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彼の者は往く  作者: 菜月水仙
第1章「2巡目の英雄譚の幕開け」
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第1章 第5幕 「剣神と神々の修羅場」

とても読みづらくなっていると思います…すみません…

【第5幕】『剣神と神々の修羅場』


「剣を見せよ。技を見せよ。七つの罪を背負いし剣の申し子よ。再び剣を用いて何をする。いや何ができる」


そこは何もないようで全てが詰まってるような場所だった。所謂世界の真理というものが


「返答がないなら何度でも聞く」


再び聞こえたその声はフードを被った青年が発している。普通の世界ならばただのイカれた青年と判断されるがここでは違う。


「幾たびもそうやってへばり、負けたとほざくのか?」


全知全能神『ゼウス』

ギリシャ神話で言う最高神。無数の能力を所持し、その理や世界の真理すらを知り得る存在。


「どうなんだ?英雄。確かにお前は強い。だがそれはあくまで人間の尺度の中でだ。我々神の尺度ではない。貴様はこの世界でも


弱いのだよ」


ーーー


時間を少々戻し

ヘラクレスとの戦闘が終わり、その後の特別検査も終わった。特別検査とは所謂神の能力を持ってるかどうかの検査だ。もちろん俺は持ってないのでスルー、その後一度城下町に行き、ある店で彼との約束。『神々』の話をした。


厳つい武器を持ったまま入店はできないため、ゲームプレイヤー配布される初期アイテムの1つ、斜め掛けのどんなアイテムでも入る『収納ボックス』の中に入れる。そして席に座る。

店の感じはおしゃれなカフェみたいなところであり、なぜそんなところをチョイスしたのかヘラクレスに聞きたい。だがそんなのは今更どうでも良い


「厄介な神は誰だ?」


「単刀直入過ぎてどこから話せばいいんだよ…」


さっさと戦力を知りたい俺はヘラクレスに問い詰めるも彼はめんどくさそうな顔をしていた。


「遠距離も近距離もできる万能型の『天穹神アポロン』こいつが戦闘で1番厄介だな」


「お前は接触したのか?」


「まぁ、一合だがあいつは強いな…」


何か苦い顔をしているところから戦闘で負かされたのだろう。確かにヘラクレスのような近距離タイプに対しても遠距離タイプに対しても対策があるのはなかなかめんどくさい敵のようだ。


「次にあげるなら近距離特化型で製剣の原点『炎鍛神ヘパイストス』」


「製剣ってのは?」


「その名の通りに『剣を製る』ということだ。だがその先があると思う」


「その先?」


「さぁーな。その先があると思ったのは戦ってる時、奴はいつも余裕を持っていたからだ」


確かにヘラクレスに相手でも神は神だ。少なくとも一瞬で勝つ手立てがあるのを隠してる可能性がある。やはり化け物か。


「なるほどな。他には問題になる奴はいるのか?」


「ほか?他は無勝の軍神アレス、離窮の狩猟神アルテミス、あ…」


「なんだよその反応。他に強い奴がいるのか?」


「あぁ…奴は唯一無限に飛べる…」


飛べると聞いた時に妄想したのは。


「ヘルメスか」


「奴は何を考えてるかわからない…楽しんでいるように見えてつまらなそうにしている…

計略神ヘルメス」


1番の厄介がヘルメスと認識し、会話を止めようとした。


「なるほどな。なかなか手強そうだ」


「手強そう?まさかお前この世界の基準。神をぶっ殺す気か?」


「いや?自分が体験した方が面白いだろ?神の戦いをさ」


そう言って1人ドアを押し開け去っていった。


ーーー


「英雄と語られ、愚姿を見せ、何をしにゲームなんぞに帰ってきた。愚かな英雄よ」


その言葉を聞きピクッと眉を上に上げる。


「あんたはあの内容を知ってるのか?」


「あぁ知ってるとも。目の前で貴様の弟子が殺されたことも」


「なら一つ質問していいか?」


そう言った時には立っていた。かつて数多の戦場で組したチームに必ず勝利を約束する英雄が。


「お前はどっち派だ?」


「あの子娘は殺すべきだ」


剣を握りしめる音が響く、手から滴る音がする、眼からは怒りが満ちていた。


「おいおい英雄よ。それでは救われないぞ?

あの弟子の死を無駄にするのか?」


「お前がぁぁ!!言うなぁぁぁあ!!!」


次の場面では紫電と剣がぶつかる。


ーーー


「おいおい、それじゃ攻撃力最強の北欧に勝てねーぞ?」


「黙れ、不勝の軍神」


「おいおい、お前ぶっ飛ばすぞ?」


神々が城内の中央大会議室にて他世界侵略戦争の戦法を考えているところだった。


内装は3階ほどあるだろう高さを全て吹き抜けにされており、端に二つの大階段があり、城壁と同じような白銀の部屋だ。


そんな部屋の扉が切り倒された。


「お前、誰だ?」


「お前ら十二神に挑む男だ」


聞いてきた男は直後に槍を振りかざし、目の前まで現れる。


「質問を変える。何しにきた?」


「そうやって訳のわからない優しさを相手に与えると足元掬われるぞ?こんな風にな」


握っていた剣を横に振り男が持ってる槍を弾き躱す。


「へぇーやるじゃん。んじゃこれはどーかな!!」


「アレス!!やめろ」


奥から女性の声が聞こえた。


「そいつを殺したら国益に関わる」


「そこまでの奴ならお前が助けろよアルテミス!!」


槍を持ち上げ刺し技を仕掛ける。背は高く、紅く光る眼と黒と炎纏ったような髪が特徴なアレスだが


「狩猟の神さん悪いけど…」


言葉を区切り、剣を再び構える


「そこまで弱くないんで」


次の時にはアレスは床に伏していた。


「なっ!!」


吐血しながら自分の状態を確認したアレスは倒れたことに驚愕していた。


「そこまで驚かなくていいしトドメも刺さない」


「あぁ!?余裕かましてんじゃ…」


言葉を区切らせるように英雄は


「国益に関わんだろ?」


「それは一本取ったな」


と笑いながら話しかけてくるアルテミスを睨みつけ歯が砕ける程の歯軋りをし、その場で立ち上がり近くにあった椅子に座る。


「次は?」


「あぁ?負けた訳じゃないだろ」


「仲間に止めらてもらったのに?」


また歯軋りをし次こそ彼は負けを認めた。


「次は?」


「悪いけど私は戦闘派じゃないんだ」


「離窮の狩猟神が動かないのか?」


今まで椅子の上に座り温厚的な態度だった翠色の瞳を持ち木々のように様々な緑が混ざり合い森のよう色彩を放つ髪を持つ彼女が険悪に変わったのが肌身を通してわかった。


「それを言ったのはヘラクレスね?」


そんなアルテミスを見て俺は彼女がこう思っているのだろうなと推測した。


〈あとでぶっ殺す〉と


「殺意が見え見えなんだが戦わないのか?」


「あなたに向けてないけど…もっかいそれ言ったら消し飛ばすわよ?」


あぁめんどくさい系の女性だ。そう直感で判断したがそれを漏らすと…殺されるな。


「わかった。んじゃ2神倒したとして話を進めていいのか」


「んーいいけどヘパイストスが暴れるんじゃないのかな?」


次の時には無数の剣が床に突き刺さっている。そう認識した。


「確か審査にきた英雄さんだろ?」


短い言葉を発した大柄な男は黒髮で、左右の目の色が違う。そんな彼は無数とある剣の一つを握り近づいてくる。


「神に喧嘩売ったこと後悔するなよ?」


「自分から売って後悔するほど間抜けじゃないんで」


突如現れた炎鍛神ヘパイストスは突進してくる。


右、左、その勢いを殺さず、体をひねりもう一度右…と全てが重たい攻撃を放ってくる。だが全ての攻撃に対して少し剣を当て逸らすそんな相手をヘパイストスは眺め、


「剣の扱いに慣れてるんだな」


「おまえの方が慣れてるだろ」


「それはどうかな!強い奴はなれない武器でも完璧に扱う!だから俺は手加減はしない!」


直後に縦に振り下ろした。次に右へ払い、その状態から体を一回転させ剣の持ち方を抜刀の形にする。


「楽しい楽しい血湧き肉躍る戦闘を…」


懐から放たれるその剣撃は…


「終わらせてくれるなよ?」


音を置き去りにした。


ーーー


紫電が前から飛んできた。ひらりと躱す気もなく、俺はただ剣を突き出し走り続ける。そして案の定剣に紫電は触れ俺の手に電気を流す。だが俺には意味がない。


そんな事、あの地獄でもう慣れた。


走り続け剣を振るう。だがゼウスは己の能力で作成したであろう実体なき雷の杖で受け止め、鍔迫り合い状態になってしまった。


「お前全て知ってて!!なんで!!!!なんであの子が傷つかなければならないと…そう結論付けるんだよ!!無実で無邪気なあの…」


「お前の弟子だからだよ」


沈黙があった。静寂があった。そして


怒りがあった。


「…何を言ってやがる」


「お前が連れてきて、しかもお前以上に強い。そんな奴を放置するとでも?」


「なんでそれが論点に出るんだよ!!あの場ではな!!?」


「知ってるとも。−−だろ?」


理性が飛んだ…それは超えてはいけない線なのだろう…そうそれを言葉で表すとしたら


《憤怒》


そう言うのだろう


「だから…なぜそこまで知ってて…」


人は怒り狂うとどうなるか。それは呆れになる。


「如何に一万もの自軍がやられ窮地に立ち、そこに英雄が現れても」


「ならいいだろ!!それはそれでよ!!!」


「人間というものは優しくされたから優しくするんじゃないだ。人間の本質は」


その先の声ははっきり…だが空気を震わせて耳に聞こえた…


『己より弱いと知って初めて優しくなるのだ』


ーーー


次の瞬間になった時には剣が折れていた。


「あー参った…これなかなかの力作だったのに受け止められてその上折られるなんて…」


柄より先がなくなった剣を眺め嘆くヘパイストス。そんな巨漢の男をもう一度見るそぶりもせずに。


「これで3神」


「んじゃ次は僕かな?」


天井から舞ってくるように現れたのは剣と弩を持った金髪でスリムな青年だった。


そんな容姿を確認した瞬間、眩い光が降り注いだ。


バックステップを踏み、後方に下がりながらなにが降り注いでるか確認した。いやわかりきっていたが。


「矢か」


「ご明察!!その通りこれは矢!だけど、

見えるかな?この天穹神の矢はそこらの愚民が使うものではないぞ?」


ニヤリと笑っている彼を見上げながら躱し続ける。どうやら見ていると地面に突き刺さりそうになると自然消滅し彼の手元に出現するようだ。そんな戦闘を十分近く続けた。


「まだ諦めないのかい!?粘り強いね〜。まぁ僕はそういう人…大嫌いだけどさ!!」


空中戦をやめ、地上戦にシフトしたのを視界に入れるとエクウェスはアポロンの正面へぶつかるように走って行く。


「なんだいなんだい!!?これが狙いってか!!?しょうもない下策だ…」


言いかけた言葉を言えることはなかった。


「これで4神」


「ところで英雄くん」


そのように話しかけてきたのはアルテミスだった。


「君、自惚れするのはいいけど、勝てない相手は必ずいるんだよ?」


「では戦いますか?」


「だから…」


そのように言葉を濁らした時に気付くべきだった。


ズシャ…どこかの部位が切り落とされた時には遅かった。


「君も知ってるでしょ?彼は『計略神』ってことを」


「あーあ〜あ~あ−あ-なんでネタばらししてしまうんですか〜つまらないなー気付かないであたふたした姿を見たかったのにー」


「国益に支障があるでしょ?」


「そんな硬いもんに気を使わなくてもいいでしょー離窮の」


「その言葉言ったらわかってるわよね?」


穹を引き今もギリギリと音を立てている彼女を眺めると


「そーその顔ですよー余裕がなくなるその顔。それでこそ戦神ですよー」


とふざけてるヘルメス。その間に剣を突き刺し立ち上がるエクウェスは睨みつけながら


「おい…とっとと降りてこいよ」


「えー何やられたのにまだ挑むのーいやそれ以前に」


一拍開け何か悪意を孕んだその目をこちらに向け


「もう飽きましたし」


はぁ…とため息をつくアルテミス。だが次に現れたのは


「蛮勇を義勇とし、英雄気取りか少年」


「なんだよ。おれは英雄気取りなんかしてないぞ」


ならば見せてやろう。全てを。


それは人が発してるようには聞こえなくどちらかと言うと空気、壁、地面、その全てが生きて発してるように聞こえた。


「イテッ」


次の瞬間目の前に現れた景色は、今までいた白銀の部屋ではなく…


「真っ黒だ」


漆黒に塗り潰された部屋だった。

何もない…何もないのにこの世界の全てが詰まってるように俺は感じた。


ーーー


「だからって…だからってそんなのありかよ!!自分より強いから助けない?救わない!?ふざけんなよ!!」


「あぁ確かにおかしい。おかしいが…君はどこでそれが常識だと思った?」


「は…はぁ?」


呆れて言葉すら出てこない。だが、ゼウスは会話を進める。


「GS対応ゲームソフトでのタッグか?戦闘でのパートナー、コンビか?取引をするギルド、同盟か?君はいろんなことを体験しているのだな」


「…何を言っている」


「君の記憶さ。どこでそう思った。どのタイミングで《優しくされたら優しくしなきゃいけない》と思ったんだ?」


「そんなの…」


発しようとしたことを遮るように言われた。


「何故自分が格上なことを気付かない?」


「…」


理解ができない。確かに周りより格段と強いとは思う時もあるが最初の頃はそこまで強くない。ただの高校生だ。


「ほう、理解ができないと?あんだけボスの一撃必殺を回避したり、窮地になった友を助けたり、ギルドメンバーですらない新人でも助けなければならない命と知った時なりふり構わず飛び込んだり、友やパートナー、ギルドメンバーが強くなるために強いアイテムをあげ、見返りはただの飲食。挙げればきりがないぞ?それでもまだ強くないと?」


「それが強さと繋がるとはおれは思わない!!」


「十分だろ?わざわざ死ぬかもしれない死地に飛び込んだり、高レアリティアイテムを失うと知っているのに、もう一度手に入ることはない物かも知れないのに、


ポンと出せてしまうのは強さの特権だろ?」


次こそ黙り込んでしまった。こいつの言いたいことが少しずつ見え始めた。


「納得したようだな。お前は生まれながらにして強かったんだよ。お前自身が無意識に行ってる行為全ては周囲からすれば強者の余裕に見えてしまう。それが周りに伝わるとどうなる。さっき言ったよな?《己より弱いと知って優しくなる》と。なら《己より強いと知ったら》?」


投げ飛ばされた質問を受け取ることができず、ただただ真っ黒でどこまでも落ちていきそうな下を見ている。もう怒りなどない。ただ。


「答えは尊敬と恐怖さ。確かに強い。強いが…だからこそ『これが敵になったら』と考えてしまうのが人間なんだ」


「だから…殺されたと?…」


「あぁ死ななきゃいけなかったんだ。ただでさえGS対応初期の頃から化け物と称されていたプレイヤーだったのに、実はそいつには弟子がおりその弟子は化け物よりも恐ろしいと」


納得できない。百歩譲って理解はした。だが納得はできない。何故死ななきゃいけないんだ…


「すでに答えは出てたろ?『恐ろしい』と」


「…」


一気にこいつの考えがわかった。だからそれ以上は言わないでくれ。実は気づいていたんだ。自分の中の理性も自分に語っていたんだ…


「そんな人を尊敬できると?」


聞かせないでくれ。言わないでくれ。再確認なんかさせないでくれ


「さっき、人に優しくされたから優しくした。そう言ったな?だから相手も『尊敬』出来たんだ。だけど人間性も知らなくてあの優しい人よりも強い…聞いただけでは『恐怖』しか残らないよ」


「だからあの結末は…」


「あの場で現れたのは正解だった。助けられた人も多かった。だがそれ以上に…恐れたんだよ。だから。殺された」


「じゃあ…ほんとに彼女を殺したのは」


「紛れもなく」


一拍置かれた。それはわざわざ俺の。いやおれの心を折るための一拍だった。


「君だよ」


ーーー


目が覚めた時には白銀の部屋で起きた。自分の体が横になっており目の前には倒した4神と倒せなかった1神が話していた。


「ということは英雄くんは全て知ったのね?」


「そんなのどうでもいい…ぶっ潰す」


「知ってしまったのか…あの残酷な…」


「べーつにー負けたことが悔しいなんてアレスさんみたいに思ってませんしー」


「知っても何にもならないでしょ−」


5人五色の対応が目の前で行われた。


「立てるか?英雄」


手を差し伸ばされた。それは今さっき全てを逃がすことなく教えた全知全能神だ。


「君の力が必要だ」


何を馬鹿なことを言っている。誰が手助けるか。


「この世界がなくなったらこのゲームを作った者の心理がわからんぞ?」


「お前…」


「その意気だ」


差し出された手を握りしめ立ち上がる。そんな俺を見てフードの中で少し笑う神は宣言する。


「では、これより北欧軍との戦争を開始する」


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