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虚空回廊  作者: 相川隣家
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空に浮かぶ街02

 周りではけが人の手当てや破壊された街の片づけを始める人たちが既に作業を始めていた。人的被害は影に引き倒された自分が一番重傷であったような程度だったようだが、所々街路が砕かれ表面の石畳が散らばってしまっている。とりあえず、とレイジに連れられ邪魔にならないよう広場の端に移動する。

 「まず、ここはカトレアの中心街。カトレアっていう街の名前は聞いたことがある?」

 「多分無い、と思う」

 「自分の名前が思い出せないくらいだからそうだよね……」気の毒そうな顔をするレイジ。彼が戸惑いながらも、何かの助けになればと色々と教えてくれた。「穴」と呼ばれる離れた場所が繋がってしまう事象に巻き込まれたのではないかということ、ついでにその「穴」の影響であの黒い影──「バグ」と呼ばれているらしいそれが発生したということ。普段はこのような街の中心街に穴が繋がることもバグが発生することもめったに起こらず、記憶が無いのは何か変わったことが起きたせいではないかということ。……理解できないのは自分が何も覚えていないせいなのだろうか。

 だがこの広場で目を覚ます前のほんの少しの間だけは記憶にある。広い海に突き出た結晶の柱、その上で戦う誰か。このことを話すとレイジはますます困惑した顔になる。記憶を失ったのは「穴」に落ちたせいではないんだろうか……?

 レイジは何を言っていいのかわからないようにうーん、とうなっていたがそこに助け船が現れた。ライルさん、とレイジが呼びかけたのは先ほどから近くで人々の手助けや様々なことにきびきびと動き回っていた壮年の男だった。

 「レイジ君、そちらの方は?」その男が柔らかい口調で問う。

 「それが、その……」どう伝えたものかとこちらを見てから、それでも事の顛末を手短に男性に伝えた。

 「事情はわかりました。……大変でしたね」こちらを気づかうライルと呼ばれた長身の男性。レイジが職場の先輩だと紹介してくれた。

 「我々も何か力になれるかもしれません。少しでもいいので、何か覚えていることはありませんか? 些細なことでもいいんです。どんなかんじだったか、とか。それに「穴」に落ちる前のことを覚えているのであればもう少し詳しく教えてくれませんか?」

 そういわれて穴に落ちる前のことを思い出せる限り話す。気が付いたら空のものすごく高い場所にいたこと。海に落ちたこと。大きな結晶が水から突き出たところで、大きな影と誰かが戦っていたことなどを話す。そういえばその時の黒い影はさっき見たバグと違うような気がした。さっきの影よりももっと巨大であっただろうに不思議と存在感が薄かったような……と話している内に自分でもよく分からなくなってきた。それほど些細な違和感。だがその件でライルがほんの少しだけ反応したように見えた。


 「お話し中のところ失礼します」

 ライル、ユウセと話しているところで、揃いの制服を着た男女が近づいて来た。女性の方が慇懃無礼に言った。誰だろう、と思ったことが伝わったのか言葉を続けた。

 「失礼、申し遅れました。我々は騎士団、カトレアの管理者に仕える者です」

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