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81]通せんぼ

 いやいや、道はあるはずだっ! と阿佐口は思った。山で迷った自分を情けなく思いながら、その一方で迂闊うかつな登山計画を立てた自分が腹立たしかった。下界ではまだ秋ではないものの、高山はすでに、秋から冬への変貌へんぼうげようとしていた。幸い、阿佐口の体にはまだ余力があった。非常食も幾らかあったから、すぐどうこうということはなかったが、このままでは日が落ちるまでに下山できない状態だった。おお! これで…と、ようやく下りられそうな道に出られたとき、突如として一陣の風が阿佐口の前をよぎった。その途端、目の前に見えていた道が消えていた。

『♪通せんぼ~通せんぼ♪』

 風がそう歌ったように阿佐口には聴こえた。不思議なことに、道が消えたあと、ピタリ! と風は吹きやんでいた。阿佐口は少し気味悪く思いながらも、こうしちゃいられない…と別の道を探すため歩き始めた。そして、20分ほどがったとき、また下山道らしき道に出た。そのときまた、どこからともなく一陣の風が吹いた。

『♪通せんぼ~通せんぼ~通しゃせぬぞよ通せんぼ~♪』

 また風が少し長めにそう歌ったように阿佐口は感じた。そしてふたたび道が消えたあと、風が消えていた。阿佐口は、これはただの偶然ではないぞ…と少しこわくなってきた。まあそれでも、三度目はさすがにないだろうと気を取り直し、動き始めた。そしてまた15分ばかりが経ったとき、下山道が現れた。阿佐口は今度こそ、これで…と思った。すると、また風が騒ぎ始めた。阿佐口は、よし! 通ってやろうじゃないかっ! と風に対し反感を抱いた。

「♪通~るぞよ通~るぞよ~なにがなんでも通るぞよ~♪」

 阿佐口が歌ったあと、風は不思議なことに歌わず、静かにやんだ。そして、道は消えていなかった。阿佐口は、ぎりぎりのところで遭難そうなんせず無事、下山できた。

 下山した阿佐口がリュックを確認すると、非常食が消えていた。風は腹ペコだったのか…と阿佐口は思った。それなら、そう歌ってくれればいいのに…と、また思った。


                 完

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