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第二話

虐待、残酷表現があります。ご注意ください。

前回に引き続き、雪菜視点です。暗いです…。




朝、いつもどおりに登校すると、リアはもう来ていた。

珍しいな、と思いながら、話しかけようと彼女に近づいた。


「ねぇ、リアちゃん」

「―っ!!」


ぽん、と肩を叩いただけなのに、彼女はひどく怯えたように、ゆっくり振り返る。

そして、私の顔を見ると、ほっとしたように笑みを浮かべた。

こんな反応は、今までなかった。

おかしい。

昨日、なにかあったんだろうか?


でも、家のことや親について聞かれるのを、リアはとても嫌っている。

普通に聞いても、答えてくれないだろう。

このごろの暴力を見ると、リアは殺されるかもしれないのに。

それでも、彼女は母親を信じるのだろう。

いつか、あの優しい母親に戻るのだと。


「…あのね、リアちゃん」

「どうしたの?」

「えっと…。夜に毎日、リアちゃんの家に電話してもいい?」

「え…」

「もっといっぱい、リアちゃんとおしゃべりしたいの!!」

「…うん、いいよ」


無理を言ったが、承諾してくれた。


「なら、この番号に電話してね!私の携帯だから、いつでも大丈夫だよ!!」

「うん…」


―――


それから、リアと私は毎日かかさずに電話した。

リアは、それからちょっとずつ、両親のことを話してくれるようになった。


お父さんとお母さんが、離婚寸前だということ。

半分以上、縁が切れたような状態で、お父さんがでていったこと。

それから、お母さんからの暴力が始まったのだということ…。


それでも、ずっとリアは我慢した。

食事が与えられないことがあっても、殴られても、蹴られても。

また、優しいお母さんに戻ってくれると信じて。



―電話をするようになって、5ヶ月が経った。


いつもどおり、しゃべっていると、電話の向こうから怒鳴り声が聞こえた。

ガン!やゴン!という、鈍い音。


『ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!』

『あんたなんか、生まなきゃよかった!!』


リアの謝る声と、リアの母親なのだろう人の声。

実際に聞くと、壮絶だった。

私は呆然としたまま、動けなかった。


『……―ゆきな、助けて…』


リアの声が聞こえた瞬間、私は携帯を握り締めたまま、駆け出した。

リビングにいた両親に、助けを求めた。

説明してる暇はない。車を出してもらって、その中でリアのことを話した。

警察にも両親に連絡してもらった。


お願い!はやく、はやく着いて!!

このままでは、リアは―……。


最悪のことを、想像したくなかった。

ただ、ひたすら祈っていた。


・・・・・


リアの家に着くと、警察はもう到着していた。

たくさんの野次馬がいて、その中を必死で掻き分けた。


「ちょっと!入っちゃいけないよ!!」


警察官の注意も聞かず、テープの中に入る。

リアはちょうど、家からでるところだった。

全身が血だらけで、顔もわからないくらいはれ上がっていた。


「リアッ!!」

「…―ゆきな…」


リアのことを、抱きしめたかった。

…けど、できなかった。

こうなることも予想できたのに、はやく助けなかった私を、リアはどう思ってるのだろうか?

もう、私のことなんて、嫌いになったのかも知れない。

そう思うと、怖くて足が震えた。


ふわり、と暖かいなにかに全身を包まれた。

リアが、私を抱きしめてくれていた。


「…ゆきな、助けてくれて、ありがとう」

「…―っ」


私の目から、涙がこぼれた。


「…間に合わなくてっ、ごめんなさいっ!!」

「そんなことないよ。ゆきながいてくれたから、私、助かったんだよ」

「ちがう、よ!!わたしが、もっとはやく、いってれば!!」

「ううん。いいの。ゆきなのおかげ。私は、ゆきながいたから、救われたの」


そう言われて、涙が止まらなくなった。

そんな私の背中を、リアはさすってくれた。

リアは、そのまま病院に連れて行かれた。

全治2ヶ月だった。


―――


私は毎日、リアのいる病院にいった。

学校のプリントを届けたり、今やっている勉強の範囲を教えたりした。


リアの母親は今、刑務所に入っている。

父親は母親と離婚し、リアを引き取った。

今は、一週間に3、4回は面会に来ているそうだ。

そのおかげで、リアの精神状態もよくなり、痩せすぎだった体も、標準へと近づいている。

骨折以外の傷は、もうほとんど治っており、顔の腫れも引いてきた。

今は10月だから、12月ごろからは登校できるようだ。


「雪菜ー、私、屋上へ行きたい!」

「わかった!じゃあ、支えてあげるから一緒に行こう?」

「うん!!」


そう言って、リアは笑う。

この笑顔を曇らせないように、リアを守っていこう。

間違った選択をした私を、許してくれたリアにせめてもの恩返しに。







ブクマ、評価、本当にありがとうございます!!

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