最弱12:旅前の寄り道
あれから50分ほど経過した。『創造』の使いすぎで少し疲れてきたころ、コールから音がなり"スキルが更新されました"と声がした。
「はぁ……はぁ……よし、これでくらいでいいかな……確認してみよう」
桜月は肩で息をしながらコールのステータス画面へ移動する。レベルなどは全く変わっていなかった。それは既に予想済みである。次に、スキルの画面を開いて新しく覚えたスキルだけ表示させてみた。
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スキル一覧:新スキル、レベルアップスキルのみ
創造『神創』『加工:基』『加工:応』『速度上昇Lv.1』、集中
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桜月の予想通りのスキルが表示されていて、さらに副産物の『集中』がついていた。これはラッキーだ。
てっきり『加工』は素材ごとにスキルがあるのかと思いきや、基礎的加工でもある程度は素材の自由さがあった。応用的加工になると素材はなんでも使えるようで、より複雑な加工が出来るようになった。何にせよ、これで当初の目的のものが作れることに満足している。
ついでに、『速度上昇』と『神創』がついたのは付けばいいなくらいで考えていたのだが、予想外にもあっさりと付いた。『速度上昇』は名前の通り創造の速度を上げることができ、創造全般で使える。『神創』とはこの時は全くわからなかったが、どうやら獣神種が残したものを作るようになれるらしく、ここの試練……名前は後ほど知ることになる"狼楼神殿"の創造者が残したものは、特定の鉱石を何かの機能を持った石に加工出来るようになる。もちろん特定の鉱石なのでなんでも出来るわけではないが、ここで見つけたものではその加工が出来るようだ。
桜月は試しに『神創』をベルプルトニウム鉱石に使ってみる。すると、ベルプルトニウム鉱石の形状が変化し、少しずつ小さくなっていく。神創が完了したころには、真珠と同じくらいの大きさになった。どうやらベルプルトニウム鉱石の場合はサイズを小さく出来るようだ。それだけだと思っていたが、これをコールで調べてみると、元の鉱石に含まれるプルトニウムの量の数倍もプルトニウムが増えていることがわかった。これでさらに燃費がよくなったと、桜月はかなり満足している。
桜月は次に、ポケットから少量のガルブラン鉱石を取り出した。これは洞窟内で大量に見つかった鉱石で、綺麗な紫色の石だ。これはまだまだ埋まっていることがわかっているので、足りなくなったら補給が可能だ。通常は何の力も持っていない、鑑賞などに使われる石だ。
桜月はそれがどんなふうになるかわくわくしながら『神創』を始める。すると、さっきのように小さく圧縮されていく。そして、圧縮されていくにつれて、バチバチと何かがガルブラン鉱石の周りにまとわりついていた。神創が終わると、綺麗なアメジスト色に変わり大きめのビー玉と同じくらいのサイズになった。桜月がコールで調べると名前がガルブロウに変わっていて、ガルブロウの内部には特殊な空間が生成されることがわかった。人が何人でも入れるスペースのようで、これは野宿の時や戦利品を閉まっておくのに便利そうだ。
「すごい……こんなことが出来るんだ……ん、もう少しで時間か……後でまた試してみないと」
桜月はガルブロウに鉱石をしまって、紗織達がいるであろう創造者の部屋へ向かう。部屋に入ると、今すぐにでも出発したいとウズウズしているミノと、それを見て微笑んでいる紗織がいた。
「2人とも、準備は出来た?」
「うん!バッチリだよ!」
「よし、じゃあ行こうか。紗織、転移の準備お願い」
「わかった!」
紗織は部屋にあった魔法陣を使って詠唱を始める。桜月はそのあいだに、両方の手首に鉄の腕輪のようなものを通す。手首のところにはめるとキュッと自動的にくっついた。左手はコールが付いているが、コールを外して、項目にある"リンク"を選ぶ。すると、左手の腕輪が空中にビジョンを表示させる。コールの画面と全く同じもので腕輪に桜月の情報を登録すると、コールを見てみると画面には"新規登録"の文字が書かれていた。
「ミノ、これ左手の手首に巻いて。これから先、必要になるだろうから」
「はーい!」
ミノは手首にコールを巻き付け、情報を登録させる。画面には『welcomeミノ』と表示され、ステータスの項目が追加された。桜月は試しにステータスを覗いてみると、このように書かれていた。
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名前:ミノ
年齢:17
職技:治癒師Lv.1
筋力:1000
体力:1000
敏捷:500
知能:3000
マナ:5000
スキル:10個 《表示》
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「あれ、普通に表示される……なんで?」
「それ、私がそうなるように見せてるだけだよ。正しくはこう見せてくれるの」
このステータスを見る限り、今まで見てきたミノにはありえないほどの弱さである。どうやら、獣神種には人間種にバレないように自動で偽造されるようになるようだった。桜月もそれっぽいことができないかとやってみたら、表示させるものが創造で作ったものだった腕輪だったので、あっさりと加工に成功した。職技を剣士にしてスキルを3個と表示させている。
「これ……スキルの中で創造が1番チートなんじゃないかな……」
「そう……かもね」
ちなみに、この腕輪は創造の中でも『鎌』の部類で作られている。何故腕輪を鎌で作る必要があったかと言われれば、新しく作った武器と組み合わせるためだ。狼牙との戦いで創造した"飛び道具型死神の鎌"を少し加工したものなのだが、これについてはまたの機会に説明しよう。
そうこうしてるうちに、紗織が魔法の詠唱を終えたのか、桜月に話しかけてきた。
「準備出来たよ!場所は街の前でいいかな?」
「うん、そこからでいいよ。それと、ミノはしばらくそのうさみみを隠しておきたいんだけど……何かないかな?」
2人はミノの方へ視線を向ける。他の種族にも獣耳が付いているものはいるが、うさみみは確か存在しなかったはずだ。そう考えると、隠しておいた方が後々楽になるだろう。桜月は部屋をキョロキョロ見回すと、ちょうどフードを作れそうなくらいの大きさの布があった。
「これ、使えそうだね。ミノ、しばらくは耳を折りたたんでおいてくれるかな?」
「はーい!少し疲れちゃうけど……」
「服を買うまでの辛抱だから……ね?」
桜月はミノの服の襟に布をあて、『加工:基』を使う。布が勝手に刺繍されて、即席フードが出来上がった。ミノはパタンと耳を折りたたむ……というより後ろに倒すと、フードをかぶる。これならほかの人にバレないはずだ。
ミノの準備も出来たところで、桜月達は魔法陣の中に入る。3人とも中に入ったことを確認すると、紗織は魔法陣に魔力を注入する。ここでいう"魔力"というのはステータスの"マナ"のことだ。魔力の方が言いやすいからという簡潔な理由で、桜月達は魔力と言っている。魔力の注入が終わると、魔法陣がクルクルと周りだし、瞬時に光を放つ。その一瞬のうちにして、部屋には誰もいなくなっていた。
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目を開くと、上には青く澄み切った空が見え、東側には太陽がみえる。そして、目の前には活気溢れた自然の街、ユグドラシルの街並みが広がっていた。実に1日ぶりなのだが、桜月には何ヶ月も洞窟に引きこもっていた気分である。紗織もやっと地上の光を見て、太陽よりもまぶしい笑顔を浮かべる。ミノも紗織のように笑顔を浮かべ、早く旅をしたいとウズウズしていた。
「よし……余韻に浸るのはこの辺にして、さっそくギルドに向かおう。確か素材売却とかも出来たはずだし……」
「そうだね、行こっか!」
紗織は桜月の右手を手にとる。それを見たミノは桜月の左手を手をとった。桜月は少し頬を赤くして、ギルドがある中心部へ向かった。
今回は短くてすみません!
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