表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/100

16]提灯小憎(ちょうちんこぞう)

 そろそろ出るんじゃないか…と待ちがれながら、正と健一は土塀どべいにできたあなからのぞき込んでいた。何が出るかって? もちろん、言わずと知れた提灯小憎ちょうちんこぞうである。宵闇よいやみせまり、あたりにポツリポツリとあかりがともる頃になると、提灯小憎はどこからともなく現れるのだった。ただ、どこにでも現れるという訳ではなく、その名のとおり、提灯が灯る細い路地伝いの陰気いんき界隈かいわいに限られた。正と健一が今、覗いているこの界隈である。うらぶれた屋台や小じんまりとした一杯飲み屋がのきを連ねるこの界隈は別名、おため小路こうじと世間では呼ばれていた。提灯小憎が出る・・それでもここで酒を飲むか? というある種の度胸試しを兼ねた売り言葉で、それなりの客を呼んでいた。とはいえ、それは陰気いんき+陰鬱いんうつこの上なく、個人というより会社の社員養成に使われたりする場合が多かった。そんないわくつきの提灯小憎を一度、見てみようと、誰から聞いたのか、正と健一は興味本位で夕方、やってきたのだった。

「そろそろだな…」

 正が健一につぶやいた。

「ああ…。シィ~~」

 健一は人差し指を一本、くちびるへ立てた。

 怠慢たいまん寺の暮れ六つの鐘がグォ~~~ン! と、どうでもいいように鳴ると、いよいよ提灯小憎の登場となる。小憎が出るタイミングは小憎自身が決めていて、暮れ六つ、誰も見ていないこと、晴れ渡った夕方、提灯に火が入ったあと・・と、幾つかの条件がそろうことが必要だった。わりと注文が多い妖怪として妖怪連中の間では不人気で、格下にランクづけされていた。

 正と健一は、身を小さくし、鳴りをひそめた。しばらくすると、不思議にも火入りのるされた提灯が突然、点滅を始めた。その提灯は、またまた不思議なことにひもが解け、フワリフワリと闇夜のちゅうただよい始めたのである。そして、二人が土塀で目をらすと、提灯にあやしげな目鼻が現れ、ピタリ! と宙に止まった。二人はギクリ! とした。見つかったんじゃないか…と思ったのだ。その予想は的中していた。ふたたび動き始めた提灯小憎と化した提灯は、二人めがけて近づいてくるではないか。二人は逃げ出そうと駆けだした。そのとき、おどろおどろしい声が二人の背後でした。

『逃げねえでくれぇ~~~』

 二人は立ち止まり、震えながら振り向いた。

『ろうそくが・・チビて消えそうだぁ~。長いのと変えてくれぇ~~』

「そんなの、知らないよぉ~~!」

 二人は一目散いちもくさんに逃げだした。 


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ