帝王の雛 十二話
「それでは召喚獣についての簡単な説明をはじめたいと思います。……奏さん。お願いします」
俺達は朝早くから昨日の部屋に来ていた。今日は日曜日なのでいつもならもっと寝ているところだが、今回に限っては事情が違う。
昨日と同じ場所のソファに座った俺たちと、向かい側のソファに座った幽。そして幽の隣に昨日は見なかった一人の女性が座っていた。
奏、と呼ばれたその女性は、幽とは対照的に背は高い。
濃い青めの長い髪を結ばずに流し、落ち着いた雰囲気がその全身から滲み出ているようだった。
彼女は幽の言葉に頷くと、ゆっくりと動きながら解説を始めた。
「はい。私は、袖咲奏といいます。……まず、召喚獣というのは魔石、もしくは契約者の体内に宿ります。ほとんどは魔石から呼び出しますが、ごくまれに体内に宿したまま生まれてくる人もいます。瑠璃さんがそうですね」
「シャノアールが、私の精神内に居たということ……ですね?」
奏はゆっくりと頷き、
「はい。……そしてもうひとつ。魔石から呼び出す事、これが一般的な召喚方法とされています。私のはこれ、バロール!」
その言葉と共に石、おそらく魔石を取り出して掲げる。
きれいな水色が透き通るような色をしたその石が光りだし、一瞬の内に奏の隣に水色の髪色をした少女が現れる。
特徴的なのは左目を眼帯で隠したその顔。趣味なのか……?
「これが私の召喚獣、バロールです。今この魔石から呼び出しました。基本的に召喚獣は魔石に収納して出したり仕舞ったり出来ます。召喚する行為を私たちは接続。召喚獣を戻すことを接続解除と呼んでいます。……バロール、接続解除」
奏の言葉に反応して、バロールと呼ばれた少女は魔石の中に吸い込まれていった。
ここで俺は、ずっと気になっていたことを聞いてみることにする。
「あの、俺の場合はどうなるんですかね?」
本来はホムラは魔石の中に居たはずなのだが、今は俺の中に精神体として存在している。魔石から俺の中に移ったということなのだろうか?
「竜斗さんの場合は、契約の際に何か代償を差し出しませんでした?」
「あ、そういや……血がどうとか言ってたような」
最初に召喚したときに腕を差し出して、噛み付かれた気がする。
あの時は必死であまり覚えていないけど、もしかしたらそれが原因で……?
「多分それですね。召喚者からの代償を受け取った召喚獣は召喚者の精神内に移動し、能力が何段階か強化されます。ですから純粋な強さを求めるなら代償で契約をしたほうがいいですね」
「お前ホムラそんなこと一言も言ってなかったよな」
「別に聞かれなかったしなぁ?そのほうが何かと都合がいいし」
このドラゴンは全く……。
「まあまあ、これでお二人の召喚獣についての疑問も解けた事ですし、次はもっと深い事の説明をしますね。……召喚獣の実体化、および能力の使用には一定の精神力を使います。ゲームで言うところのMPですね。それが切れると強制的に接続解除されるので気をつけてください」
「召喚獣についてはそんなところですね。次に、時間もないので作戦の説明に入りたいと思います。まず、異次元の展開を私が察知します。そして昨日特定した座標に雷人、私、奏さん、竜斗、瑠璃で奇襲をかけます。この際、竜斗と瑠璃は必ず固まってください。まだ実戦経験がほとんどゼロに等しい二人では危険なので」
「……そうなるな」
瑠璃と頷きあう。
「ほかにも、現地で指示することもあるので私の言うことを聞き漏らさないようにしてくださいね。それではしばらく休憩、もしくは奏さんと仮想トレーニングでも」
「仮想トレーニング?」
聞きなれない言葉に首を傾げる。
「精神力が減らない状態にして召喚獣を使った特訓を行うことです。興味があるなら奏さんについていってみてください」




