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015話 傭兵運用と新たな仲間



 ギルドに戻ってきたスカイたちは、アレックスさんとフレンド登録をして別れることとなった。


「ありがとな、今日は楽しかったぜ」

「こっちも楽しかったし、色々とありがとう。ニーナが先生だとしたらアレックスさんは師匠かな」


 はじめに受けた挑発的で知的な印象そのままの人だと思う。

 モンスターを真っ二つにする好戦的で豪快な戦士かと思いきや、自分で考えた理論と知識を組み合わせ魔法実験を成功させた学究肌なアレックスに対し、冗談まじりにスカイは応えてみせた。


「師匠か、悪くない。次会う時までに、もっと凄いことを教えられるようにしとくぜ」


 また一緒に遊ぶときがきたらその成果を色々と教えてもらえそうだ。


 アレックスと別れたあと、ニーナは家族と夕飯に出かけことになっているらしく、その日はそれで解散となった。


 スカイはどうしたのかというと。

 夕食のあと、モンスターを解体換金して傭兵ランクがEランクに上がったので、Eランクの魔法士を追加で雇い、鉱山周辺の平原で編成機能を試すことにした。


 予備欄のFランクの槍兵と弓兵も俺の部隊に編成する。傭兵の呼び出しは召喚扱いとなるようで紫色の魔法陣が発生し、傭兵が姿を現す。

 その見た目は、傭兵というよりも兵士にみえる。装備は、ブックの南門で会ったマイクさんたちと同じ革鎧で、魔法士だけが黄色のローブをその上に羽織っている。

 恥ずかしいことに左胸と両肩に『スカイ』と部隊名なのかスカイの名前が印字されている。


「パレルモです」

「リッキです」

「ローザです」


 予備の欄には、ランク、兵種と数しか記載されていなかったため、自己紹介され名前があることに気が付き、スカイは驚いた。

 しかも、性別はランダムなのか魔法士は女性だった。


「スカイだ。君たちの隊長になるのかな」


 スカイも自己紹介としてそう言ったが何の反応もない。やはりNPCだから仕方ないかと納得する。


「それでは、この周辺でモンスター狩りをするから俺の指示に従って行動してくれ」

「「「はっ」」」


 敬礼のつもりなのか、左手で拳をつくり左胸にナイフを突き立てるような仕草をしてくる。


 攻撃、防御と退却といった簡単な指示しか出せないが、それなりの成果を上げることができ満足のいく内容だった。これなら、ニーナと時間が合わせ辛い平日もそこそこレベル上げができるだろう。

 その日は、夜中の三時くらいまでNPC傭兵たちと狩をし終わりにすることにした。



――――――



 次の日、思い切ってスカイは自分の分のゴールドを全てつぎ込みFランクの魔法士を一〇人雇い、編成機能の部隊編成で魔法士部隊を編成することにした。


「スカイくん、全部使っちゃって大丈夫なの?」


 ニーナは心配そうに尋ねた。


「平気だよ。意外にNPC傭兵も使えてさ、直ぐこれくらい稼げるさ」

「へー、そうなんだ。私も雇った方が良いのかな」

「実は、そのためでもあるんだよ。昨日の夜にNPC傭兵で色々試したからさ。それをニーナに教えるのが今日の目的なんだ」

「え、そうなの?」


 今はじめて言ったので当然だが、ニーナは不思議そうな顔をしている。


「ああ、休みの明日までは一緒に遊べるけど、平日になると中々時間が合わないかもしれないだろ? 俺がいなくても大丈夫なようにって言ったら変だけど、魔法職であるニーナは前衛のNPC傭兵を雇っておいた方が戦闘が楽になると思うんだ」

「そっか、仕事忙しいんだ……」


 それを聞いて寂しくなったのだろうか。少しニーナの表情が暗くなる。

 他の人とパーティーを組むつもりだから気にしなくていいのに、と言われずにスカイは安心した。


「それだったら、アレックスさんに連絡してパーティー組んでもらうから大丈夫なのに」

「なっ…………」


 その言葉に今度はスカイが暗くなる番だった。

 ですよねー。でも、スカイはめげずに続ける。


「まあ、それも一つの手だね。でも、アレックスさんとも時間が合うとも限らないしさ」

「えー何それ。ひょっとしてヤキモチかな?」

「べ、べつにそんなつもりじゃ……」


 ニーナは、意地の悪い笑みを浮かべ、からかうように言ってきたが、スカイとしては図星で気が気でない。



 午前中は、NPC傭兵の運用方法をニーナに教え、午後はゴールド稼ぎのために昨日とは別の生きている鉱山へと潜ることにした。

 編成は、Fランクの魔法士は召喚せず、スカイとニーナの他にパレルモ、リッキとローザの五人。

 ローザの魔法にニーナが合わせる形で合体魔法を使い、スカイとパレルモが前衛、弓兵のリッキがニーナとローザに迫る敵を射る戦闘スタイルが型にはまり、順調に鉱山攻略を進めることができた。


 生きている鉱山だけあってプレイヤーの数も多く、既に生産職プレーをしているのか傭兵を雇い採掘に精を出すプレイヤーを何度か見かけた。その傭兵がプレイヤーだったりNPC傭兵だったりと様々だ。


「生産ギルドでも傭兵雇えるのかな?」

「いや、傭兵ランクがないと雇えないんだからむりなんじゃないか? ほら、ステータス見てみなよ」


 NPC傭兵を護衛にして採掘しているプレイヤーを見かけてニーナが聞いてきた。


「あっ、本当だ傭兵ギルドにも所属しているんだね」

「中にはソロプレー派の人もいるからな」

「えーそんなのつまらなくない? せっかくフルダイブ型なのにずっと無言で遊ぶことになるよ」


 ニーナは、知らない人にでも声を掛けられるくらいアクティブだから、そういう人のことを理解できないんだろうな。


「それは人それぞれだろ。話すのが苦な人にとって、無言は苦にならないんだよ」

「ふーん。例えばあの人とか?」


 ニーナの目線を追ってみると、まったく護衛を付けずに黙々と採掘をしているハイ・ドワーフがいた。


「声かけてみようよ」

「本当にユニーク種族ってレアなのか? こう次々と見かけると疑わしい気がしてくるんだけど」


 ニーナ、アレックス、それとたった今みつけたトモエ――三日連続で俺はユニーク種族といわれる人に出会っていることになる。


「すみませーん」


 今日も元気にニーナは見ず知らずの人に平気で声を掛ける。いや、昨日はアレックスからだったか、とスカイは訂正する。

 ニーナから声を掛けられたそのハイ・ドワーフであるトモエ。彼女は、振り下ろそうとしていたツルハシを持つ手の動きを止めてこちらを振り返る。


 彼女は、ニーナよりも少し背が高いくらいで、腰の辺りまであるスカイと同じような青みがかった銀髪ストレート。肌は白く清楚な印象を与えてくるが、スカイブルーのその瞳からは全く生気を感じられない。というか、全然ドワーフっぽさがなくヒューマンといわれても納得できる。


「……に……ぁ……」


 何かを言ったようだが全く聞き取れない。スカイは、何にも興味を示さないその瞳に見つめられ、思わず喉を鳴らした。


「ニーナ止めておこう」


 何でよ、とニーナが抵抗するがニーナの右腕を掴み下がらせる。


「すみません。お邪魔しました」


 スカイがそう言うと、何もなかったようにトモエは、採掘作業に戻る。


「ねえ、どういうこと?」

「アレがさっき言っていた、ソロプレー希望者だよ。というよりコミュ障かな」


 スカイはあの場から離れてからニーナにわかりやすく説明してあげた。


「実は俺には妹がいるんだが、その感じに凄い似ていたからわかる」

「え? トモちゃんがそうなの?」

「何で俺の妹の名前知っているんだよ」


 スカイの妹の名前がともえで、さっきのトモエから直ぐ妹と比べたのは同じ名前だからである。


「あ、違うよ。さっきの人がトモエさんだったからだよ」


 ニーナは笑って何かを誤魔化すように言ってきたような気がしたが、確かにそうだなと納得する。

 でも、会話もまともに交わしていないのにもう略称呼びをしている。さすがアクティブだなと感心もする。



――――――



 休み最終日も、他のプレイヤーを観察しながらスカイたちは鉱山探索をし、鉱山のモンスターを倒したり、鉱石を採取したりと経験値稼ぎとゴールド稼ぎに勤しんだ。


 平日は毎日終電コースで結局一週間ニーナに会うことはできなかった。

 アレックスがインしていることはわかっていたが、夜中に連絡するのも失礼と思い相手からもなかったため俺は連絡するのを控え、NPC傭兵と狩をしてその一週間をすごした。



 やっと休日になり、朝からインしてみると既にニーナはインしており、直ぐに合流した。


「おはようございます」

「やあ、おはよう。久しぶりだね」


 久しぶりの再会にスカイは癒され、ついにやけてしまっていた。


「どうしたの?」

「ん、なんでもないよ。それじゃあ行こう。先週と同じで鉱山でいいかな?」

「オッケー」


 スカイは両手で頬を叩き、にやけ顔に気合を入れる。


「平日はどうしてたんだ?」

「二回くらいアレックスさんと一緒にパーティー組んで鉱山で狩をしたり、盗賊退治したりしてたかな」


 やっぱり、そうなるよね。胸がズキっと痛み、俺も小さい男だな、とスカイは落ち込む。


「あとは、スカイくんのアドバイス通り傭兵を雇って一人で狩したり、生産ギルドにも登録したの」

「生産ギルド?」

「うん、合成スキルもそうだけど裁縫スキルで洋服とか作ってみたくて。ほら、NPC傭兵って同じ格好じゃない? 私の部隊をかわいく着飾りたいなと思ってね」

「へー、NPC傭兵の装備も変えられるんだ」


 それは知らなかった。

 それを考えると低ランクのNPC傭兵でも装備品を変えれば十分戦力になる。むしろGランクとFランクの能力値に大した差はない。千ゴールドもかければその差は覆るため、Gランク傭兵を基本にして数を増やそうかな、とスカイは考える。


「あとは、トモちゃんのことが気になっていて、あの子も生産ギルド所属だったから会えるかなと思ったんだけど結局会えなかったの」

「そうだったのか。俺は夜中だけど鉱山で何回か見かけたよ。もしかしたら夜型なのかもしれないな」


 やっぱり、あのステータスは気になるよな。

 何特化なのか不明だが異様に体力、物理耐性と魔法耐性が高かく、正にタンク向きのステータスだったし、と思いニーナも同じかと思ったのだがどうやら違う理由があったようだ。


「スカイくんの妹さんに似ているって言ったでしょ? だから、仲間に入れてあげてスカイくんと会話できたら楽しんでもらえるのかなと思ったのよ」

「なんで俺と話すと楽しいんだよ」

「女の感? かな」


 意味がわからないと言うと、ニーナは内緒だと言う。


 翼は、七つ年が離れた妹のともえとまともに話ができない。できないというよりも妹が避けているような気がして中々話しかけられないのだ。

 小さい頃は、翼に懐いておりどこへ行くのにも必ずあとに付いて来て、幼馴染の奈々と三人でよく遊んだものだが、妹が高校生になり翼が社会人になったころいきなりよそよそしくなり、今ではほとんど会話が無い。元々他人とのコミュニケーションが苦手だったこともあり、小さいころから翼と奈々と過ごしていた時間が多い。

 それで、高校でも人間関係に悩みそうなったのだろうかと翼は思ったが、仕事で忙しくしていた彼は相談に乗ってやることもできず、三年が経ち会話がなくなってしまうまでにその関係が悪化してしまった。


「スカイくんあれっ」


 考え事をしていたスカイの意識がニーナの叫び声によって呼び戻される。


 目の前を確認すると、犬のような顔をしたゴブリンよりも少し大きいEランクのコボルトが二〇匹いる。

 そして、それに囲まれ必死にその攻撃に耐えているプレイヤーがスカイの目に入る。


 スカイの妹に雰囲気が似ていると話題にあがっていたトモエその人だ。


「助けなきゃ!」

「おい、待てよっ」


 その状況を見てニーナが助けるべく駆け寄りマッジクアローを矢継ぎ早に撃っていく。

 この数相手ならサンダーやウィンドの方が効率が良いのだが、パーティーを組んでいないトモエにもダメージを与えてしまうためそう選択したのだろう。

 本来は本人の合意が必要なのが、今となっては事後承諾だ。NPC傭兵は待機させてスカイも駆け寄り剣とドラゴンフォームでコボルトを殲滅していく。


「大丈夫? どこかケガしてない?」


 スカイたちのレベルは、二〇近くまで上がっておりEランクが群れてもあっさり倒すことができた。

 ニーナがトモエの無事を確認すべく声を掛けているが、ゲームなんだからケガなんかある訳がないとスカイは内心呆れている。


「それよりも、無断ですみません。モンスターを奪うようなことしてしまって、このコボルトたちは全て差し上げますので許してもらえないでしょうか」


 そう言ってスカイはトモエに頭を下げて謝罪した。


「スカイくん何言ってるのよ」

「何って、常識なんだよ。いくらモンスターに囲まれていても要請がない限り手を出しちゃいけないんだよ」

「えっ……」


 ニーナはこういうゲームの常識に少し欠けている気がする。


「やっぱり知らなかったのか……。っとまあ、うちのバカが失礼しました」

「……ん、ぁ……ぶ……ぅ」


 やっぱり、聞き取れない。

 

「トモちゃん、ごめん。私知らなくて……それでいきなりなんだけどお兄さんと私の仲間にならない?」


 いきなりトモちゃんと呼ばれたからなのか、仲間に誘われたからなのか驚いたように目を見開きパチパチと瞬きを繰り返している。

 それにしてもいきなりぶっこむなよ、とスカイは思った。トモエは少し考えるが直ぐに顔を左右に振り断りの動作をする。


「ニーナ、いきなり失礼だろう」

「いーや、スカイくんはそこで待ってて」


 ニーナは、それでも諦められないのかトモエの手をとりスカイから離れていき、彼女の耳元に何事かささやいているようだった。

 遠目からは、トモエが驚きの表情をし何度か頷いたり、顔を左右に振ったりしていることしかわからなかった。


「うおっ……なにがどうなっているんだ?」


 二人がスカイの方を向き直した途端、トモエからフレンド申請がスカイに飛んできたのだった。


「おいっ、何があったんだよ」


 二人が戻ってきたので話を聞いてみる。


「ふつうに説得しただけよ。あっ、それから私たちより年下みたいだから敬語の必要はないって。あと呼び捨てでいいらしいよ」

「兄さん、宜しくお願いします」

「に、兄さんっ?」


 今度はちゃんと聞き取ることができた。それよりも聞き捨てならない……なぜ呼び方が兄さんなんだよ。


「男なら細かいことは気にしない。トモちゃんがそれがいいって言っているんだから、いいわね」

「まあ、呼び方はべつに好きにして構わないが……さすがに恥ずかしいよ」

「いーのっ、はい、この話は終わり。以上」


 ニーナに強引に締められてしまった。


 こうしてスカイが訳もわからず混乱している間に、トモエがパーティーに加わった。

 ステータス的にはタンク一択なのだが、生産ギルドにしか加入していないのでプレースタイルも含めてちゃんと聞くことにしよう。



 【名前】トモエ 【性別】女性 【年齢】十五歳

 【種族】ハイ・ドワーフ 【称号】中級鍛冶師(ブック生産ギルド)

 【レベル】16

 【体力】320/320(B)

 【魔力】100/100(D)+20

 【能力】総合 C

     腕力:100(D)+20

     知力:80(D)

     素早さ:150(C-)+10

     器用さ:80(D)+10

     物理耐性:340(B)+20

     魔法耐性:280(B-)+20

     幸運:180(C)

 【スキル】

  土魔法(E)、補助魔法(F)、鍛冶魔法(E)

  盾術(E)、合成(E)、加工(E)、裁縫(E)

 【魔法】

  ストーン、ストーンウォール、プロテクション、アクセル

  ヒート、クール、ベンド、シャープ

 【固有】

  エレメント合成分解、エレメントサーチ

 【加護】

  土精霊の加護

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