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18]不思議な花

 関川は夏山へ登っていた。例年、彼は山へ登るのが習慣となっていた。暑くなれば登る・・という、いわば条件反射的な習慣だった。詳しく英語的に言えば、社会的習慣カスタムではなく、個人的習慣ハビットということになる。…まあ、どうでもいい話である。

 大喜ヶ原樹海を抜けると蛞蝓なめくじ岳の登りに入る。この山へ入るのにタオル数本は欠かせない。というのも、蛞蝓岳はその名のとおり、ジメジメとした蛞蝓が好む湿気しっけの多い山だった。

 山馴れした関川は順調につづら折れの山道を登り、中腹まで来ていた。このあたりは杉木立が茂る日陰ひかげ山道である。暑気は仕方ないものの、強い日差しがさえぎられるおかげで汗はそうかなくて済み、随分と助かった。しばらくそんな杉木立の中を進み、関川は、ようやく展望が開けた中腹へと出た。しばらく展望を楽しみながら休んだ後、道を少しづつ登り始めたとき、関川は進む目前に見かけない花が咲いているのに気づいた。高山植物にはくわしい関川だったが、今まで見たこともない花だった。関川は歩みを止め、じぃ~っとその花を観察していると、妙なことに花も自分を観察しているような気がした。一枚、撮っておこうと、関川は手持ちのカメラのシャッターを押そうとファインダーをのぞき込んだ。そのとき、花が少し動き、ポーズをつけたように関川は感じた。まあ気のせいだろう…と、そのままシャッターを押し、関川は歩き始めた。

『これこれ、そこを行く方、お待ちなさい。この先は危険です。悪いことは言いませんから、もどられた方が身のためです』

 関川は、んっな馬鹿な! と自分の耳をうたがった。その花は関川の気持を察したのか、左右に花芯を振ってアピールした。

『ギャァ~~!』

 関川は叫びながら山道を駆け下りていた。

 息を切らせ、ほうほうのていで山のふもとまで辿たどりついた関川は、やれやれ…と胸をで下ろした。

 帰りの列車の中で、ははは…そんな馬鹿な話はない、きっと疲れているからに違いない…と、関川は思うことにした。

 次の日、朝の朝刊を手にした関川は目を疑った。蛞蝓岳中腹で崖崩がけくずれ事故が起きた写真入りの記事が出ていた。巻き添えを食った登山客数人が死亡・・という大見出しの記事だった。不思議な花のお告げが、関川を救ったのである。関川は植物図鑑を探し、その花の名を調べた。だがとうとう、その花の名は分からなかった。いまだにその不思議な花の名は分かっていない。関川は勝手に[お助け花]と命名している。


                  完

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