33]降水確率
連日の猛暑が続いていたが、珍しくその日は朝からどんよりと曇っていた。多川は早朝から起き出し、空を眺めながら深い溜息を一つ吐いた。というのも今日は職場の出張で、かなりの時間、外を出歩く公算が高いという理由があった。
「天気予報では30%か…」
多川が昨日観たテレビの概況は、出張先の降水確率を30%で示していた。テレビの予報官は、さも当然のように数字を説明した。よ~~く考えれば、20%と30%、いや、40%の違いも分からない多川だった。
「どうなんだよ! 降るのか? 降らないのか?」
少し怒りながら多川は灰色の空に向かって呟いた。と同時にピカッ! と一瞬、全天に閃光が走った。多川は白く輝く空を見た。
『いや、そう言われてもねぇ…』
ふたたび曇よりと戻った空のどこからか声のような音が響き、多川の耳へ届いた。
「俺は困るんだよっ!」
多川はその声のような音に、思わず返していた。
『あなたは困るんでしょうが、こちらにも都合がありましてねぇ…』
また、声のような音が響いた。
「まあ、そらそうだろうが…。降水確率30%って、降るのかい?」
多川はテニス球のように、また返した。
『ははは…面白いことを言われますね。まあ、降るような降らないような…』
「気象庁も努力が足りないと思わない?」
『…もう少し現場目線に立って欲しいですよね。私がどうこう言うことじゃないんですが…』
そのとき妻の加奈が訝しげに現れた。
「なにブツブツ言ってるの? 遅れるわよ」
「いや、ちょっと話してたんだ」
「えっ!?」
「いや、なんでもない。あっ! そうだったな…」
結局、多川は鞄へ折り畳み傘を忍ばせ、家を出た。その日、雨は出張先では降らなかった。
完




