01.プロローグ
満月の夜、エルディア王国の王宮には不穏な空気が流れていた。
「陛下!ほんとうにやるおつもりですか!?」
「もちろんだ。かの国に対抗できる手段はすべて使う。」
「しかし...!!あのような伝説など与太話にすぎません!!」
その瞬間、部屋のドアが勢いよく開けられ、鎧を身にまとった男が入ってきた。
「失礼します!救世主召喚の儀式がまもなく完了するそうです!」
「そうか...。ついに我らの救世主となる男のお出ましたな...。 行こう。」
「ハッ...!!」
「ちょ、陛下!!お待ちください!!」
陛下と呼ばれる男は呼び止める男に目もくれず、マントを翻して神殿の中にある聖堂へと向かった。
きらびやかな王宮とは全く違い、神殿には無駄な装飾がなく、神秘さと静寂さに包まれており、聖堂の入口には灰色のローブに身を包んだ1人の男が立っていた。
「陛下、お待ちしておりました。すべて計画通りに進んでいます。」
「そうか。」
聖堂の中へ脚を踏み入れると、床には金色に光る円形の陣が浮かんでおり、それをぐるりと取り囲むように灰色のローブを着た男達が立っていた。
「陛下、お願い致します。」
1人の男が声をかけると同時に美しく装飾を施された短剣が差し出された。
ザシュッ
真っ赤な血しぶきが光る陣へと散った。
すると、陣の全体に血が広がり、溢れんばかりの光に覆われた。
「くっ...、成功したか...?」
誰もが光の眩しさに目を庇いながらも、必死に陣の中に目を向けた。
すうっと光がひとつに集まり、人の形をかたどり、その姿があらわになった。
しかし、そこに居たのはひとりの【少女】であった。