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第五話




白崎先輩と話した後、私は自分のクラスへ行き、待っていた雪菜に先輩がチームに入ってくれたと報告した。

今日は雪菜が習い事の日なので、早く帰らなければならない。

私はせっかくなので、送ると言ってくれた雪菜と別れ、剣道場へ向かった。

文芸部は休みだし、久しぶりに兄と家に帰りたいと思ったからだ。

もし、試合をしていたら、邪魔にならないように外で待っていればいいかな?


そんなことを考えていると、ふと去年の兄の試合を思い出した。

…試合をしているときの兄は、なぜかいつもとどこか違うように感じる。

優しい笑顔はそこにはなくて、まるで氷のように硬い表情を見せるのだ。

試合が終わると、普段通りの兄に戻るけど…。

いいようのない違和感が、私の中に残るのだ。

私と話すときのまなざしも、瞳の奥になにかが冷え固まっていて、それを隠しているように思う。

もう少しでわかるかも、というときに目を逸らされてしまって、結局何もわからない。


雪菜もそうだ。

兄とは少し違うけど、私になにかを隠している。

きっと、私を思って何もいわないのだろう。

雪菜は私のことを無理をしているというけど、雪菜のほうが無理をしているのではないかと、心配になるのだ。

私が母から虐待を受けていたことに、責任を感じているから…。

本当は、責任なんて感じて欲しくないよ。

私は、雪菜に感謝はしても、恨みなんてもっていない。

虐待のことも、過去のことだと割り切って、今を過ごしているのに。


…いつか、雪菜は私に責任を感じずに、接してくれるだろうか。

弱音や愚痴も、全部とは言わないけど、少しだけでもいって欲しい。

雪菜は、そういうことを言わないで、溜め込んでしまうから…。

何年後かには、そうなってくれたらいいなぁ…。

そんな未来を想像して、思わず顔が緩む。

よし、早くお兄ちゃんのところへ行こう!

少し早足で廊下を歩いた。


・・・・・


私が、母からの暴力で入院し、退院する日。

最後に雪菜は、私と病院の屋上へ行って、花をくれた。

その花の名前は“スターチス”。

小さくて可愛い花だった。

その花はドライフラワーにできると聞いて、私はその花をドライフラワーにしてかれないようにした。


あるとき、気になってその花の花言葉を調べたのだ。

スターチスの花言葉は…、“変わらぬ誓い”だった。



読んでいただき、ありがとうございました!

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