帝王の雛 四話
俺はコンクリートの地面を蹴り、仮面の男達の方へ走り出す。
右腕はホムラの鱗と炎に包まれながら、霧の中を目立つ光となって、ゴーストを倒すべくと動き出す。
「くっ・・・迎え撃て!」
仮面の男達は一斉に腕を突きだして、ゴーストを俺に向かわせる。五体のゴーストは俺を倒さんとばかりに様々な挙動で俺の元へ。透明の軌跡を残して飛行する。
「竜斗!右端だ!ありったけの力で殴れ!」
頭に響くホムラの声に、目線を右端のゴーストに向ける。
「ああ!」
足の向かう方向を右端に変え、徐々に右腕に力を貯め始める。・・・感じる、力が溢れてくるのを。炎も激しくなってくるのがわかる。
そして右端のゴーストが射程内に入った瞬間、限界までエネルギーを貯めた右拳を振りかぶり、ゴーストに正面から拳をぶつける。
走行の勢いを上乗せし、ホムラの鱗に包まれた灼熱の拳はいともたやすくゴーストを吹っ飛ばす。生気を失ったように地面に転がったゴーストは、すぐに白い粒子となって宙に霧散してしまった。
「くっ・・・」
主であろう召喚主の仮面の男が唸るが、今はそれどころではない!
「まだだ!」
俺はすぐさま次の目標へ向かう。一番俺から近いゴーストに狙いを定めて足を動かす。
「待て竜斗!次は炎を飛ばしてみろ・・・。右手にエネルギーを集中させて、一点を狙って放つんだ!」
戦闘の経験はホムラの方が上と判断し、素直に言葉通りに足を止め、右手にエネルギーを集中させる。炎の勢いが一定に達した瞬間、
「今だ、撃て!」
俺は右腕を砲台のように固定して、炎を撃ち出す。放出された炎の塊は、味方がやられて戸惑っていたゴーストの一体に吸い込まれるように命中した。
そして先ほどと同じ様に地面に転がり、白い粒子となって消えてしまう。
残り三体・・・行ける。この力ならこの窮地を突破できる。無事に・・・瑠璃と帰れるかもしれない。
瑠璃は路地の突き当たりでずっと待機しているようなので、怪我もしていないはずだ。俺は次の目標に目を向け・・・、
「何をしている・・・!」
「き、霧宮様!?」
仮面の男達が一斉に整列し、敬礼する。ゴースト達も仮面の男の元へ戻って並ぶ。
「合図を見て来てみれば・・・なんだこの醜態は。報告では少年一人と聞いていたが・・・?」
徐々に霧の中から声の主が現れる。
高い身長、黒いスーツに男前な人相の男性がこちらへ歩いてきていた。
「はっ!しかし少年が竜と契約致しまして・・・」
「なるほどな。で、少年にコテンパンにされてると」
「・・・」
仮面の男達は一斉に俯く。
「はぁ・・・わかった。お前ら!もう船に戻ってろ。後は俺がやる!」
「はっ!」
男達はそう言って路地から姿を消してしまう。
「さて・・・演舞の始まりだ」