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26]濡れ雑巾(ぞうきん)

 せみ小忙こぜわしく鳴いている昼過ぎである。夏休みの宿題は先延ばしにしよう…と、堅太けんたは猛暑を理由に昼寝を決め込んだ。よ~く考えれば、朝早くか夕方、昆虫観察をすればいい訳なのだが、朝から遊びのスケジュールがぎっしり詰まっている堅太だったから、そういう訳にもいかなかった。なんといっても普段はそう滅多と長時間、遊べないのだから、夏休みは格好のチャンスと健太は考えていた。昼寝は母の瑞枝みずえが小うるさかったから、仕方なく1、2時間は寝たが、3時過ぎには起き出し、家を抜け出る堅太だった。

「堅太! ダメでしょ、こんな時間に!」

 この日に限り、健太は抜け出る直前、玄関で瑞枝に遭遇してしまった。このタイミングの悪さに、健太のテンションはすっかり下がってしまった。

「…ああ、そうそう。あとからでいいから、渡り廊下の雑巾ぞうきんがけ、お願いね」

 輪をかけて瑞枝の注文が舞い込んだ。堅太とすれば最悪である。

「うん…」

 不承不承ふしょうぶしょう、堅太はうなずいた。

 苦は早く取りのぞいた方がいい…と健太は考えた。感心なのではなく、あとあとゆっくりとズルができるからだ。

 バケツに水を張って雑巾をしぼり、何回か廊下を拭いて往復すると、少し綺麗になったような気がした。息が切れたこともあり、バケツに雑巾をかけ、堅太は少し休むことにした。ふと、ガラス戸に映る庭の景色に堅太が目を移したときだった。

『なんだ、堅太君。だらしねぇ~な。もう、音を上げちまったのかい?』

 どこからともなく、声がした。堅太は、んっ? と、あたりを見回したが、なんの気配もない。なんだ空耳そらみみか…と堅太はふと、視線を落とした。すると、少し離れたバケツにかけたはずの濡れ雑巾が堅太が座る廊下の、ほん横にあるではないか。堅太には確かにバケツへかけた記憶があったから、ギクッ! とした。廊下をよく見ると、少し離れた廊下のバケツから堅太のところまで、水がこぼれ落ちたかのようにびっしょりと濡れていた。

「ギャア~~!」

 堅太は猛暑の中、家を飛び出していた。

「困まった子ねぇ~、放っぽらかして…」

 堅太の声に驚きやってきた瑞枝は、水が入ったバケツを片づけようと持ち上げた。廊下はほこりかぶったままで、濡れ雑巾はバケツにかかっていた。


                  完

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