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9]消えた入れ歯

 この話は怪談といえば怪談だが、怪談という分野の階段を登っていく段階にある、ある意味、怪談までには至らない馬鹿げた怪談もどきの話でもある。

 肩がりそうな言い方はさておいて、話を始めるとしよう。

 私の家族は私と妻、それに離婚して戻った娘とその連れ子の四人暮らしだ。まあ、こんな構成の家は、世間を探せばいくらでもあるのだろうが、我が家では普通、起こり得ない一つの妙な珍事が起きたのだ。私は世界でそのようなことが起きたのは我が家だけではないか? と、ギネスに申請しようとさえ思っている。

 私は今年、めでたく喜寿を迎え、妻はそんな私より六つばかり下だ。えっ? そんなことはどうでもいいから、何が世界で我が家だけなのかを話せ! だって? …それも一理ある。では、話すとしよう。我が家で消えた物、それは私の入れ歯だ。えっ? どこかに置き忘れたんだろうだって? いや、そんなことはない。私の前から忽然こつぜんと消えたのだ。いつも装着そうちゃくしている私が言うのだから間違いがない! なにっ? ボケが始まったんだろうって? 失礼な! 私はボケてなどいない。断固、これだけは言っておく。私の目の前から忽然と消えたのだ。では、そのときの状況を説明しよう。

 ある日の朝、私はいつものように洗面台の前で顔を洗い、口をすすごうと入れ歯をはずした。外した入れ歯は口を漱ぐ間、いつも洗面台の右横に置くのが私なりの流儀になっている。その日の朝も私はそうした。口を漱ぎ、入れ歯を洗うためガラスコップに入れようとしたときだった。洗面台に置いたはずの入れ歯が忽然と消えていたのだ。確かに置いた感覚も残っていたし、下へ落ちた形跡もなかった。とすれば…消えたとしか考えようがない。そして、ついに出てこなかったのだ。私は入れ歯作りにしばらく歯科医院へ通う破目になった。しばらくとはいえ、フガフガ人生を味わう羽目になってしまった訳だ。入れ歯はついに見つからなかった。はかない人生ではなく、嗚呼ああ・・歯がない人生になったのだ。そのなぞいまだにき明かされてはいない。 


                    完

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