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第0話 「はじめまして」

おじいちゃん、お姉ちゃん、お元気ですか。

僕は学校で散々です。かわいいだの、何だのと言われて、とても苦しい日々を送っています。幼馴染も、なんだかもうとってもやかましくて、そして。

今日、メイドさんがうちにやって来ました。


-3時間前-


ただいま、と誰もいない自分の家に声がちょっとだけ反響する。こうなって、かれこれ3年だ。僕が小さい時に両親は事故で死んだ。4つ上の姉は僕が六年の時にどっかに留学していってしまった。それからというもの、たまに来る祖父からの手紙と届け物、それと結構前から中の良かった隣のお姉さんが酔い潰れて家を間違えてくるだけだ。荷物を置いて、着替えて、そして財布を持って出かける準備をする。今日は買い出しの日だ。今日はたしか、スーパーで卵の特売日だった筈だ。晩御飯は...オムレツ辺りでいいだろう。中身を野菜炒めにすれば、明日の朝ご飯にもなるだろう。

いってきます、と家を後にした。

外に出ると偶然、隣のお姉さん...佐々木さんと出会った。

「おーかわいいかわいい奏くん、偶然だね、これから買い出しかな?」

いつも通りなのでかわいいはスルーして。

「はい、佐々木さんは帰りですか?」

「いんやぁ....これからなんだよねぇ....まぁ飲めるから良いんだけどね!」

右手で仕草をしながらそう答える。

「ところで、最近このへんで、一人暮らししてる人を聞いて回ってる変な人がいるんだってぇ、奏くんなんかまさにターゲットなんだから、気をつけなよー」

「え...?は、はい」

僕がそう言うとそれじゃ、と言って佐々木さんはスキップしながら行ってしまった。

スマホを見ると19:15を指していた、立ち話で15分も使ってしまった。僕は小走りでスーパーへと急ぐ事にした。

お目当ての卵に野菜、豚肉にその他諸々を買ってスーパーを出ると、スマホを見ると既に20:15を指している。これから帰って作っても、21:00くらいになってしまうだろうか.... 僕が浅くため息をつくと、隣にいた高校三年生くらいの女子、が話しかけてきた。

「どうかしたんですか?」

急に話しかけられ、少々たじろぎながらも返事をする。

「あ、いえ、今から帰っても遅くなるなぁ...と」

「あ、それなら...」

そう言うと彼女は近くに止めていた自転車を動かしてこう言った。

「私の後ろ、乗って行きませんか?」

....なんと、今の世の中にこんな優しい人がいるのか。

もしかしたら罠かもしれないと少々疑ったが、素直に好意を受け取るにした。

それからは、あっちだこっちだと家の方向を指示しながら、予定よりも20分程は速く帰る事が出来た。

「ありがとうございます。とても助かりましたお礼にこれを持って行ってくれませんか...?」

こんな物しか渡さないなんて情けないと思いつつも、お辞儀をしながら大好きなプリンを渡すと、彼女は、任務に対して大きすぎる報酬ですね、でもありがとうございます。と言って、その場をさっさと行ってしまった。

それを見送ってから、僕は家の中へと入ってまた、ただいまと言った。

それからはご飯を食べて、リビングでぼーっとして、ふと時計を見ると20:55だった。丁度その時、スマホがうるさい音と共に、着信を知らせていた。相手はおじいちゃんだ。

「もしもし?」

「お、奏!元気にしとったか?ワシはビルの屋上から狙撃でも出来そうなくらい元気じゃぞぉ!」

いつも通り例えが下手くそだな...そういえば

「電話してきたって事は、何か届け物?」

「お、そうじゃったそうじゃった。今回の届け物は凄いぞ、なんせ人じゃ!」

「.....はい?」

.....どういう事だろう、わからない

「そろそろ到着する頃じゃろうから、玄関先で待って暖かく出迎えとくれ、じゃあの〜」

「いやいやいや!ちょっ....」

そこで電話はプッツリ途切れた。今回も全くがわからない。今までもそうだが。何せ今まで送ってきた物と言えば、まさに今日である2015年の4月21日まで開けるな!と書かれた箱、箱、箱!中身は言わないし聞いてもはぐらかされるだけで散々だったのだ。

当日になったのでちょっと期待もしていたのだが...まさか人、とは.....。とにかく、言われた通り玄関先で待つ事にしよう、本当に人が来るならとにかく見ておかなくてはならない。

そうして玄関へ行こうとして、チャイムが鳴ったので今開けまーす、と言いながら開けると、そこには。

先ほど僕に親切にしてくれた人が、俗に言う「メイド服」を着て、立っていた。


「始めまして、おぼっちゃま。そしてこれから、お世話になります。」

その「メイド」は無表情のまま、そう話した。

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