桜舞う日に Side Yellow
桜の花が風に舞う、4月。
天上学院では、入学式が行われようとしていた。
今日は、天上学院高等部の入学式だ。
…と言っても、ボクと双子の兄であるシュリは新中三だから本来ならば直接関係のある式ではないのだけれど…なぜか高等部の生徒会副会長さんに出席するように言われてしまった。
シュリは副会長のセナさんに「今年は面白い新入生がいっぱいいるわよ。」と言われただけで乗り気だったが、朝が弱いボクにとっては正直やめてくれという感じだ。
まぁ、次期生徒会長であろう先輩からのお誘いを断る気はないので、結局は出席するのだが。
玄関を出ると、門の前にシュリの乗った車が迎えに来ていた。
ボク達は、双子ではあるが、住んでいる家も苗字も違う。
まぁ要するに、いろいろあったのだ。
「おーい、キリー!早く乗れよー!」
双子の兄に急かされ、太陽の家紋のついた車に乗る。
この車が、現在シュリの家となっている「日宮家」の所有ということを示す家紋だ。
ボクがお世話になっている「宮月家」は月の家紋を持ち、日宮家とは対になっている。
「よろしくお願いします、運転手さん。」
「キリ、面白い新入生のこと、何か聞いたりした?セナ先輩、何も教えてくんねーの!」
「ボクが個人的に仕入れた情報だと、ボク達の『仲間』らしいけど。真偽は不明。」
「その情報を信じるとしたら、その人たちは何かの『色』を持ってるってこと?」
「そう。でも、それ以上の情報、名前とかはさすがに分からなかった。天上学院はガード固すぎ。ちょっとつまんない。」
「まさか、ハッキング…じゃないよね!?」
「違うよ、天上学院の教師から聞き出してただけ。ハッキングも考えたけど。…ちなみにシュリのお仕事パソコンはちょっと覗いたことあるよ」
「ん!?いやいや、日宮の機密情報が満載なんだけど!?」
「あんなゆるゆるセキュリティじゃダメでしょ、見られたくないなら。」
「普通見ないでしょ…」
「…。あのさ、日宮家って日本でも有数の名家だって知ってる?そんな名家の跡取り息子なんだからパソコンくらい狙われると思っとかないと、ねぇ?」
「うっ。そう言われると否定出来ない…」
「朱理様、黄理様、天上学院に到着致しました。」
「ありがとうございます。シュリ、行こう。」
「はーい、まずはセナちゃんの所に行った方が良いよね?生徒会室行こう!」
とりあえず、ボク達を招いた「桃川聖菜先輩」に会うために、高等部の生徒会室に向かう。
「失礼します、日宮朱理です。」
「宮月黄理です。桃川先輩はいらっしゃいますか?」
「来たわね、2人とも。ようこそ、高等部生徒会へ。」
セナ先輩が少しだけ大げさにボク達を迎え入れる。
と、眼鏡の先輩がこっちへ向かってきた。
確か、高等部の生徒会長だ。
「桃川、この2人がお前の代での役員候補の中等部生ということか?」
「そうです。朱理くんと黄理ちゃんです。」
「ん?黄理『ちゃん』と言ったか?」
「あぁ、説明不足ですみません。ボク、男子制服着てますけど、女なんです。驚かせてしまったようですね、申し訳ないです。」
最近はずっとこの格好だったから説明を完全に忘れていた。
生徒会長が眼鏡をクイッと直しながらこちらを向いた。
「確かに驚きはしたが、男子制服女子制服に関係なく『天上学院指定制服』を着用していれば校則違反ではないからな。問題ない。」
「オレはちゃんと男ですよ!?会長さん!?」
「そうか、安心した。…と、自分が名乗っていなかったな。俺は高等部生徒会長の紫野敬人だ。所属クラスは3-Aだ。よろしく頼む。」
「シノ先輩ですね。よろしくお願いします。」
「招いておいて悪いんだけど、これから私たち職員室に行かなきゃならないから、朱理くん黄理ちゃん、ここで式が始まるまで待っていてもらえるかしら。」
「わかりました。あ、新入生一覧!これ見ててもいいですか?」
「外部に漏らさないって誓えるなら、どうぞご自由に!じゃあね!」
「失礼する。」
こうしてボクは、教師から聞き出せなかった情報満載の資料を手に入れた。
「キリ、楽しそうだな、良かった。」
「?良かったってどういう意味?」
「いやさ、今日の式、朝早かったのにオレがノリでOKしちゃったじゃん?キリは朝弱いのに。ちょっと心配してたんだ。」
「その心配は先にしてほしかった…けど、ありがとう、心配してくれて。この資料を見られるだけで楽しいから、大丈夫だよ。シュリも一緒に見る?」
「見る見るー!」
情報収集が趣味のボクにとっては、たった40枚の新入生資料でもお宝だ。
極秘、と印刷された表紙をめくる。
高等部1年Aクラス1番の生徒の顔写真、出身中学校などが書いてある。
一通り情報を読みページをめくる。
「あれ、この人見たことある!」
隣で一緒に資料を読んでいたシュリが言った。
天上学院は、初等部が各学年10人、中等部は倍の20人、高等部は20人×2クラス、と少人数の生徒で構成されている。
初等部から中等部、中等部から高等部に切り替わるときに新入生を募集するのだが、ほとんどの場合はエスカレーターで進学する生徒が学年の半分を占めることになる。
そのため、新入生といっても半数は顔見知りだったりするのだ。
「やっぱ半分くらいは知ってる人なんだろうなー、ちょっとつまんねーな。」
シュリはこんなことを言うが、ボクは資料を読む事がただただ楽しい。
1人ずつ、じっくり資料を読んでいくと、ついに「面白い新入生」と思われる生徒を見つけた。
「シュリ!これ…!」
「青い髪と銀の目だ!すげー!ホントに『仲間』じゃん!テンション上がる!!」
「えっと、Aクラス6番のキサラギアオイ先輩だって!出身中学は光月学園中等部。」
「光月中って確か、サッカーの全国優勝校じゃなかったっけ?ここ数年の。」
「そうだったかも。聞き覚えがある。」
「すげー、他にもいるのかな、見てみよう!次!めくるよ!」
読み終える前にテンションの上がったシュリにページをめくられてしまった。
「仲間」だけを探してページをめくるシュリに置いてけぼりにされないように、資料を画像として頭に焼き付ける。
すると、数枚めくったところでシュリの手が止まった。
名前を見て、驚いた。
「!シュリ、この白澄一音さんって『白澄財閥』のカズネちゃんじゃない?」
「誰だっけ?それ」
シュリは昔から人を覚えるのが苦手だ。
そんなシュリに説明をするのもボクの役目になっている。
「天上院家のパーティーに来てたでしょ?白い髪と金の目の静かな女の子。」
「それってオレらがまだ『天上院朱理』と『天上院黄理』だった頃?」
「そうだよ。もう10年くらい前になるかな。」
「そんな前に数回会ったくらいじゃ覚えらんないよ!あ、でも、髪と目の色はちょっと覚えてる気がする…」
「まあ、会ったら色々思い出すんじゃない?」
「だな!じゃあ次の人〜」
そうしてシュリはまたパラパラと資料をめくり出した。
資料の中にいる昔馴染みの人物を説明したりするが、シュリは興味なさげに相づちを打つ。
20人という少ない人数であったこともあり、Aクラスの資料はすぐに読み終え、同じようにBクラスの資料を読み始める。
「キリ!これ!緑の人だ!」
「どれ、木原翠さん?木原って、もしかして木原グループの人なんじゃない?」
「それは知らないけど!3人目だよ!オレたちの仲間!」
「うん、そうだね。花咲中出身か、優秀だな」
「…キリがデータに夢中だ…。めくるよ〜」
「なかなか興味深いね、仲良くしておきたい人が沢山いるよ。」
「おっ!また見つけた、今度はオレンジだ…って、あれ?この人テレビで見たことあるような気がするんだけど…?」
「!それは、星本グループのご令嬢で現役モデル、女優の星本燈さん!この学校だったんだ!すごいなぁ、他にはもういないかな?ボク達の仲間は。」
「…うん、いないね。でも、4人も!しかも外部中学から!これはすごい事だね!」
「そうだね、ぜひ仲良くしたいね。でも、その前に。シュリ、もうすぐ入学式始まるし、移動しよう。」
「本当だ、早く行って生で見るぞ!」
片付けもせずに飛び出していった兄にため息をつきながら、窓の外に目をやる。
窓の外には、咲き誇る桜とそれに歓迎された新入生たちがいた。
「ボクも、行こうかな。」
資料を揃えて元あった所に戻し、笑顔の咲く会場へと足を踏み出した。
こんばんは、木星です。
今回は、時間を少し遡り、入学式の日。
一音達と全く違う動きをしていた、「黄」と「赤」のお話でした。
この2人は中等部生なので、メインの話に出しにくい…
この先のストーリーはストックではないので、頑張って絡ませていきたいと思います!
お読みくださりありがとうございました!
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木星寿比汰




