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003話 出会いとユニーク種族

2018/7/17ステータスの数値とランクの相関に誤りがあったため修正しました。内容に変更は御座いません。

「えーっと、君は?」


 スカイは誰かに声を掛けられるとは思っていなかったので少し動揺する。


「はじめまして、私はニーナっていいまーす。なんか面白そうなことしてたのでつい声を掛けちゃいました」


 ニーナは笑顔のままスカイに自己紹介をする。

 面白そう? クエスト受注の後、情報を聞くのにもたついていただけで、そんな場面は無かったが……とスカイは更に動揺する。


 そのニーナと自己紹介してきた少女は、一番若い十五歳で設定しているのだろうが、それよりも幼く見える。身長は一五〇もなく、ふんわりフェアリーショートボブの金髪で、尖った耳をしているということはエルフだ。緊張しているのか、雪のように白い肌にほんのりと頬が赤くなっているのが可愛さを増している。そして鮮やかな深い緑色の瞳をしており、正に森の妖精のような神秘的な感じを受ける。


 ファンタジー最高ー! とスカイは心の中で叫ぶのであった。


 反応のないスカイにニーナは、「もしもぉーし」と目の前で手を振ってみる。


 おっといけない、ついつい見とれてしまった。スカイは意識を戻し気を取り直す。


「すみません。俺に何か用ですか」

「いえ、単純にNPC相手に真剣になっていたのでちょっと可笑しくて」


 手を口元に当てクスッと笑いながらニーナは話しかけた理由を説明する。


「NPC……。えーっと」

「やっぱり知らない感じなんですね。説明しますのでちょっと付き合ってくれませんか」


 そう言ってニーナは店の奥に向かって行き空いてる席に座った。わざわざついて行く必要もないのだが、何か教えてくれるならとスカイは後に続き向かい側に座る。


「あの、さっき言っていた知らない感じ、とはどういうことでしょうか? 公式サイトは見ていましたが、NPCのことまでは詳しく知らないですが……」

「やっぱり! ……でもその前にお兄さんの名前教えてもらってもいいですか?」

「そっかすみません。俺はスカイです」


 突然の事で名乗るのを忘れていた。


「見た目そのまんまですね。銀髪だけど少し青っぽいし、目も透き通るような青色で空っぽい。やっぱりイメージが姿に表れるって本当なんですね」


 スカイは自分の姿を確認するの忘れてた……冒険する事ばかり考えてて自分自身の事ちゃんと確認していなかった。スカイは内心反省してみる。


「ではでは、簡単に説明しちゃいますね。当然NPCは人間ではないので、高性能AIを積んでいるにしても細かな受け答えはまではできません。自分で考えているのではなくて、設定情報の中から選択しているだけなんですよ」


 スカイが理解しているか確認するように、ニーナは言葉を切ってスカイに目を合わせる。


「あー、つまりそれは、他のVRMMOと同じように音声入力でやり取りしているようなものということですか?」

「その通りです。流石スカイさんですね」


 何が流石なんだろうか。それにしても、NPCとは分かっていたはずだけど、妙に人間っぽくてついついそのことを忘れてイライラしいていたとか、側から見たら確かに面白いかもな……と乾いた笑い声とともにスカイは目を逸らす。


「それに、フロリバは、酒場の店主だってできますからね。NPCが微妙な感じの方がプレイヤーの参入だってし易くなる訳ですよ」

「なるほど。わざと最低限の質に留めているという事ですね。でもここまでリアルだと誰がプレイヤーでNPCか分かり辛いですね」

「えっ!」

「……えっ?」


 何だ? 凄い呆れ顔されてるぞ。


「まさかそこまでとは……仕方がないですね。いいでしょう。ニーナ先生が教えてあげます」


 諦めるように言いながら、その後ニーナ先生のフロリバ講座が始まった。


 このフロリバでは認識できるものなら何でも意識する事で調べる事が出来るそうだ。

 人を例にすると、調べる事で名前が頭上に表示される。名前が白色なのはNPC、黄色は関係の無いプレイヤー、緑色はフレンド登録したプレイヤー、青色はパーティーを組んでいるプレイヤーで、赤色はプレイヤー、NPCやモンスター関係無く敵対を意味する。

 ただし、最後の敵対キャラは、お互いを認識した瞬間に調べなくても赤色表示されるので安心設計。これなら盗賊と気付かずに接近して騙し討ちされる事も無い。

 

 早速ニーナの頭上を確認すると黄色でニーナと表示されている。今の説明でニーナを調べてみたからだ。ちゃんと黄色表示された事を伝えると。


「それでは試しにフレンド登録してみましょう。私が送るので承認してくださいね」

「よし、これでいいですかね」

「え゛? 何で拒否するんですかあああ!」


 おお、この娘こんな反応するんだ……ちょっと面白いかも。でもちゃんと謝っておくか。

 ちょっとした悪戯心でスカイはニーナからのフレンド申請を却下したのだ。


「ごめんなさい。振りかと思いました」

「違いますよっ」


 おー、怒った顔も可愛いな。

 そんなことを思いながらお詫びにスカイからフレンド申請を送る。


「ありがとうございます…………」

「これは振りではないので承認してください」

「う、バレましたか。仕返しでもしようかと思ったのですが……」


 やはりあの間はそういう事だったのか。釘を刺して正解だったな、とスカイは思った。


「うん、成功ですね。ニーナさんの名前が緑色になりましたね」

「ついでにパーティー登録も試してみましょう」


 また拒否してみるかなと思ったが、初対面でそこまでやると嫌な男認定されそうだったので素直に承認する。


「やっぱり……」

「青色になりましたね。おっパーティー組むとレベルも表示されるんですね。ん? やっぱり?」


 するとニーナがスカイの耳元に顔を近付けて小声で説明する。


「やっぱりスカイさんは、ユニーク種族だなと……」


 どういう事なのか聞いてみると、基本五種族以外の出現率は、〇.〇〇三%ととてつもなく低確率であること。またその恩恵は、絶大で序盤は無敵と言っても過言ではないらしい。

 やはりな、と自分のレベル1にしては高過ぎるステータスをスカイは思い出して納得する。


「なるほど、凄くレアだと思いましたが、何故小声に?」

「この世界では強い事が正義なんですよ。つまり、寄生され易く、パーティー勧誘なんかは当たり前で、クラン勧誘とかも執拗にされると思いますよ。何と言っても運営自体がユニーク種族のプレイヤーを囲む事こそが、初期から地位確立の最強手段と発表しているくらいですから」


 勧誘とかそれはそれで面倒だな。自由気ままに冒険したいのに流石にそれは嫌だ。


「それは俺も嫌ですね。それでは口封じに……」


 何もない腰に右手を持って行き剣を抜こうとするような素振りをしてみせる。


「ぎゃあああーやめてください!」


 ニーナが突然大声を上げるものだから、何だ何だと周りの視線が集中し、さっきまで煩かった酒場が静かになる。「何でもありません。大丈夫です」とスカイが言うとまた騒がしい酒場に戻っていく。


「冗談ですからそんなに驚かなくても」


 笑って誤魔化す。それにしても一々反応が大げさな子だな。可愛いのに少し残念女子の雰囲気が漂ってくる。

 スカイは、内心そう評価をする。


「う、スカイさんって色々意地悪ですね……」

「あー、ごめんなさい。何か知り合いに雰囲気が似た子がいまして、ついその癖でふざけちゃいました」

「いえいえ、私も説明不足でしたので、私にも非があります。取り敢えず私のステータス見てもらえますか?」


 そう言われてニーナのステータスを見てみる。名前とレベル以外表示されない。すると何やら操作する仕草をした後、表示されていなかったステータスが表示される。



 【名前】ニーナ 【性別】女性 【年齢】十五歳

 【種族】ハイ・エルフ 【称号】冒険者

 【レベル】1

 【体力】50/50(E)

 【魔力】160/160(C)

 【能力】総合 D

     腕力:50(E)

     知力:170(C)

     素早さ:90(D)+5

     器用さ:110(D)

     物理耐性:30(F+)+5

     魔法耐性:120(D+)+5

     幸運:135(D+)

 【スキル】

  風魔法(G)、光魔法(G)

 【魔法】

  ウィンド、マジックアロー、ヒール

 【加護】

  風精霊の加護



「ハイ・エルフ……」

「そうです。ハイ・エルフは、基本五種族であるエルフの上位種族で、スカイさんの竜人族と同じでユニーク種族なんです。それで最初は凄く喜んだのですが、運営の発表を知っていたので今後の立ち回りをどうしようか考えるために、この酒場にやってきたんです」

「そこで竜人族の事を聞いている俺に気付いたって事ですか?」

「そうです。丁度スカイさんの後ろを通り過ぎる時に聞こえてきて、もしかしたらと思って聞き耳を立てていたんです。そしたらNPC相手にあんなやり取りをしていたので、説明するという口実で確かめようと……」


 後ろめたさを感じたのかニーナの声が段々と小さくなる。


「その気持ちは分からなくもないですね。俺もその情報を知っていたら面倒事に巻き込まれたくないし、仲間がいないか探すと思いますよ」


 ニーナさんの様子がいたたまらなくなりスカイはそう言ってみる。

 それを聞いたニーナの顔が花が咲くように笑顔へと変化する。


「それじゃあ!」

「ええ、良いですよ。仲間として一緒に冒険しましょう。それにパーティーも組んでいて丁度良いですからね」

「わあ、ありがとうございます。それとごめんなさい!」


 ニーナは勢い良く立ち上がるとそのままお辞儀をしてスカイに謝ってきた。

 気にしていないからと直ぐ顔を上げさせる。

 それにしても良かった。勢いで仲間に誘ったは良いが、確認したかっただけ、と言われたらかなりダサい、とスカイは胸を撫でおろす。


「それでは、さっき受注したゴブリン討伐のクエストから行ってみますか?」

「了解です。それでは準備のために色々とお店回ってみますか? 武器とかまだですよね?」

「そうですね。マジックショップは無いらしいので、武器屋と道具屋に行きますか」


 ユニーク種族な上に、可愛い仲間が早速できた。嬉しさのあまりスキップしてしまいそうなのを我慢し武器屋へと向かう。


 盾に剣を交差した看板の店を見つけ、早速中へ入る。武器屋というより装備品全般を扱っている武具屋だった。


「何かあまり良いの無いですね」


 店内は色々な武器と防具が陳列されているが、手持ちの一〇〇〇ゴールドで買える武具は限られてくる。


「そうですね。素のステータスが高過ぎるせいかパッとしないですね。ここは我慢して素手で行きますか?」

「いやー、流石に拳闘士とかは嫌ですね。折角のファンタジー世界ですから剣と魔法ですよ」

「うーん、そしたら私はこの見習い魔術師の杖とローブにしてみます。魔法耐性が付いているので今の冒険者の服より気持ち、ましになりますから」

「そしたら俺は、鉄の剣と革の鎧と籠手にしますよ」


 NPC相手の買い物をそつなくこなして次の目的地へと向かう。


「――何かみんな同じ格好でつまらないですね」


 購入して直ぐ装備してみたのだが、町中のプレイヤーたちはスカイたちと似たような格好をしていた。


「今日からサービス開始ですから仕方がないですよ。みんな条件が同じなんですから。でも……」


 私たちは違いますけどね、とニーナは嬉しそうに続ける。ユニーク種族とステータスの事を言っているのだろう。


「そう言えば道具屋では何を買うんですか?」


 あれ? 買いたいものがあるからニーナも同意したのかとスカイは思っていたがそうではないらしい。


「俺は普通に回復薬を買うつもりですよ。いくらステータスが高いと言ってもこの数じゃ心許ないですからね」


 ニーナはアイテムボックスのポーションとマジックポーションの数を確認する。


「それぞれ五個あるのに足りないんですか?」

「ニーナさんはあまりこういったゲームやらないんですか? 俺だけの感覚ではないと思いますが、経験上一スロット分は持っておくものですよ。」


 ニーナが分からないという顔をする。どうやらニーナが調べた中には、この手の情報は無かったらしい。


「実はあまり経験が無くて色々と予習した口で…何か色々と偉そうに説明したのに、全て分かったような口をきいて恥ずかしくなってきました」

「はは、そこは持ちつ持たれつですよ。俺の場合は、慣れているが故の初見プレイをしようとした感じです」

「う、何かいきなり優しくなりましたね。でもその通りですね。協力して切磋琢磨しましょうね」


 最初の印象のせいかスカイに意地悪キャラが定着してしまった。これから挽回せねば……てか、切磋琢磨って、どこの体育会系だよ! というのを口に出すことをスカイは止めておく。


「武器と同じ値段って…」


 道具屋でポーション類の値段を確認してスカイは言葉を詰まらせた。


 さっきの武具屋で買ったものがそれぞれ一〇〇ゴールドで三〇〇ゴールド使っている。ポーション類もそれぞれ一〇〇ゴールドするから、俺は買えても七個しか買えない。ニーナさ同じようなもので八個だ。

 ニーナと相談してスカイがポーションを五個、ニーナはマジックポーションを五個買うことにした。


「よし、これで準備が整いましたね。それではお待ちかねのゴブリン討伐へと繰り出しますか」

「いよいよですね。何だかワクワクしてきました。急ぎましょう」


 ニーナは待ってました、と小走りにインクの森がある東門の方へと駆け出す。

 置いて行かれないようにスカイもニーナの後を追って駆け出したのであった。

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