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94]レギュラー

 すでに秋が始まっていた。秋ですよっ! とか言わずに訪れるのが四季である。まあ、それは当然の話で、季節にいちいち語られたのでは五月蠅うるさくてかなわない。ところが、縦溝たてみぞ家の中だけは少し様子がことなった。余りの住み心地のよさに、夏は去らず、縦溝家に腰をドッカ! と下ろしていたのだ。もちろん、縦溝家の敷地を一歩出れば、心地よい秋の空気がみなぎり、清々(すがすが)しい秋 日和びよりだった。そんな縦溝家の閉められた窓から、一家のあるじである播夫まきおうらめしげに外の様子をうかがっていた。窓を開ければ、ムッ! とする夏の暑気なのだから仕方がなかった。だが、播夫がながめる空は、鰯雲の浮かぶ秋の空なのだ。縦溝家の暑気と秋空には大きなギャップが存在していた。

「ほんとに! 信じられんよ…」

 播夫がそう愚痴をつぶやこうが呟くまいが、縦溝家の夏は現実だった。

『いや、私もそろそろとは思ってるんですがね。つい…。このままレギュラーで居座ると、秋、冬、春さんから怒られてしまいますね、ははは…』

 そのとき播夫の耳に小さな声がとどいた。播夫は、空耳そらみみか…と一瞬、思った。

『居心地がいいものでしてね。ははは…いいご家族です!』

「なにが面白いんですっ! いったい、あんたはっ?!」

 播夫は怒りぎみにききき返していた。

『私は夏です。ただ、それだけのものです…』

 偉大な夏にしては下手に出ていた。相変わらず聞こえる空耳に、播夫は体調が悪いのか…と思え、保険証を出そうとした。

『あなたは悪くありません、健康ですよ…』

「それなら、あんたが悪いんだ! 休んでくれぇ~~!」

 播夫は大声で叫んでいた。家族全員が、何ごとがあったのかと播夫の部屋へ駆けつけた。

 次の日から縦溝家にも、ようやく秋が『こんちわっ! 遅くなりましたっ!』、と訪れた。だが、秋もレギュラーで居座りそうだった。


                完

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