70]いつか来た坂
仙道は夏山に来ていた。登山といっても、そう高くない1000m級の山である。山登りかハイキングと呼んだ方がいい程度の山だったから、そう急いではいなかった。広葉樹林帯を少しずつ登って行くと、この山にしてはややきつい坂に出た。そのとき、仙道はおやっ? と思った。今までに一度、この坂を登ったような気がした。それも、ここ最近のような感覚だった。急いでもいなかったし、昼までには十分な時間もあったから、仙道はこの辺りで休憩しようと思った。その坂が少し気になったということもある。坂の右手にちょうど手頃な岩があったのでその上に座り、水筒の水を飲んだ。さて…いつ来たんだろうと仙道は考えたが、どうしても思い出せなかった。10分ばかりが経ち、仕方ないな…とまた登ることにした。よく考えれば、最近、山には登っていなかったのだ。それも、10年以上だった。それなのに、記憶の感覚はごく最近だった。まあ、考えても仕方がないか…とまた心を宥めているとようやく峠に出そうな勾配となってきたので先を急ごうとした。そのとき、仙道は急に立ち眩みがして蹲った。それから先の記憶が仙道にはない。気づけば山の登り口に腰を下ろしていた。不思議な感覚だったが坂を登っていた記憶は消えていた。腕を見ると、まだ登る前の早朝だった。俺はここでいったい何をしてるんだ! と少し自分に怒りながら急いで立ち上がると山道へと入った。そして広葉樹林帯を少しずつ登って行き、この山にしては少しきつい坂に出た。仙道はおやっ? と思った。いつか来た坂に思えた。それも、ここ最近のような感覚だった。急いでもいなかったし、昼までには十分な時間もあったから、仙道はこの辺りで休憩しようと思った。その坂が少し気になったということもある。坂の右手にちょうど手頃な岩があったのでその上に座り、水筒の水を飲んだ。さて…いつ来たんだろうと仙道は考えたが、どうしても思い出せなかった。10分ばかりが経ち、仕方ないな…とまた登ることにした。まあ、考えても仕方がないか…とまた心を宥めているとようやく峠に出そうな勾配となってきたので先を急ごうとした。そのとき、仙道は急に立ち眩みがして蹲った。それから先の記憶が仙道にはない。気づけば山の登り口に腰を下ろしていた。不思議な感覚だったが坂を登っていた記憶は消えていた。腕を見ると、まだ登る前の早朝だった。俺はここでいったい何をしてるんだ! と少し自分に怒りながら急いで立ち上がると山道へと入った。そして広葉樹林帯を少しずつ登って行き、この山にしては少しきつい坂に出た。仙道はおやっ? と思った。いつか来た坂に思えた。そして…今も仙道はその坂を繰り返し登っている。
完




