88]ドラマ
こんなクソ暑いのに寝られるかっ! と怒り心頭に発しながら釘底はベッドから飛び出た。一応、4時間ばかり前からギンギンの低温設定にしてクーラーは入れてあった。だが、これは、ちょいと冷え過ぎたか…と釘底が寒いくらいの室温になった寝室へ入り、クーラーをOFFにしたのが手抜かりだった。寒いくらいだったから最初はよかったのだ。ところが、釘底が寝入った頃から少しずつ室温は上がり始め、数時間が経過した深夜、ついに寝苦しい温度まで上昇したのだ。それが釘底が怒りながら飛び起きた原因なのだが、いつもは弱めで春秋程度の低い温度にして朝まで入れっぱなしにしていたのである。それが、その日に限り、どうなるか分からないが…と、昨日、観ていた女子バレーの試合よろしく、チャレンジしてみたのである。結果は惨憺たるもので、眠いわ、汗ビッショリになるわ、でサッパリだった。それでも自分の意思でそうしたのだから今となっては仕方がない。釘底はシャワーをして着がえ、落ちつくことにした。とはいえ、着がえを済ますと眠けは去り、眠れそうになかった。冷蔵庫を開けたが生憎、買い置きしておいた酒が切れていた。釘底は仕方なく、冷えたミルクを飲みながらテレビのリモコンを押した。テレビはドラマの再放送を映していた。ところが、である。よく見ると、登場人物を演じる俳優が自分だった。そんな馬鹿なっ! と、釘底は画面を凝視した。だが、やはり演じているのは自分だった。それも、スラスラと流暢に台詞を言っているではないか。恋愛ドラマで相手は釘底が憧れているファンの女優だった。ドラマは熱愛シーンで、二人がチチクリ合う濡れ場のいいところまで進んでいた。次第にドラマへのめり込んだ釘底は、いいぞいいぞ、やっちまえっ! とテレビ画面を観ながら思った。そして、いよいよ! と二人がなったそのとき、ハッ! と釘底は目覚めた。そこは寝苦しい寝室で、ベッドに横たわる釘底は汗ビッショリになっていた。
完




