43]ゾォ~っとする
勢いづいていた夏空も、不安定な天模様が現れるようになると、すでに季節は残暑から秋へと近づいている。そうはいっても、相変わらずの高温に田所は日々、萎んでいた。熱中症で倒れるといけないから水分補給は欠かせず、田所は熱い茶を飲むことにした。冷たいものを欲しいのは誰にも分かるが、ガブガブと冷たいものを飲めば、胃腸の調子を損ねて食欲を落とす・・とは、田所がアルバイトをしていた頃、工場の工員から仕入れた知識だった。熱い茶をフゥ~フゥ~とさせながら啜り、怖い話でゾォ~っとする。まあ、美味い餅でもあれば、言うことがないのだが…と、田所は思った。
お盆も過ぎ、日没が早まったな…と夕空を見ながら田所がテレビをつけると、偶然にも興味をそそる恐怖番組が流れていた。タイミングがいいぞ! とばかりに、熱い茶を淹れ、餡入りの餅をモグついた。田所の場合、餡は濾し餡でも粒餡でもよかった。餅に入っていればよし! これが田所流の極意なのである。この境地に到達した者は未だ現れてはいない。到達すれば免許皆伝なのだが…。
テレビの番組は、案に相違して怖くなかった。
「なんだよっ!」
興が冷めた田所は、思わず湯 呑みの茶をグビリッ! っとやってしまった。その直後、舌と喉がヒリヒリした。田所はゾォ~っとした。
完




