第八話
主人公、篠原 梨亜視点に戻ります。
土砂降りの雨が降った日の次の日。
朝、いつものように迎えに来た直也と一緒に登校する。
桜の花は、昨日の雨風のせいで散ってしまっていて、残念だった。
「お花見したかったなぁー」
不満げに呟くと、直也はくすくすと笑った。
「来年行こうよ。皆でさ」
「うん!そうだよね!」
今年は無理だったけど、来年いけばいいんだ。
きっと、楽しいんだろうなぁ…!
「ふふっ、今からもう楽しみー!」
「えっ、今から!?随分と気が早いね…」
あと1年もあるよ、と呆れたように言う。
でも、楽しみなんだもの!
楽しみなことなら、皆待ち遠しくなるよね!
「そういえば」
「ん?なに、直也」
「俺、歓迎会のチーム、リアのところに入ったからよろしくね」
「え!?そうなの!?」
意外だ…。直也なら、絶対チームをつくると思ってたから。
「そっかぁ、ありがとー!直也が入ってくれて、すっごくうれしい!」
「…俺もうれしいよ」
「え?」
直也がいった声が聞こえなくて、思わず聞き返すと、何でもないとはぐらかされた。
ーーー
教室に着くと、まだ誰もいなかった。
しーんとした教室で、直也と話す。
すると、廊下から足音が聞こえた。
ちょうど、教室のドアの前で止まり、クラスメイトかなと目を向けると、ちょうどドアがあいた。
そのドアの開いた先にはーー金髪碧眼のイケメンがいた。
あれ、クラス間違えたのかな?
そう思って見ていると、その人は私の方を向いて、にこりと笑った。
「初めまして、篠原 梨亜さん。私は生徒会副会長の、青崎 司です。少しお話をしたいのですが、いいでしょうか?」
あ…、この笑顔、断ったら駄目なやつだ…。
瞬時に察した私は頷いた。
「も、もちろんですよ、副会長さん!」
私がいうと、副会長さんは満足そうに私を呼んで、生徒会室へと連れていった。
よかった…、朝早くて…。
もしお昼休みとかだったら、皆からの視線が痛かったよ…。
「篠原さん、着きましたよ」
「…え、あ、はい!」
危ない、ぼーっとしててドアにぶつかりそうだった…!
一度、電柱にぶつかったことがあるけど、痛くて恥ずかしかったなぁ…。
「どうぞ、座ってください」
副会長の声で、はっとする。
「し、失礼します…」
私は、前回会長と来たときと同じ場所に座る。
副会長は、コーヒーと紅茶を1つずつ持ってきて、コーヒーを私の前に、紅茶を自分の前においた。
そして、私と机を挟んで正面の席に座る。
「ありがとうございます」
早速コーヒーを飲んでみる。
コーヒーは、ブラックだった。
「おいしい…!」
「口にあったようでよかったです。篠原さんも、コーヒーをいれるのが上手だと、玲が言っていましたよ」
玲…って、会長の名前だよね!
名前で呼びあうなんて、仲がいいんだなぁ…。
一息ついたところで、副会長が話はじめる。
「篠原さんを今日お呼びしたのは、生徒会補佐のことです」
「あのことですか…」
副会長は、きっと反対に違いない!!
うん、そうだよね!むしろ、そうであってほしい!
さすがの会長でも、副会長の言葉は聞くはずた。
「私は、篠原さんを補佐にすることに、賛成です」
うん、そうだよね!反対……、え?
「すみません、篠原さん。私は、相応しい人間か判断するために、貴方の過去を調べました」
「え……」
「私は貴方にぜひ、生徒会に入ってほしいと思います」
「…過去を調べたなら、私がどんな状況で育ってきたかわかってますよね…?」
虐待のことを知ったのに、なぜそれでも入ってほしいと言うのかが、不思議だった。
「……私も、貴方と同じなのです。これを見てください」
そういうと、副会長はシャツの袖を捲る。
「っ、」
その痕をみて、息を飲んだ。
副会長の、病的なまでに白い肌には、赤いみみず腫れの後があった。
「体はもっと酷いので見せませんが、私は幼少期のころに貴方と同じく虐待を受けていました。
今はもう解決したので大丈夫です。…そんな顔をしないでください」
副会長は私の手を取って微笑む。
「私は、篠原さんとわかりあえると思っています。ですから、生徒会に入ってください」
私を見る副会長の碧眼は、深海のように暗く、光がなかった。
その瞳がこわいのに、なぜか逸らせない。
「ふ、くかいちょう…」
「はい、なんですか?」
「私は……」
副会長の形のいい唇が歪むのが、はっきりと見えた。
まるで、思惑通りにいったというように。
「自分で、決めます。入るかどうかは、私自身の意思で選びます」
「え……?」
「今日はお話を聞けて良かったです。それでは、私は教室に戻ります」
驚愕で固まっている副会長に一礼をして、私は生徒会室を出た。
今でも、心臓がどきどきといっている。
副会長の言葉で、私は揺れた。
自分で一番脆いところを言われ、平静を保てなかった。
それでも、しっかりと言いたいことを言えたのは、今まで支えてくれた人達のおかげだ。
私は一度立ち止まって、深呼吸をした。
「よし!」
副会長のことは、家に帰ってから考えよう。
まずは授業を頑張らなくちゃ!
教室のドアを開くと、もうほとんどのクラスメイトが登校していた。
「あ、リアちゃん!おはよー!」
「おはよう、篠原さん」
「あら、リア、何処に行ってたんですの?」
「皆おはよー!…えっとねー、雪菜。少し、用事が、あってさー!」
「それで、その用事の内容は、詳しく聞かせて頂けるのですわよね?」
「あはは…、う、うん!もちろんだよー…」
いつも通りの会話に安心しながら、席に座る。
真衣ちゃんは笑いながら、私と雪菜を見ていた。
「ううう、真衣ちゃん助けてー!」
「それは無理かな!」
真衣ちゃん…、即答だったよ…!?
少しは迷って!?
「迷っても結果は変わらないよー?」
「ですよね」
また私がわかりやすかったのか、心の中の言葉をさらっと当てながら真衣ちゃんはいう。
このごろ、真衣ちゃんが雪菜に似てきたような…。
…いや、そんな恐ろしいこと、考えないようにしよう。
それより、目の前の雪菜だよ!
怒るときだけはいつもの何倍も笑顔になる雪菜を見て、これからのお話(尋問)に頭を抱えたくなった。
読んで頂きありがとうございます!
if話やリクエストの話がありましたら、感想などで受け付けたいと思います。
よろしくお願いします。




