帝王の雛 八話
「二対一かよ・・・戦闘初心者とはいえ俺もついてねーな。どうするか・・・」
お互いに距離をとり、相手の様子を伺う。霧宮にも俺にも遠距離攻撃があるため、迂闊に飛び出すのは愚策だ・・・!
刹那、その静寂を破るようにして一本の大きな剣がコンクリートの地面に突き刺さる。
シンプルに装飾された大剣はコンクリートを易々と貫き、辺りに破片を散乱させ、俺たちの意識を一瞬にして集中させた。
「なんだ!?」
路地に若い青年の声が響く。
「ここだったか・・・。ようやく見つけた」
脇の家の屋根の上に人影が見える。その人物は大剣の前に軽く飛び降りると、剣を引き抜いて霧宮の方へ剣先を向けた。
「おっと、さすがに三対一なんて受けるつもりはないぜ。じゃあな!」
霧宮の指示でジャックランタンが煙を吹き出し、路地は何も見えなくなる。
「ゴホッ・・・待て・・・!」
・・・数秒後、煙が晴れたときは既に霧宮の姿は消え去っていた。
残ったのは俺と瑠璃と、謎の青年だった・・・。
霧宮が居なくなった後も、俺たちは動けなかった。
突如として現れた謎の青年と大剣に戸惑い、俺も瑠璃もどうしていいかがわからない。
この人物は敵なのか味方なのか・・・。こちらに敵意が向いている様子は無いが、警戒に越したことはない。
そもそも何故この異空間にいるのか。青年のセリフから察するに何かを探していたようだが・・・それが何かさえも俺たちには検討もつかない。・・・あまりにも謎が多すぎる。
「・・・アーサー。接続解除」
青年の言葉と共に、手に持っていた大剣が光の粒子となって消え去る。
「君たちには始めまして、だね。僕は白神雷人。そして久しぶり、ホムラ。・・・今度の器はどうだい?」
「おう!久しぶりだな雷人!今回も前回と同じで中々に協力な素質を感じるぜ!」
ホムラが雷人と名乗った青年に答えた。
「・・・ホムラ、知り合いなのか?」
「お前は本当に何も知らないんだな。親父から何も聞いていないのか?」
「親父は滅多に家に帰ってこないし、殆ど話さなかったから俺は父さんに詳しくないんだ」
俺も妹も父親については殆ど知らなかった。母さんなら何か知っているのかもしれないが・・・。
「雷人はな、お前の親父の仲間さ」
「父さんの仲間?俺の父さんは何をしていたんだよ」
「お前の親父はな?・・・正義の味方をしてたのさ」
・・・本当に意味がわからない。何者なんだよ俺の父さんは!