第2章 1部序幕「怠惰の名を冠する悪魔」
序幕1 「怠惰の名を冠する悪魔」
俺は親にこう名付けられた。それは人間の大罪の1つで侵してはならない…いわゆる禁忌の感情の1つだった。
そんな名の俺は1人で生きてきた。7つ子の1人だったが生まれた順番も他の六人の姿、性格、声。何もかも知らなかった。それは不要だったのかただ俺が怠惰だったのかわからない。
俺の記憶の中に1つの物語がある。それはとある少年は勤勉に学校で勉強し、それなりの成績を出しまた友人たちにも多く囲まれ仲良く話している。そして少年は青年へと変わり会社の歯車でありながらも勤勉に仕事をこなし、上司からも部下からも期待の眼差しを向けられる。そんな好青年の物語が残っている。それはとても長いようで短い…例えるなら人間のような一生だ。
ただその少年、その青年は全くの別人なのだ。
よくよく考え見直すと2人の生きていた日時はとても重なることが多く、同時に別人格の記憶を持つものを前世と断定していいものなのか?
さらに考えれば7つ子とはどういうことだ?
ーーー
僕は遊びたい。勉強は嫌いじゃないけどそれの5,000倍遊びたい。勉強ができるからと言って得したことはあるのか?その答えは友人の嫉妬しか生まないよ。今の友人はこう思っているだろね。
「いつか痛い目見ればいいのに」
僕は遊びたいだけなのに周りの大人は、周りの子供は、周りの友人は僕を期待しているような口で褒めてくれる。しかし目では違うことを、失敗を求めてる。
失敗しなかったら悔しがりながらも次の策を、赤っ恥をかく策を。
成功したならそれは笑い話になる。
失敗は自分の利益に損害を産まず、成功は自分を含めた周囲の利益に得を産む。
そんな重々しい雰囲気を感じながらただただ自分に向けられている悪意という名の期待を受け流し今日も偽りの顔が描かれている仮面をつけ少年は笑う。
ーーー
そんな面倒なことはもうどうだっていい。もう疲れた。周囲からの無駄にでかいくて重い期待。それに応えなくてはいけない焦燥感。そして期待に添えなかった時の落胆される顔を想像しまた焦燥感が募る。会社内では立場がある。そんなのはわかりきってたし知っていた。ただ想像してたことの5倍はきつい。新人時代では上司や先輩の言いなりとなり馬車を引く馬のようにこき使われ、それでもなお期待できない地位向上。ならば上司や先輩に頭を下げるよりも単純に会社に徳を産むことが出きれば、地位は向上しないのではないか。
新人時代からすでにこの人たちに役に立つ事よりも会社として役に立ち方に重点を置くことができた良いきっかけだった。
そして時が経ち、少し地位が向上した俺は部下が出来た。そいつは不慣れで仕事がうまくできる様子がなくただ俺の周囲を手伝わせてる。まるで新人の俺のように。
「三滝、それやってて楽しいか?」
そうカタカタとパソコンを叩きながら掃除、茶を沸かすなどをしてた三滝にそう訊ねる。
「楽しい訳ないじゃないですか!」
嫌々やってることを思いっきり顔で表して、こちらをみている。彼は、三滝は俺を信用できる人物と判断したのか普通の先輩後輩関係では行えないことを行ってくれた。
「まぁまぁ、この仕事終わった今日は暇になるし定時まで仕事の仕方を教えてやるよ」
「即戦力になれるためなら残業ぐらい長引くと言われても付き合いますよ!」
「それは嬉しいけど多分お前の言ってる残業は想像の3倍長くて10倍辛いぞ?」
「先輩って無駄な嘘つかないから嫌いです…」
「まー頑張りたまえ若人よー」
そうふざけた会話してる俺と三滝だが…
彼は俺が消えて欲しいと思っている。それは不確定ではなくてその証拠にボイスレコーダーで録音している。確かに同期の奴と会話するネタがなくて俺を題材にしたのかもしれないが俺には耐えられない。だからこそ。
もうめんどくさい。もうやめたい。もう逃げ出したい。もう…何も見たくない…
そんなことを考えながら死んだ目でカタカタとパソコンを叩き、また部下に仕事を教え、上司からの期待を背負いひたすら生きていく。
まるで愛想笑いを常に浮かべている仮面を顔に押し当てているように。
ーーー
少年と青年の過去を知らない俺はどっちが前世に当たるのかわからない。ただ1つ言えるのは彼らのように【勤勉】ではないと言うことだけだ。
「英雄さん…手の鳴る方へ御出でなさい?」
そう語りながらニタニタ嗤う【怠惰】は人を辞めたように、人を諦めたように、人に飽きたようにただただ邪魔することだけを考え敵を翻弄する。
とても久しぶりに書きましたが、これからこの2章の最終戦闘を書くのでまだまだかかると思います。2月4日を期限としそれまでに終わらせ、三章を書きながら投稿していくことを頭の中で計画しています(絶対に破綻しますが…
そんなことはさておき今回から第2部『過去との闘争』編が始まります。岸本俊という人物に隠されている過去…それは説明されているようでされていない…
英雄とは絶対に何か抱える人物が付く職種と考えている僕は…長いのはまどろっこしですね。次会うときはそう遠くないと思います!!ではさらば




