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97]土砂(どしゃ)降り

 そろそろ秋か…と東風こちが思う間もなく、秋が訪れた。日射しの短さは日を追うごとに早まり、夕焼けが…とはいかず、降りそうな灰色の雲で空はおおわれた。ということはジトジト降る秋霖しゅうりんか…と東風は思った。しかし、そうはいかず、次の朝は土砂どしゃ降りとなった。思う真逆の連続に、東風は少し切れ始めていた。

「チェッ! 飯でも食いに出よう…」

 これでは外仕事は出来ないと、早めにあきらめた東風は外食をしようと家を出た。上手うまい具合に逆には出ず、いつも行く大衆食堂は開いていた。まあ、そうたびたび逆にはならんさ…と、東風は誰もいない店の前でははは…と笑った。そのとき店から客が出てきて、変な人だ…と東風を見ながら去っていった。土砂降りの雨は益々、強まっていた。傘をたたむと服の肩やズボンのすそが気持悪く濡れていた。まあ、いいさ…と、東風は店へ入り、いつもの定食を頼んだ。

「すみませんねぇ~。今日は生憎あいにく、もう出ちまって…」

 出ちまう・・とは、この店の主人の口癖くちぐせで、作れないことを意味した。

「ああ、そうなんだ。じゃあ、二ラレバ定食を…」

「レバ二ラですか? 二ラはあるんですが、生憎、レバーが、朝からの土砂降りで…」

「出ちまってるんですか?」

「そう、それです。っていうか、入ってないんで…」

「入ってないか…。じゃあ、出来るもので」

「いや、お客さん。申し訳ないんですが、今日は何も出来ません…」

「えっ!? うそでしょ! だって現に、さっきお客さん出てったよ!」

「ええ、あのお客さんでお終いなんで…」

 外の土砂降りは一層、強まり、雨音も大きさを増していた。

「よく聞こえなかったんで、も、う、い、ち、ど!!」

「ですから、お、し、ま、い!!」

 すべてがすべて、東風が思う逆だった。東風は怒りが込み上げ、傘もささず店を駆け出していた。

 次の日、東風は風邪をひいて病院の診察室にいた。土砂降りはこわいのである。


                完

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