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彼の者は往く  作者: 菜月水仙
第1章「2巡目の英雄譚の幕開け」
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第1章 第1幕「グローバルシステム《GS》と両親」

【第1幕】『グローバルシステム《GS》

と両親』


「金はまだあるし…毎年に一度ぐらい大出費してもいいよね?父さん母さん…」


そう独り言を言う青年は近所の街中を歩いていた。


青年の姿を語るとすれば…短い黒髮で黒眼、身長は170前半と一般的身長を有し、筋肉も少しながらあり、普通の高校生だ。平凡な容姿である青年は周りの人々に溶け込み、見つけようとするとなかなかに時間がかかる。そんな彼はでっかい買い物袋を持ち、周りの人にぶつからないように慎重に歩いている。


彼が抱えているのはさっき買ったVR型ゲーム機。通称「ダイブ機」。もちろん商品名は『LDS』と言うのだが、ネット用語でVRゲームを行うことを『ダイブする』と言うため、VRゲーム機を指す名はこれが主流になった。そんなダイブ機は2020年では珍しかったが2029年の現在ではさほど珍しくない。表現するとしたら昔流行ったiPhoneのようなもので時代のトレンドはすぐに変わって行くということだ。


現在の世界は、約10年前の世界でさえ、汽車と新幹線ぐらいの差がある。例えば俺が歩く歩道の隣を走る車は昔のような形であるが、電気がエンジンとなっており、道路にはある一定の荷重がかかると電力を流す装置を埋め込んでいるため、この装置が整備されている道路なら消費と充電が永遠に行われる。結果としてどこまでも走れる。これは昔、クアルコムハローと呼ばれた装置であり、現在の和名では感圧型充電パネル通称「EoA」

他にも走る場所も変わってしまった。


昔の高速道路といえば地上にあるイメージだが今では地下にある。電車大国だった我が国【日本】であったが電車が通るその地下に戦時中逃げるために核シェルターを作り逃げ延びた。当時の戦争の悲惨さを語るとすれば、昔実在したという大江戸線の最深部にあった駅すら地表から爆撃され消し飛ぶほどである。


そんな核シェルターは全自地区の地下に配備され、また8年もかかった戦争に対して生き延びるためには横長に穴を掘り、食料の供給をしなければいけなかった。その空いた空間をどう再利用するかを検討したのがこの地下高速道路計画の発端だ。


また地下高速道路では高速と低速がある。高速の場合、北海道から沖縄までの移動を時間短縮することが実現しており、電車及び新幹線などの集団移動型乗用車はなく、ファミリー向けの5、6人乗りのみの地上に走っている車と同じようなものが使用されている。地下高速道路を走っている車は一定間隔で発進するため、事故が起きる可能性はなく、停電が起きても各車に最低二個は予備バッテリーが入っており、走行さえできれば前述した充電方法で補充することもできる。また人間的エラーが起きても、車間距離を保っており、AIを搭載しているため、二次災害などが起きない工夫がされている。


そんなAIは2年前から試運転を開始して実用性が高くなったIoTを採用した自動運転システム(AOS)が元になっており、それを一般乗用車に推奨し、一定のスピードでしか走ることができないように制限したため、上記の繰り返しになるが渋滞が起きることはなく、全てが自動で行われているため急性の病気がもたらす事故などや、また誤作動的発進、停車でも周囲にあるAIが対応し、事故は起きないとされている。他にも様々な業界で事故につながらないように内容は違えど様々な自動システムが作られている。


またこのシステムを搭載した車以外走ることは現状の国際ルール上禁止になっている。


地下での移動方法は遠くまでの距離を瞬時に行くためのものが多いため、近くの道を早くするためにも地上に車は走っている。地下の乗用車と同性能の車が走っており、一定のスピードで走り、AI同士の兼ね合いがあるため信号機はなく、歩行者はほぼいない。だから俺は今1人暗い夜道を歩いているわけなのだが……


そんなこと思いながら隣を走る車を眺めていた青年は、満天の星が煌めく夜空や歩けばすぐ目にとどまるコンビニ。しかしそれは昔のような物をレジに持って行って買う行為なんてせずともただゲートを通り服の中にあるであろう身分証明書とその中に入ってる電磁マネーを読み取り、そして商品を持ち、ただ出て行くだけ。そんな便利になったコンビニを眺め、そのようにある暗い路地裏を眺める。


こんな素晴らしい世界でも犯罪行為は消えない。犯罪者にも二種類傾向があり、法の抜け道を探しあて、犯罪を犯す者。偶発的に起こしてしまう者。


『9対1』


そう対比され、意外にも9の割合を所持しているグループは抜け道を探し当てる者達だ。だが意外ではないのかもしれない。なんせあらゆるものごとに『オートシステム』を採用され、事件・事故を解決…いやそもそもの起因を作らないようになっている。例年、その地区の警察署はその住民たちに調査報告書を公表するのだが、その報告書にも事件・事故が起きる件数はみるみる下がっている。今では5パーセント以下となっていると表示されている。


そのことに関してつまらなく感じたもの達による犯罪がなかなかなくならない…


〈すぐに捕まってしまうのに〉


そんな風に俺は思った。


「いつからこんな堅苦しくて束縛的社会な世界になってしまったんだろう」


小声で呟き、哲学を考え、人類の操る機械の進歩と人間の脳の向上の比例を嘆いていた。あらゆる器具が進歩しても扱う側の人類が腐って行った世界。そんな世界に住んでいるゲーム機を買った青年はとても優秀な生徒であった。


昔の彼は小学校では成績優秀者の中でも上位に存在し、文部科学省が作成した創作小説作品コンテストにて創設されてからの3年連続優秀賞を貰うほどの実績もある。そんな彼を変えてしまった事件があった。それは彼の両親が関わって来る。彼の両親はVRゲーム機の研究者でVRがもたらす人体への副作用を調べる部署で働いており高い収入により家庭も安定していた。


しかし高い収入にも理由はちゃんとある。自らを実験台としゲーム内で問題があるかを調べるためである。部署に働いている人達は、1日に1人5タイトルのゲームを行い、そのゲーム内でのシステムエラー、バグなどを調べ、後にゲーム会社へ報告するのが仕事である。ゲーマーとしてはゲームやり放題であることに喜ぶが…創設当初からあまり募集がなかった。


事件が起きる当初、部署内での研究員は合計50人。50人で出回っているゲーム全てを行うのは不可能であるため新作のゲームのみに参加。その後安全と判断したゲームにαテスト、βテストを行い、一般市民にもバグを探して貰う…

全文を簡略し、説明するとしたら


『一般市民が死ぬ可能性をなくす仕事である』


そんなところで働いている両親を少なからず誇りに思っていた。しかし青年が小学三年生の時、操作していたゲームが突如エラーの文字を出して間も無くのVRゲームが操作機能そのものが壊れゲームから出られなくなってしまったのだ…しかしそんなことも起き得るかもしれないとのことであらゆるVRゲームを開発するときの申請書に『外部からの救助システムを作る』と言う欄が設けられている。しかし作成者側は


「そのようなことを予期していなかったので作っていなかった」


と無責任な一言。


「岸本くん!!」そう呼ばれ授業中であったにも関わらず廊下から走ってきた担任に連れ出され、ある程度のことを説明されたがあの時の絶望は、怒りは、悲しみは…


なくなってなどない


だが話はここで終わらない。最初の説明では父だけだったのが五分後…いや正確には6分34秒後母も違うゲームで同様のエラーが起きたことを説明された。システムエラーやバグが少ないとされる…いやあってはならないVRゲームでの不可退出が起きた。


ちなみにネットではこの事件後『ノーリーヴィング』と呼ばれる。VRゲーム発売にして最初で最大の事件が起き、大々的に報道され、ゲーマー達でさえ一時期的にせよVRゲームをやらなかった時期があった。その後開発側である無関係の二つの会社は倒産、他にも売れていたVRゲーム、ARゲームがあったが全てを自主回収及び配信停止、その一ヶ月後父親を閉じ込めたゲームの開発者による自殺が報道され、世間に知れ渡ったが現在ではなかったことにされている…何も起きなかったかのように…それが当たり前のようになりつつある…


そんな事件があり、小学校を卒業後、中学に進学、この時は特別プログラムがあり、大きな問題は発生しなかったが、高校にエスカレター方式でした途端に成績は下がりはじめ、学年最低点数を平気で出すようになってきた。現実では家族はいなく喪失感を持ち、教師からはまだ期待され、中学からのクラスメイトからはハブられ…学校に行きたくないと言う感情が少なからずとも芽生え始めた時である。


両親を奪ったという過去があるが皮肉にもいじめられていた当初の心境では希望を与えてくれた『ゲーム』に出会ったのは。


高校一年生でありながらも、家族への賠償金と両親の絶え間なく働いていた収入が奇しくも青年に大金を与え、ゲームにのめり込む起因となったと客観的に思っている。


確かに親族からの悪質な接触は今もなお続いているが全て断り昔から…そう生まれてから住んでいる我が家に今もなお住んでいる。そんなこともあり親のようにゲームを辞めさせる人がいなく、人気ゲームなどを買いあさり、情報端末機、タブレット型ゲーム機を常時持ち歩き、家に帰ってもゲーム…『ゲーム廃人』そのものになったのである。


しかも俺は最初からゲームを始めることを嫌っていたためジャンルが違うゲームでも引き継ぎが可能な機能。通称「グローバルシステム」を採用するゲームを多くプレイしていた。このシステムも俺がゲームをやり始めた時にできたため、グローバルシステムの先駆者として(プレイヤーネーム)を上げて行ったのは今ではいい話である。


同時に高校一年生のある日ふと思ったことがあった。


「あの事件の時…不可退出の時にこのシステムが全作品に設けられていれば」


そんなことをボソッと呟き、嘆きながら考えたが不可能な注文はもう通らない。すぐに頭の中を切り替え、あらゆるゲームをプレイしていった。そんな一年生の日々だった。


1年後の高校二年生の時、VRで3度目のグローバルシステムを採用するゲームが発売するとのことを聞いた。それが『HRS』

青年はゲーム内でのグローバルシステムの説明に惹かれた。そこにはこう書かれていた。


【ジャンル問わず『GS』対応ゲームでのプレイ時間、ランク、所有アイテムのレアリティの三つによりランク分けしそのランクに合う神をランダムでアバターに設定、それを使用することができる。だがこれでは初心者に厳しすぎるため、ランダムの中に当たり枠を設けている】


そんなことがネットの掲示板で書いてあり、「俺のはどんぐらいまで行ったっけ?」と自分のデータを情報端末で確認する。


昔のスマホのような形状であるがこれは『ゲーム情報』と『今までやってきたゲームの実績記録』しか機能がない単純なゲーム記録端末だ。電源を起動し、右へスライド。三つの項目が出てきて少年は目視する。『プレイ時間=4546(h)』『プレイヤーランク=546(ランク)』『アイテムレアリティ=SP(最上値)』


それを見て『HRS』をやれば相当高ランクの神アバターを手に入ると思い、買うことを決心し、学校にいる時でも端末機の予約ボタンが押せるかそわそわしていた。


そして現在に至る。予約も成功しその時は喜び過ぎたせいで一週間は眠れなかった。3回目のVRゲームだが1、2回目とだいぶ離れてしまい対応機ではなかったため、近場にあるゲーム販売店に駆け寄りゲーム機を買い、念願のゲームも手に入れ、大切に大切に抱きしめながら歩いて帰って行った。


そうこうしているうちに両親がいなくなった家に近づき、『8時48分』玄関のドアを開け


「ただいま」


ぼそっと発した言葉は悲しげに反響して行く。玄関に靴がないことから家に誰もいないことを確認し、自分の部屋へ。青年の部屋は玄関からすぐ近くにある階段を登り、廊下に続く二つの部屋の手前だ。廊下はフローリングで作られ、靴下越しに少しの冷たさを感じ、また廊下にある3つの窓から月の灯りが少し差してくる。そんな廊下を歩き自分の部屋につき扉を開く。


そこにはでかいテレビが左から顔を出し、扉を開けて右を向いてすぐの位置に本棚が配置されてある。しかしそこには本はなく全てゲームソフトで埋まっていた。また開きっぱなしの戸を見るとゲーム機の数々が顔を出す。そんな部屋に閉じこもりゲームばっかりやっていた一年。埃まみれで汚くなっていたはずの部屋は綺麗になっており…


「またあいつか…」


と苦言。部屋を見られたことに対し恥ずかしく感じるがそれでも見られたことは小事、ゲームをプレイすることが第一優先だと思いゲーム機を開封。その後テレビとつなげプラグをコンセントに挿す。ゲーム機を起動、これで2回目だが新調したVRゲーム機を操作するため、一つ一つの操作が遅い。かれこれ30分、時間を弄し、ゲーム機の設定も終了。


やっとゲームにありつけることに歓喜した。しかしゲームを立ち上げるためには寝なければいけないらしい…その説明は5日前に放送したVRを紹介するテレビニュースで知っていた。アナウンサー曰く


『このゲーム機は寝るということが必須項目になっており、また寝ている間では【交感神経と副交感神経】が働いています。人が熟睡できるのは【副交感神経】が強く働いているおかげだと言われており、そんな状態でも【交感神経】も同時に作用しています。その【交感神経】をこの『ギア』と呼ばれるもので感知し、『ギア』を通してゲーム機の電子回路に神経をつなげることを可能にしました。ゲーム内での体の活動を『ギア』を通して自分の脳で操作でき、また視覚、聴覚、味覚、嗅覚全ての感覚を現実世界と変わらない状態で脳が確認することができます。またゲームをやって興奮している状態で寝ているという【交感神経と副交感神経】の関係が矛盾していますが、体に対しての被害はなく、脳がものすごく疲れる状態になるという副作用がただ1つあります。

寝てゲームをしたのに起きたらまた寝るという贅沢なことをする事になりますね』

そのようなことを言ってた気がする。


「本当にすごくなったな…」


と呟く青年はあることを思い返していた。


実はこの方法を採用してあるVR機は後継機と呼ばれるものであり、前作のVR機では『アーマー』と呼ばれる機器があり、それを手足に装着し、身体神経を脳に一切の負担をかけずに操作することを採用していた。


しかし家では出来ず、競技場やドームなどの多目的空間に行き、プレイしなくてはいけなかった。それが家庭でできるということに感動しつつゲームを従来の家庭ゲーム機のようなカセットにセット、その後寝る。無意識、いわゆる寝た状態になるとゲーム機が起動する…が


「俺の勘違いだったら大変なことになるぞ?本当にあってるのか?」


部屋の中でそんな独り言をいい青年は何度も何度も同じところを読み復習し、再確認を続け、不安を消そうとしても、昔起きた…両親の身に起きた出来事を思い出しなかなか『ギア』を頭につける気になれない。


「これでやらなかった宝の持ち腐れだよな…」


そう思い切って、カセットをゲーム機にセット、ギアを頭に被り、布団に寝っ転がり、寝ることを実施しようとした。しかし寝れない…両親の出来事でVRに対する不安と恐怖に飲み込まれ寝れなかった。


そうして買った初日が終わってしまった。翌日の朝を迎えると寝れなかったためかなにも考えられないくらいの睡魔が襲ってくる。幸い日曜日だったため、ギアを装着していることを忘れ、深い深い眠りについた。しかし青年は大事なことを忘れていた。ゲームをやるためには『寝るという行動が必須』と言うことを。眠くなりそんな配慮も気づかなく目を閉じたときに彼は聞いた。昔に何度も聞いていた父の言葉を


「辛くても前を見ろ。考えるのはその後だ」


と…

すみませんが、1章は一週間投稿させていただきます(2章が書ききれていないため…なんて言えないな…

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