55]揺らめく川
木葉は猛暑の夏のある日、川の河原で水に両足首を浸け安らいでいた。日射しは厳しかったが、足元は流れるせせらぎが冷やしてくれたから、ほぼ満足できた。しばらくすると、日々の疲れがドッと出て、木葉は俄かに眠くなった。
それからどれくらい経ったのかは分からない。木葉は身体が前のめりに崩れそうになり、目覚めた。どうも十数分、微睡んだように思えた。そのとき木葉は辺りの光景に我が目を疑った。川がまるで生きているかのようにユラユラと揺らめいていた。木葉は目がしらを幾度となく擦ったが、目に映る光景は変わらず、川はユラユラと波打って揺らめいている。木葉はゾクッ! と寒気を覚えた。それは浸けた足冷えのせいではなく、怖ろしさによるものだった。木葉は腰を上げて立つと、岸辺までゴツゴツした石の上を走っていた。岸辺を上がりサンダルを履き、木葉はもう一度川を見た。だが川はやはり揺らめいていた。これはもう尋常ではないぞ! と木葉は思った。地震の前兆か、はたまた天変地異か? 科学の常識として木葉に浮かぶのはその程度だった。そのとき、木葉は意識が遠退くのを感じた。
気づけば、木葉は病室のベッドに寝ていた。
「意識が戻られましたね、もう大丈夫ですよ。熱中症です…」
美人看護師がニッコリと微笑んで枕元に立っていた。木葉の心は美人看護師にユラユラと波打って揺らめいた。
完




