第2話「苦労人少年」
僕 相沢奏、特徴は中性的な事。そしてそこそこ男である事、なんでもそこそこ。そんな僕の家に来たメイドさん(名前はわからない)は結局あの後爺ちゃんから送られて来た物をまとめて置いてある部屋に入ったっきり出てこなかった。部屋の扉に耳を当てると、ガチャガチャと音がしていたけれど、それ以外は何も聞こえてくる事は無く。観念して風呂に入り、そしてそのまま自分の部屋で寝たのだった。
「おはようございます!坊っちゃま!」
突然の大声に驚いて起きると、昨日と何ら変わらなく、つーんとした「メイドさん」がそこにいたのだった。
「お、おはよう....ございます。」
「坊っちゃまの起床時間になりましたので。朝食も出来ております、さぁ。」
「えっ、わっわっわっ!」
それだけ言うと、僕の手をぐいぐい引っ張り、リビングへと連れて行くのだった。
「すごい...」
「光栄にございます。どうぞ、お召し上がり下さい。」
ペコりとお辞儀をした彼女によって作られたのであろうそれは、そのテーブルには、パンにフルーツにスープにと...俗に言う豪華な朝ご飯が並べられていたのだった。
すごい...本当にこんなものが家で食べられ...ん?
「これ...1人で食べるんじゃあないですよね?」
「えっ...?」
えっ
「メイドさんも食べますよね、これ?」
「いえ、坊っちゃまがお召し上がりに...」
「いやいやいや!僕食べられる量じゃないですよ!一緒に食べましょう!?」
「い、一緒に、よろしいのですか...?」
「うん、だってこれ1人だとさすがに...ねぇ」
と、言う事になって、2人で必死に食べきって...
「「ごちそうさまでした...」」
朝には辛すぎる...しかも平日、これから学校。
「坊っちゃま...支度を...しましょう...」
「う、うん...そうだね...」
とにかく早く準備しなければ...アイツらが来る前に...じゃないと...
よろよろの足取りで歯磨きへ向かおうとしたその時ーーー。
ピンポーン、と無慈悲にチャイムが鳴り響く。
おぉ...終わった...
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ...
「坊っちゃま!ドアが...ドアが...なっておりますよ...うぐっ」
ドシャアッと豪快な音を立ててメイドさんはその場で倒れてしまった。
ドアをずっと開けようとする音に加え、チャイムも鳴らし始めた。
「おーい!かーなーでー!朝だーぞー!起きろー!」
あぁもう...何なんだ...今日は、厄日だ...