帝王の雛 五話
男が霧の中をゆっくりと歩いてくる。
彼が少しづつ近づいて来るにあたって、段々とはっきりした姿が露になっていく。
回りの仮面の男達は早々に退散し、既に路地には俺と瑠璃、そして彼の姿しかない。黒いスーツ姿に高身長の姿は此方を威圧するのには十分すぎるほどだった。
「お前が・・・竜の契約者か?」
「・・・俺たちをこんなところに迷い混ませたのはお前なのか?」
彼は髪をかきながら、ハァ・・・とため息をついて、
「質問してるのは俺なんだがなあ・・・まあいい。ああそうだよ。お前たちをこの異空間に閉じ込めたのは俺達スフィア・フール。次元世界の統一を目指している」
「次元世界・・・?」
「・・・お前たちが暮らしているこの世界は第一世界と呼ばれてる。世界には第一世界から第五世界まであってだな、その全ての世界を統一するのが俺達の目標ってことだ」
何を・・・言っているんだ?世界?
「竜斗。そいつの言うことは本当だ。正確には世界より次元だが・・・他の世界は存在する」
ホムラの声が響く。別次元の世界ってなんなんだよ・・・!
「詳しい事はこの異空間から出たら説明してやるよ。今は目の前の男をなんとかすることを考えろ」
「・・・わかった。約束だぞ」
「おい聞いてるか?・・・世界の統一には必要なものがある。その一つがお前の持っている宝石・・・もっと言えばお前が契約したドラゴンだ」
「・・・ドラゴンと世界の統一に何の関係があるんだよ」
「そこから先は企業秘密。ともかく、お前がドラゴンと契約しちまった以上、宝石を手に入れてもどうしようもない。今はドラゴンはお前の中にいるからな。・・・つまりお前自身を連れていくしかないんだ」
その言葉を聞いて身構える。こいつも敵・・・!やっぱり戦わなくちゃいけないのか・・・!
「おっと、待った待った。何も強制的に連れていこうなんて言ってないぜ?・・・どうだ。俺達の組織についてこないか?悪いようにはしねえよ」
それは・・・どうなんだ?もしかして、それで平和に収まるんじゃないか?
「竜斗、一つ教えてやる。俺の前の契約者は・・・赤羽竜牙。お前の父親だ」
え・・・!?父さんが・・・ホムラの前の契約者!?
「そして、あの男は」
「赤羽竜牙の、敵だった」