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11]田幽霊

 とある地方の話である。かつてはこの一帯でたがやされていた田畑も休耕地や耕作放棄地が目立つようになり、荒廃していた。そうなると、それを待っていたかのように田幽霊が時折り、現れるようになった。ただ、その幽霊は誰にも見えるのではなく、一部の人にだけ見えた。見えたのは、昔からの農業を守り続け、棚田を耕す二人の農民だった。

 耕作放棄されたかつての平地の田畑は、高地の棚田から一望のもとに見下ろすことが出来た。その棚田で二人の農民が話をしていた。

「田幽霊が草取りば、しとったぞ」

「ほう、あの荒れ地でか?」

 一人が下に散開する平地を指さして言い、もう一人はその指先を見つめて返した。

「今日は、なんば使つこうとった?」

「こいだ」

 指さした農民が、今度は足下あしもとの草取り機を指さした。今の時代、もう使われなくなった手押し式の草取り機である。平地では農薬が散布され、昭和の古い時代に見られた手押し式の草取り機を使っていたのは、この二人ぐらいだった。

「ほう、そいか。おい、お前ん横に、田幽霊が立っとるぞ」

 もう一人の農民が草取り機を指さした。草取り機を持った農民は、ギクリ! とした。田幽霊はニタリと笑いながら、なつかしそうに草取り機をながめていた。

「田幽霊もきたかんやろう」

「そがんことかな」

 二人は顔を見合わせて笑った。笑いは、いつの間にか三人になっていた。

「世の中の進み過ぎて、人が足らん時代になってしもうたな。見えんもんの時代とはなさけんな」

「まあ、そがんことやろう…」

 田幽霊はばつが悪いのか、ボリボリと頭をいた。


                    完

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