第四話
お兄さんの蓮視点、中学生のときの話です。
「蓮。貴方に、話したいことがあるの」
家に帰って、夕飯を食べているとき、母はそういった。
珍しいと思ったのだ。こんな時間に、母が家にいるなんて。
「私――、結婚するわ」
「……」
内容が、あまりにも予想外すぎた。
母の口から、結婚の言葉がでるとは思わなかったからだ。
「…相手は?」
「篠原 義彦さんという方よ。私の会社の上司なの。皆から慕われる、とても人柄がいい人よ」
「どっちも、母さんが納得してるなら、俺はいい」
「あら?私が最初に好きになったのよ」
「……は?」
あの、母さんが?
驚きで、目を丸くする。
そんな俺を見て、母は笑った。
母は、俺がいうのもなんだが、とても綺麗な人だ。
38歳なのだが、俺の姉と間違われるほどに、若く見える。
だが、そんな母は、人を好きになることがなかった。
そんな人が、夢中になるほど、相手はすごい人なのか。
「義彦さんは、既婚者だったの。でも、私はこの人が欲しかった。
奥さんは、ちょっと言ったらすぐに壊れてくれた。
今は刑務所で楽しく生活してるわ」
狂気を孕んだ目をして、母は言った。
その表情は、恋する乙女のようで、俺はぞっとした。
「また、そんなことをしたのか…」
「そんなこと?…あぁ、いつもの遊びのこと?」
遊びで、人の家庭をめちゃくちゃにしていたのか。
その容姿で既婚者の男を誑かし、母はさまざまな家庭を崩壊させてきた。
「最初は、私もいつもの遊びだったのよ?でも、義彦さんは、今までの男たちとは違った。
だから、好きになってしまったの」
「……そうか」
「今度、義彦さんの子供とも会ってもらうから。よろしくね」
「…あぁ、わかった」
―――
翌日。
俺は、教室でクラスメイトと話していた。
「そういえば、蓮って、合コンとか興味ない?」
「…うーん。あんまり行かないな」
誘われば行くが、あまり好きな場所ではなかった。
彼女がほしいわけでもないしな。
女子から告白されて、何回か付き合ったけど、すぐに別れてしまった。
いつも『私のことを、どう思っているのかわからない』と言われて、終わるのだ。
「今、彼女いないなら、出てくれないか?頼むよ!!」
正直、困ってしまった。
こう頼まれれば、断りづらい。
しかし、今日は気が乗らなかった。
どうにかして、切り抜けたい。
「へー、それなら、俺が入ろうか?」
そう言ったのは“橙山 和希”だった。
こいつは、男女ともに人気がある生徒だ。
顔も良く、勉強も運動、どちらもできる。
こうやって、今みたいに人が困っていると助けてくれるやつだ。
「橙山…。すまない」
「大丈夫!俺もちょうど、行きたかったし」
俺が気負わないように、ちゃんとフォローもしてくれた。
こいつは、本当にいい奴だな、と思った。
「まじで!?和希が来てくれるなら、めっちゃ女子集まるじゃん!!」
俺を合コンに誘ったクラスメイトは、そう喜んでいるので問題ないだろう。
「今度、なんか奢るよ」
「それなら、借りってことにしといて!俺が雑用でも頼まれたときにやらせるから!」
「あぁ、わかった」
笑って返事をして、俺は窓の外に視線を移した。
ブクマ、評価、ありがとうございます!!
今日、12月24日は、小説を更新できません!
本当にすみません…。
明日は、多分出せると思います!




