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014話 竜人とドラゴン

修正がおわりましたので投稿させていただきました。

宜しくお願いします( ˙꒫˙ )スン

「何度見てもジョークにしか見えないな」


 スカイたちの前方でアレックスが大剣を阿修羅のごとく振り回し、ゴブリンたちのミンチが量産されていく。


 見渡す限りゴブリンたちで埋め尽くされており、少なく見積もっても一〇〇匹以上はいるだろう。ゴブリン以外には、ケイヴワームやヤングスパイダー等も見える。

 これならモンスターハウスと言ってもいいほどにうじゃうじゃいる。


「俺たちはファイアアローでいくか」

「オッケー」


 ニーナがスカイの隣まできてマジックアローを撃ち放つ。

 スカイは、それに合わせるようにファイアを撃ち出す。


 ニーナのマッジクアローに、スカイのファイアが螺旋を描きながら纏わりつくように融合していく。その射線の近くにいるゴブリンたちを熱風で吹き飛ばし、射線上のゴブリンたちを穿って突き進んでいく。


「これだけの大軍に向かって使うと凄さが際立つな」

「じゃんじゃんいこー」


 ニーナは新しく買ってもらったおもちゃで早く遊びたがっている子供のようにはしゃいでいる。


 アレックスの魔法実験からその有用性に気付いたスカイたちは、色々な魔法の組み合わせを試しながら廃墟を探索していた。途中休憩を挟みながらだが四時間も探索をしているとマップもだいぶ埋まり、倒したモンスターは二〇〇匹を超え、レベルもいくつか上がった。


 魔法実験は、順調に進み相性の良し悪しも大体把握できた。また、スカイとニーナでやったように新しい発見もあった。その発見は、偶然に因るものなのだが効果は絶大だった。


 昨日の戦闘でビッグウルフのウィンドをニーナが消し飛ばしたように、魔法はお互いに反発すると思っていた。

 しかし、パーティー効果なのか不明だが、スカイたちが撃った魔法同士は、相性が悪くない限り融合してより強力な効果を発揮することがわかった。


 その例が、たった今モンスターのデスロードを作った合体魔法ファイアアローだ。正式な魔法ではないためステータス欄に表示されることはないが、お互いその呼び名をすることにした。

 火魔法の中にファイアアローがあった場合は、ややこしくなるため呼び名を変えなければいけないが、今のところ俺たちが使える魔法の中に無いので問題はない。


「うん、満足満足!」


 合体魔法のファイアアローを何回か撃ってニーナはご機嫌だ。


「大軍相手での効果も分かったから、俺も前線に行ってドラゴンフォームのランク上げしてきていいかな?」

「そうね。私が休憩する余裕ができる位頑張ってね」

「善処するよ」


 さすがにこの数相手ではニーナが休んでいる暇はない。既に一〇〇匹以上倒しているのに、どこからか新しくモンスターたちが湧いてきて減る様子がみられない。


「ニーナちゃんはいいのか」

「ニーナだって伊達にユニーク種族をしている訳じゃない、こんな雑魚モンスターくらいじゃまともにダメージは受けないよ」


 口ではそう言うものの実は結構心配している。

 でも、毎回俺と一緒にいられる訳じゃないし、『獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす』ほど大げさではないが、ニーナにも一人で立ち回れるようになってほしい。


 ときおり、ニーナの様子が気になって確認するが、結局杞憂に終わりそうだ。


 ニーナは、ときにサンダーで動きを封じ、ときにウィンドで吹き飛ばし、ときにマッジクアローで貫いていく。稀に接近を許すも、杖を起用に振り回し殴り飛ばしている。


 アレックスだけではなくニーナにも負けていられないな。闘争心を煽られた俺は、全力でモンスターを殲滅していく。


「スゲーなそれ。竜人っていうよりかっこいいリザードマンみたいだぞ」

「え?」


 大体四〇〇匹を超えた位でモンスターたちの出現が止まり、全て殲滅し終えて集まったときにアレックスがスカイを見て驚いていた。

 そう言われ、ステータス画面に表示されている自分の姿を見てスカイも驚く。気付かない間にドラゴンフォームが全身に効果を及ぼしている。

 

「竜化魔法のスキルランクが上がったわけじゃないのに何でだろう」

「レベルアップでも威力が上がるとか? それにしても凛々しいよスカイくん」

「やっぱり魔法は奥が深いな。スカイも色々と試してみるといいぞ」

「そうだね」


 スッキリしないが、わからないことをいつまで考えても無駄だろう。

 辺りを見渡してみるとモンスターの死骸だけではなく、何やらドロップ品もあるようだ。今は、それらを回収することに注力する。


 廃鉱山といっても少なからず鉱石も残っており、それも忘れず採取する。


「やはりここはモンスターハウスだったんだね」

「そうだな。でないと宝箱とかゴブリンたちからドロップするはずないからな」

「こういうところはゲームっぽいね」


 全て回収し終えて、スカイ、アレックスとニーナがそれぞれの感想を言う。

 今回倒したモンスターたちは最高ランクはゴブリンソルジャーのEランク三匹だった。

 そいつらがエリアボスだったのかは、乱戦すぎて分からなかった。

 はじめての宝箱は、中身は鉱石類、ポーション類やゴールドといった感じでゲームらしさを演出してくれた。


 そろそろ夕食の時間だし、帰ろうとした時だった。


 地響きがしそれに伴って足元が揺れだした。


「なんだアイツは!」


 アレックスが指さしたそこには、地面を突き破るように這い出てきたそいつがいた。



 【名前】ケイヴンドラン

 【種族】鉱山ドラゴン

 【称号】ダンジョンボス(下級)

 【レベル】35

 【体力】???/???(?)

 【魔力】???/???(?)

 【能力】総合 ?

     腕力:???(?)

     知力:???(?)

     素早さ:???(?)

     器用さ:???(?))

     物理耐性:???(?)

     魔法耐性:???(?)

     幸運:???(?)

 【スキル】

  ???、???、???



「鉱山ドラゴンだと。アースドラゴンか!」


 アレックスが叫ぶように確認してくるが違うだろう。


「なんかイメージと違うな。下級といえどもダンジョンボス扱いになっているから油断できないのは間違えないけどね」


 ドラゴンというよりは大きなトカゲのようにも見える。体長は十五メートルほどで、外皮は鉱山の壁と同じような濃い土色でゴツゴツとしている。その脚なんかは短いが樹齢何百年といわれる大木の幹のような太さで、それから繰り出される攻撃を受けたらひとたまりもないことは想像に難しくない。


「強敵なのは間違いないが、スキルさえもわからないってことはそれもヤバイってことかっ」

「スカイくん、アレックスさんここは早く逃げよう。スカイくんが言ったようにスキルも不明ってことは、その威力が私たちじゃ測りきれない証拠なの」


 スカイがどうするか考えていると、ニーナが逃げようと言ってくる。


「弱いものいじめばかりで飽き飽きしていたんだ。俺は腕試しがてらいっちょ行ってくるぜ」

「「アレックスさん」」


 スカイとニーナが止めるべく名前を呼ぶが、それを無視してアレックスは大剣を振り上げ、ケイヴンドランへと向かっていく。


「ニーナっ、パワーブーストとプロテクションをアレックスさんにかけてくれ」

「わ、わかった」


 あれはアレックスのスキルなのだろうか。ニーナがかけた補助魔法がアレックスの全身を赤と青のオーラで染めると時を同じにして大剣が強烈な光を帯びた。


「せいっ」


 かけ声とともに輝く大剣がケイヴンドランの顔を襲うが、大剣が当たる前に何かに干渉されたように黄色く光り、輝きを失った大剣だけがケイヴンドランへと届く。

 攻撃が当たるが、それは虚しくもケイヴンドランに効果があったようにはみられない。


「なんだと! うわあ」


 アレックスは想像と違った結果なのか、驚きで一瞬硬直してしまったのが悪かった。

 うるさいというようにケイヴンドランが首を振り、アレックスは吹き飛ばされる。


「ニーナ、ファイアアロー行くぞ。アレックスさん! 俺たちが魔法を撃つからその間に引いてくれっ」


 アレックスの攻撃でなんともない相手に効くとも思えないが、逃げる時間さえ稼げればいい。


「スカイくん行くわよ」

「おうっ」


 モンスターハウスの戦いでレベルが上がり、さらに威力を増したスカイたちの合体魔法ファイアアローがケイヴンドランに当たる瞬間、黄色く輝く何かに阻まれている。

 持続魔法であるファイアを俺は止めない。黄色く輝くそれがオレンジ色へと変えていくが状況は変わらない。

 これ以上は意味が無いと思い、魔力の残量も気になることからスカイはファイアを止めた。


「やっぱり何かあるぞ。俺のドラゴンフィールドと同じ魔法障壁だとしたら、ファイアアローが効かない以上何をやっても無駄だと思う。悔しいがここは素直に引こう」

「くっそおお、いけると思ったんだけどな……」


 さっきの輝く大剣はアレックスのとっておきだったんだろう。それが全く効果はなく返り討ちにあったことを、スカイたちの元に戻ってきたアレックスが悔しそうにしている。


「スカイくん、何かくるっ」

「ドラゴンブレスだっ。二人とも俺の後にっ、早く!」

 

 ケイヴンドランは、顔を少し上げ何かの溜め動作をしている。他のゲームでも見たことがある動作、ドラゴンブレスの前兆だと気付いたスカイは、とっさに二人を俺の後に移動させる。


 二人がスカイの後に隠れるのと同時にドラゴンブレスが放たれる。


「スカイ大丈夫なんだろうなっ」

「わからない。でも今はこれに賭けるしかないんだ」


 ドラゴンブレスがスカイのドラゴンフィールドにぶち当たる。衝撃音と共に揺さぶられるかのような振動がスカイたちを襲う。ドラゴンフィールドがさっきのケイヴンドランに起きたのと同じように黄色く輝き始める。黄色からオレンジ色へ、そして直ぐ赤色へと変わった。


「ヤバイっ防ぎきれない」


 このままでは突破されると思いスカイが叫ぶのと同時に、ドラゴンフィールドはステンドガラスが割れるような儚い音をさせて霧散していく。


「くっ」

「きゃっ」

「うおお」


 その後襲ってきたドラゴンブレスの衝撃にそれぞれが反応する。


「二人とも大丈夫か?」


 スカイはとっさにドラゴンフォームで全身を竜化させて耐えた。二人とも後に隠れていてもらったので直撃はないはずだが余波は免れられないだろうと思い声をかける。


「俺はなんともないぞ」

「うん、私も大丈夫そう」


 防げて良かったと安心し、ひょっとすると……スカイは何かを閃きそのままケイヴンドランへ突っ込んで行く。


「ちょっ、スカイくんっ」

「おいっ」


 二人が叫ぶが無視する。


 スカイは突っ込みながらファイアストーンズを発動させる。

 ファイアとストーンの合成魔法で、一〇個の拳大ぐらいの石に炎を纏わせ、物理効果と魔法効果をもたせた俺の新しい固有魔法だ。


 それがケイヴンドランに当たるがやはり魔法障壁に阻まれ炎は掻き消された。そもそも、これが効くとは思っていない。

 狙いはその先――物理効果のあるファイアで熱せられた石がケイヴンドランの両目を狙う。

 暑い鱗に阻まれながらもいくつかが命中し、ケイヴンドランにつんざくような呻き声をあげさせる。


 その隙に、ドラゴンフォームで体当たりをかましてみる。嬉しいことにドラゴンフォームの効果が魔法障壁にかき消されることはなくそのまま体当たりを成功させる。


 大したダメージじではなさそうだが、痛そうな呻き声を発したのでそう判断する。


「おっと、危ね」


 ケイヴンドランもただやられるだけではない。スカイを踏みつぶそうと前足を踏み下ろしてきたがギリギリ飛び躱す。

 相手が無敵ではないことがわかっただけで十分なのでここは引きかえすべく、ニーナたちのもとへスカイは駆け戻る。


「ごめん。逃げよう」

「スカイくんの攻撃効いていたみたいだけどいいの?」

「もう魔力がほとんどないんだ。マジックポーションで回復したとしても、ブレスを撃たれたら直ぐ消費しちゃうから持久戦になったら勝ち目がない」

「おいっ、言ってるそばからブレスを撃ってきそうだぞ」

「やべー逃げるぞおー」


 一斉に駆け出して広間を飛び出るように逃げ帰る。壁にでも当たったのか振動で足を取られそうになりながら背中に風圧を受ける。

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