85]国勢レベル
ここは天界である。
『今や我が国は、ゆゆしき事態に至っておりますなっ!』
『はあ…まあ、今に始まったことではないのですが』
神々は下界を眺めながら話しておられた。
『いや、確かに…。随分と前から、かなり国力は落ちております』
『そうですぞ。半世紀ばかりも前は、皆、頑張っておりましたが…』
『頑張ったお蔭が、このざまですか…』
『いや、頑張ることはいいことなんですがな。なにをどう頑張るかじゃないんでしょうかな』
『頑張り方、いや、頑張る方向を間違えた・・ということでしょうな』
『頑張って文明を進めた結果、得たものも多いようですが、失ったものも…地球上から絶滅した生物も含め、これが結構、多い』
『それは言えます。文明を進めて既存の古いものを排除する・・この思考方法ですな』
『そうです。新しいものはすべて役立つ・・と人々は勘違いをした』
『新しいものでも古いものでも、いいものはいい、悪いものは悪いという取捨選択を忘れ、古いものをすべて切り捨てていった間違いです』
『その結果、そのツケがすべて国民に回ったんですな』
『というか、国民へツケが回されたと…』
『回したのは政治家で、その政治家を選んだのは国民なのですから、やはり国勢レベルが落ち込むのは自業自得ですか?』
『自業自得とまでは言えないかも知れませんが、どうせ変わらないという諦めと煩わしさが混ざったような政治に嫌気がさした感情がそういう結果を招いたんだと思いますよ。ほら、あそこで鼻毛を抜いているあの男、選挙に行ってませんが、ああいう男が結果として、国勢レベルを下げたんですよ』
「誰か、俺の悪口、言ってんのかっ?」
天界の神から指をさされた下界の自堕落は、クシャミをしたあと腹立たしそうに言った。そのとき、雲もないのに空に一瞬、稲妻が走った。そして轟音が轟いた。男は怖さで身を縮めた。
完




