帝王の雛 三話
「くっ、遅かったか!だがこの場で倒してしまえばいいだけのこと!ゴースト!」
目の前に突如として現れた真っ赤なドラゴンは圧倒的な存在感を放ち、周囲のゴースト達を威圧し続けている。仮面の男達に指示されたにも関わらず、ゴースト達はドラゴンに近づけない様子で、少し離れて様子を見続けていた。
「どうした!早く攻撃しないか!奴が契約する前に早く仕留めるんだ!」
急かす仮面の男達に命令され、嫌々という風にゴースト達はドラゴンを囲み始める。
刹那、一体のゴーストが鋭い爪を光らせ、足を狙い高速で襲い掛かる。輝く爪はドラゴンの前足に届くが・・・次の瞬間、爪は前足の鱗を貫けずに弾かれてしまう。
キン!という反発音が静寂の路地に響いて、俺はハッとする。このドラゴンの力を借りれれば、この窮地を突破できるかもしれない!
その時、頭の中に突然声が響く。
「俺を・・・召喚したのはお前さんだな?どうやって封印を解いたのかは知らねえが・・・ちょうどいい。俺も数年ぶりに外に出たかった頃合いだ。一つ契約を結ばないか?お前さんと俺の主従契約だ。お前さんがその宝石に念じて、お前さんの血を数滴貰えれば契約完了だ」
契約・・・。どうやらこのドラゴンの力を借りる方法はそれしか無いみたいだ。なら!
「ああ、くれてやる!その代わりその力!しっかり使わせて貰うぞ!」
俺は言われた通りに、主従契約の旨を宝石に念じる。
「いいとも!お前さんが何者かは知らんが、俺を目覚めさせるほどだ!最後の最後まで共に暴れてやるよ!」
ドラゴンはその翼を動かし、ゆっくりと飛翔しこちらへ向かってくる。回りのゴーストはその風圧だけで吹き飛ばされてしまう。俺も吹き飛ばされそうになるが、必死に足を踏ん張って倒れまいとする。
「腕を出せ!」
左手に宝石を持ちかえて、右腕を前に突きだす。
「少々痛いかもしれんが抵抗するなよ!」
その言葉と同時に腕にドラゴンの牙が突き刺さる。
「っ!」
鋭い痛みが俺の腕に走り、思わず引き抜きそうになるが我慢する。今は耐え時だと信じて、ドラゴンの思うままに腕を差し出す。
数秒後・・・ドラゴンはゆっくりと牙を引き抜くと、その姿は塵のように消失してしまった。そして再び頭の中に声が響く。
「契約完了だ!俺の名はホムラ・・・お前さんは?」
「竜斗・・・赤羽竜斗」
「よし、早速だが竜斗!今から簡単に戦い方を教えてやる。一回しか言わねえから耳かっぽじってよーく聞けよ!」
「戦い方?」
「ああ。まず俺の実体化は最小限に抑えろ。さもないと、エネルギーが枯渇してお前さんがぶっ倒れちまう。攻撃、防御の時だけ上手く実体化するんだ。・・・習うより慣れろかもしれんな。早速あのゴースト達を蹴散らしてこい」
吹き飛ばされたゴースト達は、いつの間にか仮面の男達の所に戻っている。
「・・・ああ!やってやる!」
俺はゴースト達へ向かって走り出す。その右手は・・・。
真っ赤に燃える炎と、真紅の鱗を纏っていた。