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交渉と居場所




翌日ー


お昼のチャイムと同時に教室に、朝顔が僕のもとに駆け寄ってきた。


「海。昨日の話なんだけど。」


僕に笑顔で駆け寄った彼女に見せられたのは、スマホに映ったある画像だった。


その画像を見て、僕は彼女のやりたいことの意図を理解する。


「お~なるほど・・・・でも、どうやって??」


その彼女の方法とは、普通の学生が思い付きで本来できるものではなかった・・


「ふふふ・・あのね海最近、部活で鈴木先生と話す機会出来たじゃない?」


「ああ。顧問だし、ちょくちょく合うね。」


「そこよ!!あのね、鈴木先生の一族は代々この町の大地主さんらしくって、この辺じゃ結構有名なお金持ちらしいんだって!!」


ぼくは、先輩の住んでいたあのこわれそうなアパートを思い出し、食費やらを出してもらっているのもちょっと納得した。


(・・・ということは、鈴木君も実はお金持ちか・・この事実を知ったらみんなびっくりするだろうな・・)


鈴木君と、鈴木先生は姉弟ということはあまり知られていない。


これがもし、学校で有名になったら鈴木君の今の状況は一変するだろう・・


「んで・・?相談でもしてお金でも借りる??」


「ちょっと違うな。そこまでしてもらったら悪いし。」


「海には、先生にちょっと交渉役をお願いしたいんだけど。」


そう言って、僕に片目をつぶってウインクしてみせた。



放課後ー


職員室前の廊下にて、鈴木先生を呼び出して僕の交渉が始まる・・・・


「先生、相談事があるのですが・・・・」


先生の顔色を覗うように僕は話を切り出す。


「なんだ、板尾。部活の事か?」


先生は、僕の話を聞いてくれる態度を示す。


「ここではちょっと・・・・」


「じゃ、部室にでも行くか。」


「部室もちょっとまずいです。先輩がいますし・・・・」


僕は、話ができる場所を頭で模索するがいい場所が思いつかない。


「なに?椿がなんかまずいことしたとか?」


先生の顔が一瞬、怖くなる。


「いえいえ、そういうわけじゃないんですが、出来れば、まだ聞かれたくないもので・・・」


僕の切りだす話が訳ありだと感じた彼女は、提案してきた。


「ならば、何処か外に行って話を聞こう。」


数分後、僕は先輩に今日は部活を休むと伝えその足で、先生の車に乗り込んでいた。


(何処へ、向かっているのだろう・・・帰りの事も考えると少し心配になってくる。)


車の中で、少し相談の内容を簡単に頭の中で整理して交渉に備える。


「んで?私に相談とは?」


「実は、僕たちにこの町のここにある屋敷を貸してもらえないかと・・・・」


スマホの地図を指さした僕を先生が少し驚いた表情で見ている・・・


普通ただの高校生が、こんな物件の賃貸交渉などするのもおかしい。


「ほう・・わたしの持ち物だとよくわかったな。」


「はい、どうしても借りたくて調べさせてもらいました。」


半分はでたらめで、調べたのは朝顔だった・・・・


「それで、それを借りてどうする?道場にでもしたいか?」


先生は事情を聞いてきた。


「いえ・・・・実は・・・・・・」



数日後ー


この町の片隅に古い洋館がある。


昔からあるこの屋敷が今、あるお店となって周辺の市民の注目を集めていた。


開店時間の朝11時~夜の6時まで、このお店には連日お客様で大盛況だ。


その店の中、あの公園にいた仔犬や子猫達に紛れて、僕も居た・・・・・・


「はーい。少々お待ちください。」


(・・・僕も働くはめになろうとは・・・・・・・・)


カウンターに料理を運ぶ、ボウイさんの恰好をして・・・・・


「店長!!シロちゃん、ミケちゃん、3番におねがいしまーす。」


メイド姿の朝顔が、奥に向かって叫ぶと、一人の少女が出てくる。あの公園に居た少女、ユーカリだ。


猫たちに何やら指示すれば、見事に指定のテーブルに向かい走っていく。


「・・・・・・・ん・・」


彼女は相変わらず人の前では口数が少ない。



僕が、オーダーを出し終え、一人カウンタに帰ると同時に一人のお客様がまた入って来た。


「いらっしゃいませ。鈴木先生。」


「うむ。大盛況じゃないか!!犬猫洋館カフェ。」


「はい!!ここを貸してくれたおかげです!!きっと他の大人じゃ僕たちの話なんて聞いてくれなかったと思います。」


僕と朝顔は、感謝で自然と頭が下がった。


「いやいや、話を聞いたときは戸惑ったがかなりすごいと思うぞ。」


先生はあたりを見回し、猫や犬がこんなにたくさんいるのかと驚いたようだ。


「朝顔のアイデアなんですよ!!こいつ動物好きでほっとけなかったらしくて。」


朝顔は照れ臭そうにうつむく。


「ほんと関心するよ。こいつら放っておけば、多分また皆の食い物盗んで回るだろうし、何より中には引き取りたいって人もいると聞いたぞ。」


先生は、朝顔を笑顔で激励する。


僕も本当に、ここまでうまくいくとは思っていなかったが、僕が先生にこの洋館を借りる交渉をしている最中に朝顔が色々と作戦を展開していた・・・


公園に行ってユーカリと交渉、簡単な動画を撮らせてもらい有名動画配信サイト「totube」にUP。彼女の愛らしさが話題になり、おまけに、クラウドファインディングにも登録して、賛同者を募りショップ経営にあれよあれよと至ってしまった・・・・鈴木先生の寄付がほとんどなところもあるのだが・・全く、うまくいきすぎだと思う。


「なにより、自分の食いぶちは自分の手で稼ぐという気概が気にいった!なぁ、椿。」


先生の目線の先にはメイド姿の雪代先輩がほうきを持って恥ずかしそうに立っている。


「・・・・なぁ・・・この恰好・・・しなきゃだめか?・・・・・」


「だめですよ~先輩。バイトなんですから。それに目的があるんでしょ?」


僕は、先輩にここのバイトを進めるのは少し乗り気ではなかったが、この屋敷を借りる手前先輩にも働いてもらうことも引合いに出し、交渉したのだ。


朝顔は人手も足りず、何より先輩のルックスの良さもありあっさりOKした。


(しかし・・・・いつもの鬼のような先輩は何処へやら・・・・)


「ははは!!・・似合うじゃないか椿。がんばれよ!それと・・・・ユーカリ・・ちゃん。」


ユーカリのことは先生には記憶喪失の迷子としか伝えていない。犬猫のこともまとめてざっくりとしか説明していないが、身元が判明するまで、引受人として名乗りを上げてくれた。今では、ここでの子供店長だ。そして・・・・


「君は、今日からゆかりだ!!ユーカリは言いにくい!!」


「ちょ!?先生!!人の名前を簡単に!!・・・それに彼女、外国人・・・・」


いくら何でも、無理がある感じがする・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった。いいよ。」


(!?いいのかよ・・・!!)


「とにかく、4人とも頑張ってやるように!!しっかりゆかりを支えてやれ!!」


先生は、爽やかに手を振り店を出ていく。


「ほんと、いい先生だね!!」


朝顔は笑顔で僕にこう言うが、僕には先生がものすごい大物に見えて仕方がない。実際かなりの人物だとおもう。



ふと、気付くと店先から男の凄い悲鳴のような声と可愛い仔犬の鳴き声がする。


「ひぁ~!!!お・・・おのれ!!!」


急いで外に出ると、そこにはマントを羽織ったでかい顔の変質者・基、クラスメイトが仔犬に向かって構えていた。


「くそ!!我をカイザーと知って、立ちはだかるか!!」


どうやら、お店に客として入りたいが、彼は犬が苦手らしい。


「今日の私は、猛獣と戦う術がない事を分かった上でここにケルベロスを置いたか!!イオタよ!!」


そんな訳は無い。この仔犬は、来たお客を見るからに歓迎している。


「鈴木君・・・・・犬苦手なら、来なきゃいいのに・・・・・」


僕は、彼のテンションに突っ込む気力もない・・・


「来ない訳にはいかぬであろう!!!この、ヘブンズゲートを抜けた先には、最近ネットでしかお目見えしてないリアルメイドやゴスロリがいるのだぞ!!しかも、学園のアイドル級が・・・・私が行かなくてどうする!?」


いちいち、胸を張って言う事でもないだろう・・・が、この町はそれ程の田舎なのだ。


「ヘブンズゲート・・・・ケルベロスは地獄の番犬だったような・・・」


僕が鈴木君の力説に、軽く突っ込みを入れていると、後ろからユーカリ改め、ゆかりが出てくる。


「おおおおおお~~リアル金髪!!!リアルゴスロリ!!!」


なぜか、鈴木君は、ゆかりを見て一人感動&興奮しているようだ・・・・次の瞬間、鈴木君に愛想よく仔犬の群れが飛びついた。なにやら、ゆかりが合図したようだ。


「ひぃぃぃぃ~!!!!きょ・・きょうの所は、これで撤退する~!!!!」


悲鳴を上げて走り去った鈴木君を見て、ゆかりは一言つぶやいた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・変態は、ご遠慮ください・・・・・・」



町の片隅に昔からある古い洋館。


町の捨て猫や仔犬の貰い手を募ると同時に、皆に癒しを送る、新装開店したカフェ。


店の名前は、犬猫カフェ「ユーカリ」という。何故か、コアラの絵が看板に書いてあり、目つきが悪い・・。



書くペースが、段々遅くなります・・ご拝読有難うございます。


ブックマーク、ご感想、評価、頂けるとやる気がでます!


次回もよろしくお願いいたします。

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