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001話 異世界への招待はとつぜんに

はじめての作品投稿です。つたない文章で恐縮ですが、面白いと感じていただけらた嬉しいです。

「はあはあ……やっと……こ、この力にも慣れてきたかな」


 肩で息をするように青年は、戦闘で乱れた呼吸を整えつつ、今の戦闘で自分の力に確かな手応えを感じる。


「うんうん、良い感じ。後は、私がスカイくんのタイミングに、もう少し上手く合わせられるようになることかな」


 同意とともに、今後の課題を言いながら少女は、戦闘によってかいた汗を額から首筋にかけてタオルで拭い始める。

 すると、艶のある金髪から、彼女の種族的特徴である尖った耳が顔をだす。戦闘の直後ということもあり、体温が上がっているせいか微妙に赤くなっている。それが妙に色っぽい。

 スカイと呼ばれた青年は、ついつい見入ってしまう。その視線に気が付いたのか、少女の鮮やかな深い緑色の瞳と目が合う。


「ぼーっとしてどうしたの? あっ、スカイくんも汗かいたよね」


 見られていた理由を勘違いしたその少女は、タオルを持って小走りに近付いて来る。


「ほらっ、拭いてあげるから屈んで」

「だ、大丈夫だよそれくらい。自分で拭けるからニーナも休んでなって」


 照れながら断るも、ニーナに引く様子はみられない。


「いいからいいから、遠慮しない。ねっ?」

「う……」


 スカイは、青みがかった銀髪は清潔感のある短髪で、空のように透き通った青い瞳に彫の深い精悍な顔立ちをした美青年。さらに、筋肉質で引き締まった身体と身長は一八〇以上と高身長である。

そのため身長差があるニーナが拭きやすいように、その場に腰を下ろす。


「うん、素直でよろしい」


 こういう時のニーナに、抵抗しても無駄なのだ。でも、スカイはそれを嬉しくも思う。

 ワシャワシャとニーナにされるがまま、青みがかった銀髪がぼさぼさになってしまった。ちょうどスカイが手櫛で髪を整えていると、二人ほど近付いて来る。


 スカイたちの従者である。


「お姉様! 私も私もぉー」

「む……、私が……」


 ニーナの従者であるシルとスカイの従者であるヴィーヴルに、恥ずかしいところを見られてしまった。


 そんな恥ずかしくも嬉しい時間を過ごしていたそのとき、異変が起きる。

 虹色に輝く六芒星の魔法陣が、スカイたちのいた場所に突如として現れ、その虹色の光が辺りを照らす。


「何だ、動けないぞ」


 スカイが咄嗟に立ち上がった後、魔法陣から抜け出そうと試みるが、そのときには動けないことに気付き、スカイは焦る。

 ニーナたちも魔法陣から抜け出そうとするも、誰一人として身体を動かすことができない。


「てか、虹色って!」


 ニーナは、魔法陣の色に気付き驚きの表情をする。


 魔法陣には種類がある。一般的なものは、トラップを意味する赤色、転移を意味する金色、召喚を意味する紫色等とそれぞれ色で効力が違うのだ。

 一般的に、常識、自分自身の能力や知識を超える事象が起きると平常心を保つのは難しいものだ。発動した魔法陣の色は、ニーナの知識にない虹色であり、慌てるのに十分な出来事だと思う。


「ニーナ、虹色の効果って何だったっけ?」


 スカイは、身体を動かせないことに一瞬驚いたが、直ぐ冷静になり現状把握のため、ニーナに魔法陣の効果が何か知らないか問いかける。


「う……相変わらず落ち着くの早いわね。申し訳ないけど虹色の魔法陣があることすら知らなかったわ」


 スカイの落ち着いた様子に、ニーナも落ち着きを取り戻す。

 そんなやり取りの間にも魔法陣の光は、輝きを増していく。


「なんか分からないけど、嫌な感じはしなぁーい」

「嫌じゃない。……むしろ心地良い……です」


 スカイとニーナのやり取りに、今まで沈黙を保っていたシルとヴィーヴルだが、何もできないらしいということを感じ、それぞれの感想を言いはじめる。


 さて、どうしたものかとスカイが悩んでいると、魔法陣がより一層その輝きを強めた後、急に闇と静寂に包まれる。


 一体何が……。

 真っ暗で不自然なほどに何の音も聞こえない。


 無音。


 更には、自分がどんな体勢でいるのかを感じることさえもできない。あのときの立ったままなのだろうか……。


 スカイは必死に考えるが、分からない……。


 一体どれくらいの時間をそうしていたのだろうか。一生このままなのかと、不安から絶望へと感情を変化させたそのとき、どこからともなく声が聞こえてくる。


「お帰りなさい」


 お帰りなさい? ニーナたちの声ではなさそうだ。他に誰かいるのだろうか?

 スカイは、その声の正体を探ろうと考える。


「何方かいらっしゃるですか?」


 色々な意味で予想外な展開に戸惑い、変な言葉遣いをしてしまう。


「ふふ……私ですか? 私はあなたの望みを叶える者、ですかね?」


 スカイの誰何に対して、相手は意味不明なことを言い出す。


 というか笑われた? 顔が熱くなるのを感じる。


 先ずは、何が起こっているのか考えるため一旦落ち着こう。空気を吸い込みゆっくりと吐き出し胸を上下させる。これは討伐報酬の演出だろうか? ――望みとは、マジックアイテムや大量のゴールドだろうか? でも、『あなたの望み』という表現が引っかかる。回答によって報酬が変動するタイプだとしたらここは慎重にならざるを得ない。


 ニーナたちと相談したいが、生憎ここにいるのはスカイだけ。周りには誰の存在も感じられない。

 そう、スカイ以外誰もいないのだ……。そもそものこの声はどこからだ?


「俺……私は、スカイと申します。あなたの名前を教えて下さい。できれば姿を見せてはいただけないでしょうか」


 この異様な空間で、接触してきた相手の正体をはっきりさせるために、スカイは丁寧な口調で問いかける。


 願いが聞き入れられたのか、一筋の光が差し込んできて、その後は一気に暗闇から真っ白な空間へと変わる。その存在は、初めからそこにいたように佇んでいる。

 透き通るような海色の瞳に雪のように白い肌、腰よりもあるストレートの銀髪は、少し桃色がかっている。肌と同じような真っ白で高級そうな布に、彼女の自己主張している双丘と腰の辺りが隠すように纏われている。それも最低限の範囲で、大事な部分が見えそうで見えない感じが色々とやばい。


 スカイの第一印象は、色っぽい女神様だ。


「初めまして、私はセラムルシオーナ。あなたの世界でいう神です」


 やっぱり女神様だった。そんな設定フロリバにあっただろうか。

 スカイは、ゲームの世界の設定を必死に思い出そうとするが思い出せない。


「先ずは驚かせてごめんなさいね。ちょっと準備に時間が掛かってしまいまして」

「準備? というか、ここは何処ですか? それにセラムルシオーナ様のこと知らなくて、何の神様なんでしょうか?」


 スカイは気になる言葉と現状の説明を求める他に、セラムルシオーナと名乗った女神のことを知らなかったので何の神様か続けて捲し立てる。


「えーっと、湯浴みをしていましたの……」

「はっ?」


 予想以外の回答にありえないという発言と顔をしてしまう。


「神でも湯浴みをしてさっぱりしたいと思うことだってあるのですよ」

「神様も汚くなるんですね」


 セラムルシオーナが神々しく輝きながらそう言うも、スカイの発言で台無しである。


「その表現は、なんだか語弊を感じます。そもそも神だからこそ贅沢に湯浴みを「はい、ごめんなさい!」――」


 なんだか話がそれて進まなさそうだったのでスカイは遮るように謝って先を促す。


「その、ここは何処なんでしょう?」

「う、いいでしょう。簡単に言ってしまうと私の仮想世界です。神の領域とも言えるでしょう。そもそもあなたをここに招待したのは、あなたに私の現実世界に転生してもらうためです」

「転生? キャラの変更ですか? それならこの身体を気に入っているので今のままでいいですよ」


 断られるとは考えていなかったのか、青い目を大きく見開き、吸い込んで止めていた息を一気に吐き出す。その反動で大きな双丘が揺れる。あっ見えそう、とスカイの目線が誘導される。


「どこを見てるんですか!」


 痛いっ、と感じたことで叩かれたことを認識する。

 叩かれた左頬を摩りながら、もう一度説明を聞いてみることにした。


 どうやら彼女は地球とは別の世界の神様で、優良な魂を求めてこの世界に網を張っていたようだ。この世界というのは、『フロンティア・オブ・リバティ』(通称フロリバ)で、今スカイがプレーしているフルダイブ型VRMMORPGである。驚くことにこのゲームは、地球の創造神が色々な世界の神様たちと魂を取引するための造った仮想世界であることだ。つまり、彼女が言う転生というのは、スカイが言っていたキャラクターのリメイクではなく、本当の意味で生まれ変わるということのようだった。


「にわかには信じられませんね……。それにゲーム中に死ぬ人が続出すると大騒ぎになりますよ」


 スカイは信じたいと思いながらも、もっともなことを言って批判的してみる。


「あなたの指摘はおっしゃる通りで、魂の行き先変更は死後に行うのがルールとなっています。」


 肉体をもったまま魂の世界を変更すると負担がかかり魂を傷つけることになってしまうので、このフロリバは魂の質を確認して予約する青田買い用の世界であると、付け加えて説明してくれた。


「それなら俺だって、……!? もしかして俺は死んだんですか?」

「安心して下さい。あなたの場合は特別で、元々私の世界の魂だったことがあり抵抗がほとんど無いに等しいのでその心配はありません。だから、お帰りなさいと声をかけたのもあながち間違いではないのですのよ」


 死んでいないことにほっと胸を撫でおろすが、神たちにとって魂は取引材料なんだな、と思うとなんとも釈然としない様子である。スカイは別の世界にいたことに驚きつつも、色々と突っ込みどころが多過ぎてどうでもよく感じる。


「混乱するのも分かりますが、私はあなたの望みを叶えられると思ったからお声かけしたんですよ。それに、あなたがその願いを叶えるために『フロンティア・オブ・リバティ』の世界にやって来たのも知っています。それが叶わないことに気付いてしまっていることも同様に……」


 セラムルシオーナは、説得するためにまだ続けて何かを言っているようだが、既にその言葉はスカイには届いていない。


 俺の望み? 俺の望みは……まさかな、とスカイは思いながらもこのフロリバを始めた理由を思い出す。


 何物にも行く手を阻まれず、あの大空を自由に飛んでみたい――そんな子供心に描いた夢のことを言っているのだろうか……。

いかがだったでしょうか。次から、フロリバを始めたころに話が戻ります。

本日は、三話投稿予定です。

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