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モールの出会い

1

少し時間は遡り、うずめの住むマンションにてー


廊下で扉に向かって、中腰で聞き耳を立てているうずめの姿があった。


部屋の中には、うずめの付き人飛子の声がきこえる・・・


「はい・・・はい・・・・・・わかりました・・・」


飛子は、誰かと電話で話をしている。もちろん、うずめには電話の相手の声は聞こえていない。


『その者が、召喚された記憶はいまだ残っていると思われます・・』


電話の相手は、若い女性の声だ。あの、海が召喚された場所にいた女性の声に似ている。


「大丈夫なのでしょうか・・・そんな可能性のあるものを放っておいて・・・」


『恐らくは、ここの話をしたところで信じるものなど誰も居ません。』


「しかしながら、あそこにはsssランクの転移者が確認されておりまして・・・」


飛子のその言葉を聞いて電話の相手に少し沈黙が走る・・


『・・・・あなた・・何故そんなことを知っているのですか?』


電話口の女性は、少し低いトーンで飛子を問い詰める。


「あっ・・・・いや!・・・・・・・・・」


飛子は口が滑ったと咄嗟に悟り、言い訳しようとした。


『・・・まったく。うずめの仕業ですね・・・・』


「はい・・・すいません・・・」


『あなたも、他の世界では神と崇められる立場。いくら、うずめがあの性格でも制御するのはあなたの使命なのですよ?』


「はい。肝に銘じております。」


『うずめは、今は力は無いにしてもあの性格・・何を考え付くか・・・』


「良からぬことが、起こった時は全力で阻止します!」


飛子は、先日「ユーカリ」にりらをけしかけたうずめの事が頭をよぎり、汗が出る・・・


『うずめの監視の任、しっかりやって下さいね?・・・お願いします。』


「はっ!お任せください!!」


飛子は電話を切り、ため息をつく。


「まさか・・・女帝や剣聖といる一般人が、実は鍵かもしれぬとは・・・・・」


飛子のこの独り言を扉越しで聞いていたうずめは、後ずさりながら肩を震わせ静かに笑う。


(へぇ♪これって、かなりいいこと聞いちゃったかも♪)



再び舞台は海達の元へ・・・


僕たちの住んでいる町は、基本住宅街ばかりでお店といえば、ありふれた商店街が少しだけだ。


本格的なショッピングをしようとするならば、少し車か電車で町を離れなければならない。


今日はお店の買い出しも兼ねて、「ユーカリ」の仲間と街のショッピングモールまで出かける事となった。


「流石に休日は人が多いな・・・」


人の多さに、ついあたりを見回し僕は呟く。


「ここが、1番何でも揃うからね~。便利だし、皆来るよそりゃ。」


朝顔が、僕の答えに返事を返し、僕たちの顔を見る。


先輩とゆかりは、無言であたりをキョロキョロしている。


「・・・・・・・・先輩・・先輩!」


何かを探しているのであろうか、集中しすぎて僕の声が入らないようだ。


僕が大きな声を上げると、やっと気が付いてくれた。


「な、なんだ?何か言ったか?」


「先輩は、先生にお礼として何を渡したいのですか?」


先輩は出かける前に、何か鈴木先生にと言い、店に置いてある雑誌やらをひたすらに読みふけっていた。


「う・・うむ・・じつはそれなのだが・・・まだ決めてないんだ。」


僕も過去、相談されたのだが女性が喜ぶものなど分かるはずもない。


「所で先輩・・あの、なんで先月そんな最中が主食みたいなことになってたんですか?」


先生は多分、食べ物には困らない位には先輩にお金をあげているだろうと思う。


いくら何でも、先月の彼女は飢えすぎてないかと不思議に思った。


「ははは・・・そりゃ・・まぁ・・・いいじゃないか。」


先輩は僕の問いに、いかにも体裁悪そうな誤魔化しの態度である。


「ようし!!では皆、1時間後ここで集合だ!私はここの眼帯ショップに用事があるから!!では、皆の者、さらばだ!!!!ははははは」


(眼帯ショップなんて、あるのか・・・)


先輩は、多分答えにくい質問だったので逃げたのだろうと思った。


「じゃぁ、私は紅茶とか見てくるから~またね~」


そういうと朝顔もショッピングブースに姿を消した。


「・・・・わたしは・・・」


「あ!!私、ゆーかりんちゃんにどうしても着てもらいたいのが有るから、連れていくね~」


りらが、ゆかりの言葉を押しのけてそういうと手を引っ張って、反対側に消えて行ってしまった・・


一人、集合場所に取り残された僕はその場で止まって少し考える。


(・・・・・俺、何処行こう・・・・・・・)



時計を見ながら、ひとりショッピングモールを歩いていると用事がなくても色々と楽しいものだ。


時間まで何しようという選択する楽しみは、買い物で何かを選ぶ時と同じぐらい自由を感じる時間だ。


周りには、人が沢山いて、中には僕のように買い物待ちのような人もいるのだろう。


僕の視界を過ぎゆく人たちは皆、笑顔でこの休日を楽しんでいるようだ。


散歩のようにモールを歩いていくと、一つの人だかりがある事に気付く。


このショッピングモールの、中央広場のようだ。只今イベント真っ最中らしい。


少し気になり、その人だかりを覗くと、可愛い女の子と、その横にある大きな看板が目に入った。


「○○社所属モデル 雨野うずめ・・ダンス&トークショー・・・・」


人だかりからは、歓声が飛び交いまさに有名人のイベントの風景だ。


僕は、この子を知っていた。何故なら、ここに来る前「ユーカリ」で先輩の見ていた雑誌に頻繁に出て来た娘だった・・その辺の本屋やコンビニに売っている雑誌の表紙にも見かけたことがある。


「うずめちゃん、モデルでかなり本格的なダンサーなんだって」


「あの娘、かわいいよね~」


「ここで、今日イベントなんてラッキーだね!」


人だかりに入ると周りの雑談がよく聞こえてくる。


僕は、有名人のショーなど行った経験もないのでどんな事をやるのかと期待し、ここでイベントを見ていく事にした。


「はい!!では、うずめちゃんに今からダンスを披露して頂きたいとおもいます!!」


女の子の脇にいたマイクを持った女性司会が大きな声でアナウンスした。


同時に派手な音楽が流れ、明るかった会場が暗幕で薄暗くなり、うずめの周りにライトが集中する。


うずめが、肢体をしなやかに動かし、ときにはダイナミックに体のバネを使って飛んでみたり観客のすぐそばまで来て、花のような笑顔を見せたりするたびに歓声が上がる。


ライトアップのせいもあるのか、それはとても神秘的に見え彼女も女神か何かに見える。


彼女は踊りながら、僕のすぐそばまで近づいてくると手を差し出し優しく胸元に触れ、彼女は小声で何かを言ってすぐ踊りながら他の場所へ行ってしまった。


彼女の残したいい香りと余韻も覚めぬまま、周りの観客がうらやましそうな顔で僕の胸元を見ていることに気付く。


「なんだ?これ??」


僕の胸元には、紙切れが引っ付いていた。


何かが、書いてあるようだ・・・が、暗くてよく見えない。


彼女が去り際に囁いた一言を思い出す。


「いらっしゃい~♪やっと逢えたね♪」


僕は誰かと勘違いされて居るのだろうと、軽く構えていた。


4


「すばらしいダンスパフォーマンス!有難うございました!!」


しばらくして、ダンスが終了すると、歓声や拍手とともに会場が明るくなる。


「尚、先程のダンスの時にチケットを張られた方!!あなた方はラッキーです!!」


自分の手元をよく見ると、先程貼られた紙は何かのチケットらしい。


「このチケットを張られた方は、後程こちらにお並びください!!うずめちゃんからの手渡しで、雑誌で彼女がタイアップ中の新作をプレゼント致します!!」


よく見ると、僕以外にも数人このチケットを持っている人がいる。


しばらく経って、イベントが終わりに近づいても人は減る気配がない。


僕は、アナウンスされた場所へ並び順番を待つ。


一人づつ箱が手渡され、一言会話して握手やスマホで一緒に写真を撮ったりしている。


子供の頃、ヒーローショーに行って並んだ経験を思い出し、何となく雰囲気が似てるなとおもいつつ前の順番の人を覗く。


何人か順番がめぐりそろそろ自分の番が近づく頃、ふとあと何番目なんだろうと数を数えてみた。


「・・・・1,2,3、・・・・・・9番目か・・・」


そこで、過去の苦い思い出が脳裏をよぎる。


「まさかね・・・・・」


そのまさかが、自分の番で的中してしまう。


「・・・・非常に申し訳ないんですが・・・・」


僕の所に来た係員の人から話かけられて、告げられた言葉は・・


「・・・うずめちゃんのスケジュールの時間上、手渡しは前の方までとなります、申し訳ございません。」


僕は、とっさに後ろを振り向くが残っているのは僕一人らしい。


「ははは・・わかりました。忙しそうですもんね。」


係員には、大人の対応で理解したという返答をしたが、心の中ではある感情がまた蘇る・・


(これは・・・・・もう、呪いか何かか?)


僕は係員に皆が貰ったのと同じ箱を手渡され、退場するうずめと時を同じくしてその場を立ち去った。


雨野うずめにさほど興味はなかったが、9という数字が僕はとても恨めしかった。


ご拝読ありがとうございます!!


小出しではありますがちょっとずつでも進めていこうと思っております。


少しでも楽しい作品にできるようにがんばります!

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