表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/100

8]無毛寺(むもうじ)異聞

 まあ、この話は、わしが話す戯言ざれごととして聞き流してもらいたいんじゃがのう…。

 いつの頃のことかは聞いておらぬが、とある村の一角に、それはそれは格式が高い無毛寺むもうじという寺があったそうな。格式が高いといえば、さぞ豪華で立派な寺だろう…と誰しも思うじゃろうが、さにあらず。その実態は荒れ果て、今にも崩れ落ちそうな荒れ寺だったという。ここで、かつてはこの寺にいた住職にまつわる話をしておかねばならぬじゃろうのう。というのも、この住職がいなくなったその原因へとつながるからじゃ。

 かつては、さる大名家のおおやけには出来ぬご落胤らくいんとして生まれたこの男は、遁世とんせいして各地を行脚あんぎゃした。そののち、かの地にていおりを結んで寺とし、無毛庵むもうあんと名づけた。その庵は、実に貧相な庵だったそうな。男は出家し、名を増髪ぞうはつと号したと聞く。この増髪が説く話に教化された村の住民は増髪をあがまつった。増髪の人となりは、次第に全国各地へと広がり、ついに生まれた大名家にも伝わった。その大名家はそのままには捨て置けぬ・・と、そこの村の山奥にひそかに寺を建て、そこの住職に増髪を無理やり定めたそうな。ただ寺名だけは、無毛庵から無毛寺として認めたと聞く。このいた一方的なおこないが増髪の心を逆撫さかなでした訳じゃな。増髪はある日、ふと消息を断ったという。早い話、行方ゆくえをくらませたということになるかのう。寺の住職がいなければ寺は荒れる。いつの間にか、寺は、もののけが住まう奇っ怪な寺へと変貌へんぼうをとげたんじゃそうな。気味が悪いと参る者もいなくなるわい。これは必然じゃ。寺はその後、荒れ放題となっていった。もののけとしては都合よくなった訳じゃな。無毛寺・・毛がなくなった頭は、無毛じゃわい。禿げた頭はよく光る。増髪が寺におらぬようになったのじゃから、それも必然ということになるかのう。無毛の寺、無毛寺にまつわる話じゃ。そんな話を、いつぞや聞いたわい。今、何か言うたか? …もう、聞かなんだことにして、忘れてくれんかのう。 


                     完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ