31]無関心
日本列島は今日も茹だっていた。吉川は暑い夏をどう過ごそうか…と毎年、作戦を立てていた。彼は厳しい暑気を敵の攻撃と捉え、周到な計画で迎え討つ覚悟をしていたのである。猛暑は関ヶ原の戦いで南宮山山下に布陣した池田勢、浅野勢、山内勢などとも似て、なかなか侮れなかった。
午前10時過ぎ、吉川が一歩外へ出ると、ムッ! とする熱気が吉川の身体を取り囲んだ。ははは…、もうきたか! とばかりに、吉川は熱気を無関心ではねつけた。というのも、吉川の作戦は周到で、すでに身体は氷のように冷えていたのである。吉川が念じれば、あら、不思議! たちまち身体の体温は下がり、氷柱のように凍結したのである。いくら40℃近い猛暑でも、氷柱のように冷えた吉川の身体を攻撃し、汗を出させることは不可能だった。身体の冷却と水分補給は、いわば目に見えない身体を守る鎧だった。
車をスーパーの駐車場へ止め、吉川は買物をしようと店内へ入った。快適とは言えないまでも、店内は全館空調が効いていて、汗を噴き出させるような敵の攻撃はなかった。人為的な内容が生じた場合でも、当然、吉川は綿密な作戦を立てていた。何事が起ころうと、異常を感じとれば無関心を決め込む・・ということにしていたのである。怖い話ながら、彼には潜在的な予知の霊感があった。
「集団的自衛権か。なんか、大変そうだねぇ…」
美味しそうに昼食を食べながらテレビ中継を観る吉川は、まったく無関心だった。
完




