第七話
教室のドアを開けると、皆が唖然となった。
そうだよね…、そういう反応だよね…。
いきなり、イケメンさんにお姫様抱っこでクラスメイトが運ばれてきたら、そうなるよ…。
「席、どこ?」
「えーと、真ん中の列の二番目です」
彼は言ったとおりに運んでくれた。
席にゆっくり下ろしてもらう。
それから、私の足首を見ると顔を顰めた。
「気にしないでください。あの、私のせいなので!!」
「俺、見てたのに…助けられなかった。だから、俺のせい…」
「いいえ、違います!!私のせいです!!」
どう考えても、彼は被害者だ。
助けてくれたのに、水までかかったしね…。
「割り込んですみませんが、何がありましたの?…リア?」
「え、えっとですね…」
雪菜、怒ってない!?
大丈夫だよね!?
「簡潔に、お願いしますわ」
「はい!…私と飯塚さんは環境委員だから、中庭に水やりに行ったら―…」
一通り説明すると、雪菜は頷いた。
「わかりましたわ。完璧にリアのせいですわね。貴方に悪いことはひとつもないですわ」
「でも、彼女のこと、誰が運ぶの…?」
イケメンさんが聞く。
「それは大丈夫ですわ。私だって、運べます」
いや、雪菜には無理でしょ…?
私の気持ちがわかったのか、雪菜は衝撃的なことを言った。
「やってみせますわよ」
そう言って、私の背中と膝の裏に手を回す。
「いやいや、無理だって!!雪菜のほうが軽いでしょ!?」
「リア一人ぐらい、持てますわ」
そう言って、簡単に私を持ち上げた。
嘘でしょ!?
「軽すぎますわ。ちゃんと、食べていますの…?」
「もちろんだよ!!てか、なんで持てるの?!」
雪菜がわからなくなってきたよ…。
そのとき、5時間目の授業が始まるチャイムが鳴った。
「はじめるぞー、席につけー…。何やってんだお前ら」
入ってきた先生は、私達を見て言った。
…雪菜は私をお姫様抱っこしていて、他のクラスのイケメンさんがいる光景に驚いているようだ。
しかし、一瞬で立ち直り、すぐに注意した。
「紫垣、お前は自分のクラスに戻れ。もう、授業始まってるぞ」
「はい…」
どうやら、イケメンさんのことらしい。
次に私と雪菜を見る。
「佐倉、お前は篠原のことを下ろせ」
「わかりましたわ」
素直に雪菜は私を下ろした。
「じゃあ、授業を始めるぞー」
その声で、ようやく授業が始まった。
―――
「さっきの、面白かったねー」
笑いながら、鈴木さんが言う。
「全く面白くないよ…」
「あはは、でも、早速他のイケメン、しかも生徒会の人との接触かぁ…」
「え?生徒会?」
「やっぱり、篠原さんは知らなかったんだ。
この学校の生徒会はイケメンしかいないから有名なんだよー」
イケメンしかいないって…、選ばれ方どうなってるんだ…。
鈴木さんの話をまとめると、こうなった。
・生徒会は生徒の人気投票で選ばれる。
・今期の生徒会メンバーは、
生徒会長の紅宮 玲。
副会長の青崎 司。
会計の橙山 和希。
書記の紫垣 一成。
庶務の浅黄 楓、浅黄 湊の6人。
・生徒会は、補佐を決めることができ、生徒会メンバーの半分の承認があれば2名のみ、生徒会補佐となれる。
「生徒会補佐って、今までなった人がいるの?」
「あんまりいないかな。いても、男子だったらしいし」
「女子を入れると、大変だもんね…」
「いじめとか、すごかったらしいよ。生徒会の親衛隊もあるしね」
うっわー!!
よかったー!あそこで会長に補佐をやりますって言ってたら、どうなったか!
「でもこの間、会長が補佐になってほしい奴がいるっていってたんだって」
「アハハ。…ダレノコトダロウネ?」
なに言ってんだ!!あの会長は!!
…いや、もしかしたら私じゃないのかも知れない!!
「確か新入生で、すっごくかわいい子だって」
よし、私じゃなかった!!
きっと、私のことなんて忘れてはず!
「それって、篠原さんのことかなって思ったんだけど…。篠原さん、どこかで会長にあった?」
「…え?なんで私?」
「だって、篠原さん、すっごくかわいいし、美人じゃん」
「どこが?それを言うなら、雪菜じゃない?」
「鈴木さん、少し耳を貸してください」
話を聞いていた雪菜が、鈴木さんに言う。
そして、二人でなにかを話していた。
時々、なぜか鈴木さんから呆れたような視線が送られてくる。
「なるほど…。じゃあ、仕方ないね、篠原さんだし」
「えぇ、リアですから」
なんで納得し合ってるの!?
なんの話なのか、非常に気になる!!
「ねぇ、なんの話!?」
「リアには、いっても仕方ない話ですわ」
「うん、私もそう思う」
「なおさら気になる!!」
そして、その呆れたような目を私に向けないで欲しいな!!
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