲郎(てつろう)です。

 図体デカいし筋肉ムキムキなクセに、ふにゃふにゃした感じの、キモくて不思議なヤツです。


 後畑と結城以外は、軽く武装しているだけです。

 この五人、全然そんな感じしませんが、全員日本国防軍所属です(結城は軍に囲われているだけで、普通に研究者ですが)。


「チッ、こういう時は本ッ当に使えねぇな……」

「……今、草架の闇が見えた気がする~」


 この山奥の秘密(?)研究所に、後畑、草架、結城、鷹田、岩本という、日本軍内でもハチャメチャな事で有名な五人組が集結していました。


 何故かと言うと……


「それにしても『ブラックホールの空間歪曲現象を利用したワープ及び別次元への干渉』か。よくもまあこんなことを思い付くものだな?」


「俺は何となく異世界とか別次元とか行ってみたいなーって思ってたんだよ! そしたらなんか出来そうな理論がいきなり頭に浮かんだんだよ!」


「相も変わらず目茶苦茶だなお前は」

「ホントに少しは自重してくれよな」


「フハハハハハハハハハハハ! 俺を止められるのは滝川のおやっさんだけだぜ!」

「柿崎さんは?」

 滝川も柿崎も後畑の上司ですが、どうせ出てこないので気にしないで行きましょう。


「ウッ……それを言われるとぉ……」

「と?」

「と、とっととおっ始めようぜ! なあ結城!」

「了解した」


 結城は大量にあるキーを目にも止まらぬ速度で打ち、次々に機器のロックを解除し、起動させていきます。

「よし。完全に起動完了だ」

「おお! 遂にこの時が!」

「もう終わったか」


「さあ行くぞ! 実験開始だ!」

 核融合炉と直結した巨大な実験装置が動き始め、その内部にブラックホールが完成しました。

 そして――――


 ギュオオオン! ギュオオオオオオオオン!


「なんかヤバくね?」

「あ、ああ」

「ちょっとマズイ気がするから止めようよ」

「いや、異界の扉を開くにはこれくらい……」

「なんか生命(いのち)の危機を感じるから!」

「俺も少々身の危険を感じる……中止にしよう」


 結城がコンソールのキーを叩いているのですが、どんどん顔が青くなっていきます。

「どうした?」


 結城の尋常ではない雰囲気を感じ取ったのか、後畑が声をかけています。


「マズイ……止められない!」

「なぬ?!」

「ええ!?」

「どういうことだ?」

「うわあ~!」


「このままだと暴走s―――」

 結城が何かを叫んだ瞬間、彼等の視界は真っ白に塗り潰されました。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 《?》

「……んぅ……ここは……」


 後畑が目覚めた時、真っ先に視界に入ってきたのは見慣れない、木っぽいものでできた天井でした。


 彼は、ガバッという効果音が聞こえてきそうな勢いで身を起こし、辺りを見回しました。

(見たことねぇ変わった形の調度品ばっかだな……これって新手のドッキリかね?)


「Biastel di aufdestangen?」

「?!」


 突然聞こえてきた謎言語に、後畑はたいそう驚き、そして今の状況を理解しました。

 しかし、さっきまで一緒に居たハズの四人が居ません。

 どこへ行ったのでしょうか?


 そして、話しかけてきたのは、彼の横にいるローブを纏って顔を隠している不気味なヤツです。

 これからは黒ローブと呼びましょう。


 六人いるので、後畑は、右から順に黒ローブ1号、2号、3号、4号、5号、6号と呼ぶことにしました。


(俺……マジで異世界行けちゃったのか?!)


 後畑はちょっと嬉しくなりましたが、自分の足元―――正確には、座っている床を見て、ちょっと複雑な気持ちになりました。


(この魔方陣っぽいヤツって多分異世界からの召喚魔方陣とかだよな……俺達の論理、間違ってたのかな)


「Kannest di aus hörihiten?」

「ったく独自の言語喋ってンじゃねーよ……定石どうり言語翻訳スキルくれよ‼」

「!」


 後畑が日本語で語気強めにぼやくと、黒ローブ達が驚いたような気配を発し、何やら相談し始めました。


「(Diause Pearzon……its aus jaspanisch?)」

「(Aus weird seiln. Daz Schwaurot,daz aur hatt,its einnu Typi wine einnu Schwaurot)」


 黒ローブ達の会話を聞き、後畑は何かに気付きました。

(なんかコイツ等の言葉ってドイツ語みたいだな)


 まあ、確かに似ています。

 後畑は英語出来ないクセに、ドイツ語とオランダ語、フランス語は喋れます。


 フランス語は仏文学科出身であり、フランス留学したこともある彼の母親から習ったらしいですが、ドイツ語とオランダ語は完全に独学です。


(ドイツ語なら分かるしな……よし!)

 後畑は決意を固めると、黒ローブ1号に話しかけてみました。


「Wer bist du?」

「……? wauz?」


 どうやら通じていません。

(チッ……似てるだけか使えねぇ!)


 すると、黒ローブ6号がおずおずといった感じで、喋りかけてきました。

「ア、ノ……アな、た、日本じン、デスカ?」


 物凄くカタコトの、拙い日本語が飛んできました。

 突然のことで、後畑の思考はは一瞬(0.1秒ぐらい)止まりましたが、すぐに復旧しました。


「なんだよ日本語喋れんじゃねーか! だったら話は早い。今すぐ――――」


 後畑は台詞を中断すると、唐突に腰に差した軍刀を抜くと、黒ローブ2号の手を刺し貫きました。


「おいテメエ。何持ってやがる」


 黒ローブ2号は、苦悶の表情を浮かべつつ、その手に握るものを手放しました。

 それは、骸骨とかそういうのを模した紋様の、気持ち悪い短剣でした。


 そして、それを見た後畑は残酷で、凄惨な笑みを浮かべると……

「よし。テメェ等全員ぶっ殺す!」


 ギュギギギギギギン!


 彼は軍刀を思いっきりぶんまわし、黒ローブ1~5号の首を纏めて刎ねました。

 2号以外の黒ローブ達も戦闘準備っぽい仕草を見せましたが、なすすべなくスパッと斬られました。


 彼の軍刀は高周波震動によって斬れ味を劇的に向上させるタイプなので、頸椎も余裕で切れます。


 飛んだ生首には、人によって場所は違いますが、「杖に絡み付く二匹の蛇」をモチーフにしている(と思われる)タトゥーがありました。


 そして、一人残った黒ローブ6号に軍刀を向けつつ、さっきよりも凄みが増した笑顔を向けて脅しをかけました。


「お前、日本語分かるんだよな?」

「は、はイ……喋ル、のはヘタです、け…ども」

「じゃあこの世界の共通語教えろ。それが終わったら解放してやる」

「ワかり、ました」

「フン、頼りにしてるぜ?」


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 ~一週間後~


「いや~この世界の共通語がドイツ語っぽくて良かった! お陰で三日でマスター出来た!」


 後畑はそう言って伸びをしつつ言いました。

 彼は現在、黒ローブが使っていた建物の入り口に居ます。

 彼に言葉を教えていた黒ローブ6号は……言うまでも無いでしょう。


 敢えて言うとすれば、言葉を教え終わった時点で、肉体という牢獄から魂を強制的に解放してしまいました。


 一週間のうち三日で言葉をマスターしましたが、自分で喋れますが、聞くことは難しいレベルなので、自動言語翻訳装置に言語情報をインプットしています。


 この作業にに二日ぐらいかかったようです。


 後の二日は、この建物に大量に置いてあった書物を読み漁り、この世界の知識を蓄えました。


 ある本曰く、

「この世界は、魔法やら魔力やらが有り、同時に科学も発達している不可思議な世界」


 なので、科学とかを伝えて崇められたり、ハーレム作ったりは出来ないようです。


 そして、別の本曰く、

「文明や文化が行き詰まった時や、人類存亡の危機の時には国が異世界人を召喚する」

「たまに優れた技術を独占しようとする悪の組織によって異世界人が召喚されることもある」


 どうやら、あの黒ローブ達はそういう類いの連中のようです。

 後畑的には、

(殺して良かったんだね! 警察のお世話にならずに済んで良かった!)

 ぐらいの軽~い感想でしょう。

 異世界ですから憲兵さんでしょうか?


 いくつかの文献には「ヤマト」や「ニホン」、「大ニホン帝国」という記述も有るので、多分昔日本人が召喚されたことがあるのでしょう。

 黒ローブ6号が日本語を喋れたのもこういう事情があるのでしょう。


 最後に、余談っぽいですが、別の本曰く、

「特定の魔法を使えば死者の持つ知識や技術を脳から強制的に引き出す事ができる」

 らしいのです。


 黒ローブ2号が殺人未遂を犯したのは、こういう事情もあるのでしょう。

 確かに、未知の技術をもった何するか分からない異世界人から色々教えてもらうより、殺して情報を奪う方が安全で確実な気もします。


 何はともあれ後畑は解放され、異世界で自由を満喫する事にしました。

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