空に浮かぶ街04
「その前に少し手当てしてもらおうか。ついでに服も着替えて、病院でその服のことも聞いておこう」
「さっきの人たちに着いていかなくて、本当に大丈夫だったの?」
「騎士団の人たちのこと? 大丈夫大丈夫。」
レイジがいうには騎士団の仕事は主に街周辺の治安維持。最近おかしな現象がおきておりピリピリしているが、あくまでも彼らの目的は街と人を守ること。もちろん悪いことをした人を捕まえるのも仕事の一つだけど、君はそういうんじゃないしね。と軽く言った。そもそも、出会って間もない、自分でも自分のことがわからないのにどうしてそんなに信用してくれるのか。
「あんな風に人を守れる人に悪い人はいないからね!」あっけらかんとレイジがいう。彼にとってはそれだけのことらしい。嬉しかった。
先に戻って上司に話をしてきます、というライルと別れ、2つ大きな道を渡った先の周りよりも一回り大きい建物、このあたり唯一の病院に行き簡単な手当てを受けた。病院でも記憶喪失はどうしようもなかったが。ついでにこの病院の患者が纏っていたのは形は似ているものの薄青色の服だった。自分の着ている薄緑色のものは破れてしまっているので、手当て中に調達してくれていたらしい服に袖を通す。そんな時にレイジがあ、と声を上げた。
「ねえ、これ!」と先ほど脱いだ服の内側を指さす。破れてほつれたそこには全体の薄緑の色とは異なる白色の小さな布があてられており、そこには。
「ゆ、うせ、かな。半分破れちゃってるけど……」
レイジが読み上げたそれは多分自分の名前、だろう。脱いでいるときにはさっぱり気が付かなかった。ユウセ──自分の名前であるという実感はまったくわかないが、名前もわからないのでは不便でしかたないので良かった。一方、一歩前進だね、と自分のことのように喜ぶレイジ。
それでも名前以外の情報がまったくないまま、向かったのは、レイジ達が属しているという組織の拠点。
先ほどの広場から少し離れた静かな地区。さっきの病院と同じくらい大きい、あちこちに草花のモチーフがあしらわれた特徴的なデザインの建物に招き入れられた。
……レイジやライル、そして彼らが所属している組織についてまだ何も聞いていないとここまで来てから気がつく。まあ、大丈夫だろう。きっと。
時折すれ違う人たちと挨拶を交わすレイジの後に続く。最上階の一番奥、並んだ他の扉と同じ、だがより繊細に美しく草花の模様が装飾された扉。ノックをして「レイジです。入ります」彼の言葉にライルの声が答えた。
大きな窓から降り注ぐ、南中を通りすぎてもなお白い光。ほんの少し目が眩む。草の匂い。降り注ぐ光に向かうように立つ一人の女性がそこにいた。




